2019年5月23日木曜日

真珠まりこ(絵本作家)           ・【私のアート交遊録】「もったいないが地球を救う」

真珠まりこ(絵本作家) 【私のアート交遊録】「もったいないが地球を救う」 
かつて「もったいない」が日常の中で当たり前のように使われていたと思うが、最近では死語になったと思われていたが、この真珠さんの絵本から飛び出して子どもたちの心を掴んでいます。
真珠まりこさんの代表作「もったいないばあさん」は頭にカンザシ手にはツエ、ご飯を食べ残したり、電気の点けっぱなし、水の出しっぱなしをすると「もったいないことをするんじゃない」と姿を現すちょっと怖そうなお婆さんです。
このもったいないばあさんが闊歩する絵本は今年誕生から15年を迎えて累計100万部を売り上げる人気絵本となっています。
この間様々な賞や小学生新聞に連載されるなど、常に注目される絵本となっています。
真珠さんは「もったいないばあさん」を通して地球の環境問題についてもアクションを起こしています。
日本の暮らしに古くから流れる「もったいない」という考え方に付いて、「もったいないばあさん」に託す思いを伺いました。

「もったいないばあさん」の話を書くために常に「もったいない」と言う事を意識してもう15年生きているので身にしみていますが、書き始めた時は子どもたちに伝えて行かないと「もったいない」という意味が判らない暮らしをしているなと気がつきました。
子どもが4歳の時にご飯を食べ残したの
で、「もったいない」といったら、どういう意味と聞かれて、言葉に詰まってしまって、他の言葉に置き換えられないと言うことに気がつきました。

長々と説明したが判らなくて、意味が判るような絵本はないかとさがしたがなくて、それでは自分で作ってみようと思ったのが「もったいないばあさん」でした。
昔だったら修理していたものが、新しいものを買った方が早かったり安かったりして、使い捨てが当たり前だと思ったら、地球がゴミだらけになってしまうのでどうなんだろうと怖くなりました。
「もったいないばあさん」を連載するようになって「もったいない」という事に対して深く考えるようになって、ケチは自分だけのもの、執着、「もったいないばあさん」の「もったいない」はそれを大切に思う、大好きだからもったいないと思う、大切な人に貰ったから大切にしたいとか、自然、頂く命に対して有難うと言う感謝の気持ち、愛情があって言っているんだと言うふうに思うようになりました。

「もったいない」という言葉は元々仏教の言葉で、全てのものは仏になる、すべてのものには命があって、命があるものを大事にしないのは「もったいない」という、命の大切さを伝える言葉だと言うふうに伺いました。
「もったいないばあさん」は、頭にカンザシをしていて、カンザシは七、五、三の時に買ってもらったカンザシを大事に持っていると言う設定です。
鼻メガネで、ネッカチーフを首に巻きモンペ姿です。
考えた末に眼は観音様のような半眼にしました。

家族がみんな医者で、医者になるか医者と結婚すると言う様な雰囲気でした。
専攻は栄養学でしたが、やりたいことがあまり見当たらなかった。
結婚して、或る時に高校時代の友達に出会って、美大を卒業後イラストレーターをしていると言う事でした。
それと絵本科と言う看板があり、面白そうと思ってパンフレットを取ったのがはじまりでした。
絵本だったらずーっと続けられると思いました。
自分を表現することに合っていたんだと思います。
「もったいないばあさん」の連載、本が出るうちに自分で一回やって見ることが必要だと思って味噌を作ってみたり色々なことをするようになり、「もったいないばあさん」のような暮らしが出来たらいいなあと思いました。
「もったいないばあさん」ももう15年になりましたが、あっという間でした。
100万部と言うことですが、想像が付かないです。

ケニアのマータイさんがノーベル平和賞を受賞されて、2005年2月に御自身が推奨される3Rを一言でいえるのが「もったいない」と言う言葉で、判りやすいから世界に広めようと言う事で話題になり、広がって行きました。
リスペクト(respect)が含まれているということで、共感していただきました。
マータイさんは「もったいない」と言う言葉は清水寺の一番偉いお坊さんから伺ったそうです。
深い意味を理解されたのは凄いと思います。
子どもたちがその一冊を読めば、今地球で何が起きていて自分たちとどうつながっているかと言う本が見当たらなくて、「もったいないばあさん」のワールドレポート展をしようと言うことになりました。
ユニセフに協力していただき、データ、写真も提供していただきました。
「もったいない」と言う言葉をキーワードにして、「もったいないばあさん」をガイド役にすると言うのは良かったなと思いました。
3年前からユニセフさんが全国の市部で巡回展をして下さるようになりました。
人、物、心を大切にしたいと言うメッセージを込めた作品、例えば「おたからパン」は、本当の宝とは他人から奪うものではなくて、自分の中で育てるものとか、「にこちゃんとぷんぷんまる」シリ-ズでは発達障害のある子どもが、この絵本しか見ないんだと言う反響を聞いたところから更に出版が決まる。
何故発達障害のある子がその本しか見ないのかは私にも判りませんが。

「もったいないばあさん」のワールドレポート展のメッセージとしては、自分さえよければと思わず、分けあう気持ちがあれば平和な世界ができると言うこと、命は全て繋がっていて、一つ一つの命が大切なんだよ、という二つのメッセージがあるが、その二つが「もったいないばあさん」の全ての本の根底に流れる筋のようなものです。
民族、国、宗教、言葉、文化が違っても人が大切に思っているものも同じ様に大切に思う、敬う、リスペクトすれば世界は平和になると思う、そこに全て繋がって行くと思います。
命の大切さ、小さい時に愛されて育つと言う事がとても影響しているのではないかと思います。
姉も弟も医者になりましたが、小さい頃はわからなかったが、大人になって私は傷ついていたんだとおもって、自分はいらない子だったんじゃないのかなあみたいなコンプレックみたいに思っていたんだ私はと言う事に、「もったいない婆さん」を書くようになって「もったいない」と言う意味を考えた時に気がつきました。
何人子どもがいても「貴方が生まれてくれてありがとう、どんなにうれしかったか」と言う事をちゃんと伝えて行くことはとっても大事だと思いました。
最新版「もったいないばあさん 川を行く」 もったいないばあさんが川を旅する話ですが、水の循環とか、命の繋がりを考えてもらえたらいいなあと思います。