2026年8月14日金曜日

阿刀田高(作家)              ・「91歳、終わりこそ晴れやかに 前編」

 阿刀田(作家)           ・「91歳、終わりこそ晴れやかに 前編」

91歳になった阿刀田さん、今年の5月小説集「掌より愛をこめて」を刊行しました。  昭和53年に「冷蔵庫より愛をこめて」でデビュー以来、900点を超える作品を世に送り出した阿刀田さんが、これが最後の小説集とおっしゃる創作人生の節目となる1冊です。 手放なす事、終わりを寂しさではなく、晴れやかさでと受け止める阿刀田さんに、一人暮らしをされている毎日のことや作品、執筆の舞台裏や10歳で迎えた昭和208月敗戦の記憶について伺いました。

鉛筆の方が消せるし、軽くて書きやすいので、今でも鉛筆で書いています。   昔はHBですが、最近は2 Bを使ってます。(筆圧の衰え) 頭の中にあるものを書き写してると言う感じです。 10枚から15枚の原稿だと頭にできているものを書き写すような感じです。 一人暮らしの日々を綴ったエッセイ「90歳男の一人暮らし」は、去年の9月に出版。 

110枚位のペースで書いています。 締め切りはよく守っています。 子供の頃から夏休みの宿題は7月には終えてました。 作品は自分で満足ができるのは1割位ではないですかね。 午前中は1、2時間ぐらい仕事をして、NHKのテレビなどを見ています。 報道する方は、割と冷静に静かにやって、喜びや悲しみや感動は見る方がどうだどうしたらいいかと言う性格のものであると思いますが、「あさイチ」などはちょっと笑いすぎではないかなと言う気がしないではないですが。リュックサックを背負って、買い物などにも出かけます。 眠れない時でもまぁいいやと思ってます。 

テレビは野球を見たり、サッカーを見たり、相撲などを見たりしています。 囲碁将棋なども見てます。 生活の中で常にどっかで作品の材料になるようなものがないかと思っているので、いろいろ考えていましたが、最近はアイディアがあまり出てこなくなりました。 ごっちゃになったものを見ているうちに、ふとアイディアが現れることもあります。 酒を飲んでる時などもどっかでアイディアを求めているんですね。 今受ける話はそれで小説は書けない。 妙なことを言うなと言う人の方が、かえって役に立ちます。 列車に乗って、ぼんやり外を見ている時などがアイディアがふっと浮かぶことがあります。

今回「掌より愛をこめて」と言う小説集を出しました。 短い小説を30数編まとめたわけです。 最近書いたのは、冒頭の10作品だけで、後は1番古いので30年前書いたものを引きずり出してまとめたものです。 小説集と言う形では、これが最後になると思います。 アイデアを思いつくことができなくなってきました。 子供が主人公のものはあれば、年老いて記憶が薄れていくような年代の主人公もあれば、くすっと笑うものはあれば、ぞっとするものもあって、多様な短編小説集36編です。その中の「本屋の魔法使い」 本がページを開きながら飛んでくるというもので、受けています。 その他いろいろ。

短い作品、ショートショートと言うジャンルは、少なくとも日本では星新一さんとともに誕生して、星新一さんの死とともにほとんど消えそうになってるジャンルのような気がします。 割と今の時代にちょっと合ってるところがあるんじゃないかと思いますが。 星さんは、独特の世界を築いて、今でも人気があるんじゃないかと思います。 

どっか人間はみんな1人ですよ。 1人であることを享受しなければ、人生はうまく生きていけないんじゃないかなと思います。 幸福になるのもみんな自分1人で考えていかならないんで、実質的に私は1人でした。 早く両親に亡くなられてしまって。 兄が1人、姉が3人末っ子として双子として生まれて、弟は1歳になる前に亡くなりました。 幼い頃から神妙な好奇心を持っている孤独だったと言うふうに思います。 戦争時代には、疎開先の長岡で大きな空襲を体験しました。(10歳の時の体験) 戦争体験は、終戦と同時にがらりと世の中が変わったと言う、そのことの印象の方が多かったですね。 急に民主主義と言うことになってしまって。     先生がこれから日本は戦争をしない国になるんだという、そう聞かされた時に痛切に良かったと思いました。  日本はどうなるんだろと姉に聞いたら、「みんな奴隷になる。」と姉が言うものだから、この川に飛び込んで死ななければ駄目だと思いながら、考えたりしたことがあります。