2020年2月16日日曜日

小倉崇(NPO法人代表)          ・【"美味しい"仕事人】「渋谷に畑をつくろう」

小倉崇(NPO法人代表)       ・【"美味しい"仕事人】「渋谷に畑をつくろう」
渋谷は駅を中心に次々と高層ビルが出現して街の様子が変化し続けています。
多くの人達がにぎやかに集まってくる一方で、都会が持つ無機質さが強くなってきている印象を感じます。
そんな渋谷の街に畑を作っているグループがあります。
ビルの屋上や再開発できた遊歩道などで野菜やコメを栽培しています。
NPO法人アーバンファーマーズクラブでは誰もが気軽に立ち寄り農作業を楽しみ取れたての野菜を味合う事を目的に設立され、現在400人近くのメンバーが参加しています。
今日は都会の真ん中に畑を置くことで農業の食や農の大切さに気が付いてほしいと語る小倉さん(51歳)に話を聞きます。

遊歩道にはプランターのような畑などで季節の旬の野菜を育てています。
葉野菜が多いですが、去年から9月ぐらいからルッコラを7品種育てています。
3回育てると固定種ができるので渋谷ルッコラを作ろうと頑張っています。
土と水と太陽があれば作物は育ちますから。
恵比須は6基のプランターで6つの保育園の子どもたちと連携してやっています。
原宿では神宮前の交差点の6階に4基の2m四方のプランターを置かせてもらって、サラダ野菜、人参も育てています。
子ども向けの食育で始めましたが、一緒に大人も来ることで大人の食育にもなっています。
アーバンファーマーズクラブは現在370から380名ぐらいです。
年齢は10代から70代までで男女半々ぐらいです。
畑の野菜という事で人々がフラットに繋がるので、新しいコミュニティーの在り方として機能しているんじゃないかと思います。
自分で栽培してみないと気が付かないことがいろいろあります。

ライブハウスの屋上に渋谷の畑を最初に作りました。(2015年)
縦1,5m横が3,5m深さが40cmのものを3台置きました。
7割は培養土を購入して3割は仲間の畑から土を持ってきて混ぜ合わせて土作りから始めました。
ねずみ、ごきぶり、からす、すずめなどがやってきて苦労しています。
油井敬史さんとは神奈川の相模湖で知り合って、10歳ぐらい年下で、就農1年目の時でした。
畑を見に行ったときに自然農法でやっていて、ほうれん草を食べたときにとってもおいしくて、そこから彼と仲良くなりました。
2011年に東日本大震災があったときにその前月に長男が生まれて、この都会でどうやって子どもを育てていったらいいのか悩むようになりました。
自分たちが食べる野菜ぐらいは育てたいなと思いました。
農家さんを訪ねていって、そんななかで油井君とは知り合いました。
大震災の時に関西では震災の影響は少しも感じなかったが、東京へ戻ってきたときに、食材を買いに行こうと思ったが何にもなかった。
東京では物を生産する力が無いんだなと思いました。
物流が止まっただけでこんなになってしまうんだと気が付きました。

編集の仕事をしているので全国の有機農業を取材することがあったので、段々自分へのモチベーションが高まってきて、そこから油井君のところに通うようになりました。
有機農業は土の力で育てるので作業は大変ですが、出来たものはおいしいです。
通っているうちに就農したばっかりの有機農家では有機農業だけでは生活が厳しく油井君などは夜に道路工事の交通整理のバイトをしていたりしていて、農家として飯がくえるように何かお手伝いしたいと思うようになりました。
彼の野菜の味を知ってもらおうという事から始めました。
友人と共にウイークエンドファーマーズと名付けて始めました。
まずはステッカー作りから始めました。
若いころ既成概念にとらわれないというヒッピーの考え方に或る種の共感を感じて、ヒッピーに憧れたが、何をやりたいのか考えたときに消去法で行くと、本を読むことだったので、出版社に入り込みました。
女性週刊誌に配属されて、そのうちにそれが廃刊になって、やりたかったビジュアル雑誌に配属になり、ファッション誌をやりました。
旅が好きだったので出版社を辞めて、機内誌を手伝うようになりました。
離島めぐり、農村取材して四季の移り変わり、とかいろいろ海外にも行きました。

今一番面白いのは土ですね。
自分の指が土を通して宇宙を調律するような不思議な感覚になります。
段々気持ちが穏やかに、丸くなってゆく感じがします。
唾液によりストレス度がチェックできるんですが、土に触れた前後を調べましたが、10人ぐらい全員が土に触れた後はストレスが減りました。
オキシトシンという脳の物質が出てストレスが低減するそうです。
オランダではその作用を注目してケアファームというシステムがあって市民が畑に行くことでストレスを解消したり、高齢者は土に触っているいると認知症の症状が緩和されるそうです。
渋谷だからこそできる新しい土から生まれるカルチャーみたいなものこそアーバンファーマーズクラブでは意識しながらやっています。
屋上全部畑にしたら野菜の自給率がかなり上がってゆくと思います。
コーヒーかすを一次的なものと合わせて発酵させてやると凄くいいたい肥ができます。
都会ではゴミが多いと言いますが、生ごみをたい肥にすれば循環することができるので都会は結構資源があります。