清田明宏(国連パレスチナ難民救済事業機関保健局長・医師)・「医療支援の現場が直面するガザの現実」
清田さんは高知医科大学(現在の高知大学医学部)を卒業後、2010年からUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の保険局長として怪我や病気の治療、衛生環境を整えることに力を尽くしてきました。 2023年からパレスチナのガザ地区で続いてきたイスラエルとイスラム組織、ハマスの衝突。 去年10月停戦合意が発行したものの、ガザ地区では、イスラエル軍の散発的な攻撃が続いています。 現在、清田さんはイスラエルの制限下でガザに立ち入れない中、隣国ヨルダンを拠点に支援を行っています。 ガザで目の当たりにした戦闘の現実、そしてそこで暮らす人々の今と未来についてお話を伺いました。
ヨルダンと日本との時差は6時間です。 気温は35度から40度近くになりますが、湿気が少なくて乾いているので何とかなると言う感じです。 2025年1月以降ガザに入ることができていません。 ヨルダンから指示を出しながら支援活動を続けています。 一般の人もそうですが、我々の職員も戦争が始まってから何度も何度も避難してみんな疲れ切ってます。 ある人が言いました「世界は一体いつになったら我々を普通の人間として見てくれるのか。」と言われました。 言葉がありませんでした。
うちもガザに12,000人の職員がいますが、既に400人近くの人が戦争で亡くなってます。 我々の想像を超えた事は何度も何度も何度も起こって厳しい状態に置かれていますが、それに対する世界の反応は非常に遅いか、ないと言うのはガザの一般的な反応です。 「世界中から見捨てられて見放されて誰も助けに来てくれない。」そういう風に言われてはっとします。 私にできるのは少しでも心の支えになればと言う思いはあります。 それが1番大事な仕事の1つではあります。
停戦合意後も状況はどんどん悪くなっていっています。 衛生状況が悪いので、ネズミの種類が増えて、それに伴ってネズミを媒介とする感染症が増えてきてます。薬も不足意味できちんとした治療ができない状況です。 上下水道は機能していなくて、ゴミも山積しています。 壊れた家に住んでたり、テントに住んでいて、住居環境が悪く、医療サービス、医療システムがきちんと機能していません。
基本的にはイスラエルが食料の搬入制限しています。 絶対数が足りません。 入ってきたものも略奪行為などが発生してます。 小さな赤ちゃんの写真。 腕が7.5cmしかない。 栄養失調も単純な食料不足だけではありません。 住居環境、上下水道、医療システム、家族全体の安全が損われるなど、総合的に進んで危機になったと思います。 小さい時に栄養失調になると、脳神経も犯されることもあります。 後でいろんな影響が出ます。 戦争で両親を亡くした子供さん、空爆で怪我をした人々が沢山います。 かつてガザは貧しくてもホームレスがいなくて、何とか助け合って生活を支えて生きてきました。 今はそれが崩壊していて、それが1番問題だと私は思っています。 ガザに行って、1番衝撃を受けたのは土地勘があるはずなのに、周りを見ても全く自分がどこにいるかわからない状況でした
2024年の夏に4台の車で予防接種のために出かけましたが、イスラエル軍によってブルドーザーが出てきたり、戦車が出てきて車の隊列が挟まれてしまったりして、検問所に7、8時間止められていましたが、南部に帰ってきました。
知り合いの歯医者の家族の事ですが、銀行からお金を借りて開業すると言うことでしたが、予定が10月7日で、その当日に戦争が開始され、すべてをなくしてしまいました。 戦争が始まって半年位の間は13回避難したと言っています。 2、3回は野宿したそうです。 そういった話はいっぱいあります。 戦争は残酷で良い事は1つもありません。 早く終わってほしいと今どう思います。
ガザの子供たちは学校に行けず、教育は受けられない。 学校はほぼ全て避難所になっています。 学校に行けなくなると、社会に接することができなくなり、きちんとしたしつけもできなくなる。 メンタルヘルスについてもカウンセラーが聞いているうちに一緒に泣き出してしまうと言うようなことがあります。(同じような環境下) メンタルヘルスのケアにはまだ程遠いと思ってます。
大学を出ても就職がなかなかできない状態です。 「なんで仕事が欲しいのか。」と聞いたら、「人間としての尊厳が欲しい。」と言ったんです。 「職がないと人間としての尊厳が保たれれない。」と言われた。 はっとしました。
治療方法を標準化していきたいと思ってます。(効率の向上) それはそれは大事なことだと思ってます。 国際的な医学誌日発表して、ガザではこういった栄養失調が起こっているという事を残すことが大事だと思っています。(世の中に伝えてゆく。) 有ってはいけないと思うことが、次から次へと起こって、それに対して黙ってていいのかと言う思いはあります。 世の中の不条理に対して黙っていると言うことをせずに声を上げるということだけでもいいし、私のような形でそこで仕事をすることもできます。
パレスチナ問題、中東問題の安定化に貢献すると言うのはあると思います。 世界中がつながっていると言うことを、今回の戦争で多分日本の方が感じられたのではないかと思います。 日本の人道支援と言うのはものすごく評価が高いです。日本に対する期待は強いです。 海外への援助、困っている人を助けると言う事はどんどん続けることが必要だと思っています。 栄養失調の腕が7.5センチの女の子の写真を見て心が動いて欲しいです。 それがすべての始まりだと思います。 これはひどい、これはかわいそうと思うことが大事で、それが第一歩だと思います。 まずは戦争がなくなって、平和になって、人がゆっくり寝て、そしてガザの将来を考えると言うことに早くなってほしいと思ってます。