2020年5月30日土曜日

河瀬直美(映画監督)           ・「今こそ、文化の力を」

河瀬直美(映画監督)           ・「今こそ、文化の力を」
河瀬さんは51歳、1997年『萌の朱雀』にて、第50回カンヌ国際映画祭カメラ・ドール(新人監督賞)を史上最年少(27歳)で受賞。
2007年、第60回カンヌ国際映画祭にて『殯の森』がグランプリを受賞、審査員特別大賞を受賞。
奈良県を拠点に創作活動を続けています。
2020年の東京オリンピック公式記録映画の指揮(監督)に決定しましたが、新型コロナウイルスの影響で来年に延期になりました。
最新作「朝が来る」の公開が延期されました。

東京オリンピックが中止なって東京から戻って奈良の実家で過ごしています。
奈良が大好きなのでここから離れない形をどうしたらいいか数年来考えていて、海外ともリモートワークでやり取りをして、同じ映像を観れる形になっていたので、ステイホームでやることにはあまり違和感はないです。
自粛で仕事の仕方、行動を変容していかなければいけない中で、自分自身も今を深く考える時間を持たせてもらって、ウイルスをブロックというような形で最初思っていましたが、ウイルスと人類がずーっと共存していたものでもあるので、どういう風にウイルスと共存しながら生きていけばいいのか考えました。
私自身移動を新幹線、飛行機で頻繁にしてきましたが、リモートワークでできる事がいろいろあるのではないかと考えるようになりました。
ラッシュアワーの考え方も時差出勤とか整理してゆくことが必要なのかもしれません。
自分自身の時間を取り戻すことも大事かと思いました。

今年になって海外に行って撮影も始めていました。
聖火も日本にやってきたので撮影もしていた矢先にオリンピックの延期が決定しました。
もう一回やり直さないといけないということで、ワクチンも開発されるなどして安全安心の状況が確かめられないとできない状況だとおもいます。
これからの1年も撮っていきたいとは思っています。
撮る範囲が東京から世界とか人類みたいなところにターゲットが広がって、私自身考えさせられるものです。
選手、関係者の人たちは潔く運命を受け入れて来年に向けて調整する方向になっていますが、今年で最後のオリンピックと考えていた人達いるわけで来年となると難しいという人もいる。
柔道の選手などにも取材を進めていましたが、自他共栄という考え方があり、人間性を高めてゆく、社会に貢献したり子どもたちに勇気を与えたりする、そういう活動もスポーツはもたらすわけです。
スポーツには勝ち負けがあるわけで、自分のすべてをかけても勝った選手にはリスペクト(尊敬する)という感情が現れる。
バッハ会長にも取材しましたが、そういったことを言っていました。

最新作「朝が来る」も延期になってしまいました。
構想から4年ぐらいかかって自分にとっても公開が待ち遠しかったんですが。
ミニシアターに対しての支援でクラウドファンディングが3億円集まって、この文化が絶やしてはいけないという思いで、改めて待っている人たちがいるんだなと勇気付けられました。
世界にはいろんな人がいるということを感じられる多様性を体現できる場所でもあるとおもうので、映画という可能性は大きい、広いと思います。
共感を感じてもらうなかで喜びを感じて又作ろうというパワーになってゆくので、生きているかどうかわからない様な喪失感があります。
今度のコロナの持っている特質として密集しない、3密をさけるということで全部映画館に当てはまってしまっていて、徐々には開館してきているが、不安に感じていることも対応しているので、お客さんも戻ってきていただきたいです。
映画界、演劇、コンサート、ライブの人たちも同じ考えをもっているので、アーティストの人たちも全世界中同じ思いを持っているので、ユネスコがどうしていけば次の一歩を踏み出せるのか、ということで数回話し合っていますが、人の心に光をともすのはアートであるという思いは変わらないので、又光を分かち合えるのではないかと思っています。

ヨーロッパでは芸術に対する支援は政府でもいち早く対応しますが、日本の場合は後回しにされる傾向にあります。
いまこそ分野を乗り越えて様々なアイディアを出し合っていろんなコラボレーションができるのではないかと思います。
このような状況下で自分を深く深く掘り下げることも大事かと思います。
今は渦中なので大変ですが、振り返ったときにはいい機会だったと思えるといいと思いますが。
いまこそ独自性、オリジナリティーが再度見直されるような気がしてならないです。
都市部に集中して生活、経済が動いてということになっているが、地方分散して自分の活動をしてゆくことが起こってきて、加速してゆくような感じもします。
映画を作ってきたのが30年代でそれなりに時間がかかったという感じがあり、短編も入れると50本ぐらいになり、1年間に1~2本をずーっと作り続けてきているので、回顧展をしていただいて30年間の軌跡を自分でも見直しながら、出演者、スタッフの人たちと再会して今に至っていて、もう一回勉強しなおすという感覚はあります。
よりグローバルなつながり方を目指していきたいなとおもいます。
繋がりというのは本当に大切なんだなと改めて感じます。
映画を観る事、映画を観る作ること、映画を観る配給する部門を作って10代の人たちにワークショップを手伝ってもらってやっています。
ワークショップをやった後のその子たちの表情、発言がガラッと変わって、わくわくしています。