2013年9月26日木曜日

熊谷秋雄(かやぶき職人)     ・茅葺きの風情を現代に生かす

熊谷秋雄(かやぶき職人)  茅葺きの風情を現代に生かす
宮城県石巻市北上町 北上川河口付近に群生していた葦を使って、全国各地の名所、旧跡の茅葺き屋根の修復を手掛けてきましたが、葦原の40%が津波で水没してしまいました
熊谷さんは茅葺きに必要な葦の群生地の復活を期待しながら、これからは現代に通じる、茅葺き屋根の家を作りたいという夢を描いています 

大川小学校が川向かいに有った 河口からは5.5kmぐらい ここは2mぐらい浸水している
瓦礫もかたづけられた
河川敷にずーっと葦が 河口から12km、幅100m生い茂っていたが、津波が来て、地盤沈下が1mぐらいあり40%が駄目になってしまった
植物が屋根材として、建物に上がると「かや」と呼ぶ 葦、すすき、稲わら、小麦わら が屋根材として上がった時点で「かや」と呼ぶ
岐阜の白川郷、五箇山の屋根はすすきを「かや」と読んでいた
滋賀県琵琶湖 葦の産地 葦を使って屋根をふくので「かやぶき」と言っているが、「よしぶき」と云っている

北上川の葦を冬の間に刈り取りをして、加工して、原材料をかやぶきのふきかえの仕事を主にやっていました
茅葺きの屋根はだいぶ減ってきている 茅葺きのそば屋、陶芸の茅葺きのアトリエが欲しいとの要望があるが、基本的には減ってきている
職人が高齢化で、うちに問い合わせがあったりして、私のところでは仕事は減っていません
茅葺きの屋根は火事になりやすいと言われるが、私は見たことがない
寺、神社 伊勢神宮は全て茅葺き  関東から北が 社寺は茅葺きが多い
西に行くと瓦の文化、ひわだぶき がある(相対的に北の方が茅葺きは多い)
岩手県奥州市に正法寺という日本一の茅葺き屋根がある 屋根の面積 2100平米
そこの屋根の仕事を請け負ったが、材料を3年がかりで集めた

葦の材料確保は他県の河川から調達してもらったりする 震災後修復の仕事から始める
従業員が20人ぐらいいたが、7軒は津波で亡くなってしまった
生活基盤を確立しつつ、手の空いている人から地元の修理をしようと、少しづつやってきた
倉庫の壁を葦でやっているが、日本でここだけだと思う 厚さ30cmぐらい
12,3年前にヨーロッパに茅葺きの視察のチャンスがあり、オランダ、デンマーク、ドイツ、フランス、イギリスに茅葺きが一杯あり、吃驚した 
オランダでは年間 2500~3000棟の新築の茅葺き屋根があって、面食らった
茅葺きは斜陽産業ではないのではないかと思った
景観にいい、環境の意識が高いので、植物性の自然素材なので、水の浄化にいい
炭酸ガス之問題 炭酸ガスを吸って育つので、環境にもいい
ヨーロッパではオランダ 職人が800人いて、茅葺き協会みたいなものがあり、組織化されている
産業として成り立っている
ルーマニア、ハンガリー、トルコ等からも葦を輸入している

毎年 12月~3月に刈り取りして、4月に野焼き、5月に芽が出始めて、成長していって9月末葉が落ち、段々緑から黄金色に変わってきて、また12月から刈り取り作業が始まる
持続可能な天然資源、、枯渇することは無い
日本では急激に減ってきているのは、湿地の開発、日本では日よけによしずを作っていたが、40年前から中国から安価なよしずが入ってきて、よしず産業が衰退していった
建築基準法22条地区だと茅葺き屋根は建築できない(屋根は不燃材にする)
ヨーロッパでは火災に関して実験をやっていたり、隣りと12m離れていれば新築可能となる
南アフリカには茅葺きの国際空港がある     
日本の発想とは違う

倉庫の壁 茅葺きがあまりに規制が強い 北上川の葦の素材を広めたくて、ヨーロッパに行った
オランダでは壁に茅葺きなどをしていて、大震災で家、倉庫を流されてしまって、9月ごろ倉庫の壁を茅葺きにしたくて、ボランティアで来てくれと言って、オランダの職人2人とうちの職人4人とで倉庫の壁を葦で3週間かけて作った
屋根だと20年~30年 手入れをすれば50年持つといわれるが、壁は屋根の倍以上は耐久があると思う
壁の内側は合板の板 屋根と同じように壁にふいてゆく 工事する時のいわう機械をオランダから持ってきてもらった
ヨーロッパでは、産業として茅葺きは確立しているので、工事の工法は簡易で長持ちをするような技術が発達している
茅葺きは屋根が多いが、現代建築に旨く活用しているので、ビル、アパートをぐるっと葦で包んでいるとか、コンクリートとかガラスよりも温かみがある

茅葺きは冬暖かくて、夏涼しい 自然の断熱材
茅葺き職人は何回かやればできるようになる 壁をオランダの人とやったが直ぐにマスターした
京都の町屋を残すのに、外壁が板張りで、今の法律に充てると出来ないが、板張りの内側に不燃材、耐火ボードを入れれば、いいことになって京都の町屋は残っている
東京でもうまく対応すれば、茅葺きの壁ができるのではないかと思っている(地球温暖化対策)
天然素材なので腐って腐葉土にもなる (循環型)
環境問題、景観とか別な意識を持っている人が増えてくるのではないかと思っている
一番が茅葺きで言われるのが、火災、職人がいない、高いというイメージがあるので何とか払拭すれば、普及していくのでは、産業が興るのではないかと思う

ウイーン工科大学で、ミカエル・カマランダ?准教授が東大で交換教員で2年間日本にいた
帰る3か月前にうちに遊びに来て、東大で勉強しているよりも全然面白いと、彼が一緒に住みこんで、三溪園、金沢兼六園に行ったり仕事をやっていた
帰るときに写真を見せてくれて、ヨーロッパでも茅葺きがあるので、是非来て観てくれと言われて、建物を見に行った
ハンガリーにつれていってくれて、ドナウ川の支流に一大葦原があって、野鳥がいっぱいいて、今は世界遺産になっている
北上川の葦原の100倍、200倍の広さで、大型葦刈機があって、それに吃驚した

ヨーロッパの茅葺き、機械に興味がわいて、いろんな国に行くようになった
カルチャーショックを感じた 茅葺きは斜陽ではないんだ、トレンディーでこれからなんだと責任感にかられた
1台の葦刈機を動かすのに5人が必要 湿地でも入っていける
一人50束が刈れればいい程度だが、その機械は3000束刈り取る
機械を入れてコストが下がる
音風景100選に選ばれている 冬場 葦がすれてさらさら音がする 
音は体に染みついている
大震災から2年半が過ぎて、葦原もすこしずつ戻りつつある