2016年3月13日日曜日

大澤隆夫(代表理事)       ・こころの復興に寄り添う

大澤隆夫(音楽の力による復興センター東北 代表理事)  ・こころの復興に寄り添う
東日本大震災から 5年が過ぎました。
68歳、宮城県仙台市の職員として、文化行政を担当し、仙台フィルハーモニー管弦楽団の専務理事となって1年目で東日本大震災で被災しました。
被災者と演奏家の中間組織を立ち上げ被災者の心に音楽を届け、寄り添ってきた大澤さんがどんな思いでこの5年間を過ごしてきたのか伺います。

東北大学の大滝精一先生と二人で代表理事となっています。
手がけたイベントとしては三善晃先生が作曲した支倉常長を主人公とする「遠い帆」というオペラ、国際音楽コンクール、クラシックフェスティバル、ジュニアオーケストラなどにかかわってきました。
仙台フィルハーモニーへの経済的な支援を担当しました。
定年後は専任として仙台フィルハーモニーにかかわってきました。
大震災の時はコンサートの有る日でしたが、そのコンサートの前に地震が起きました。
楽団員は無事でした。
チェロとハープの2人が泊るところが無くて自宅に泊めることになり、着のみ着のまま寝ました。
コンサートが出来なくなり、演奏で収入が得られる事が出来無くなり、基本金を取り崩す中で生活をしていきました。

ボランティアのコンサートを2週間後に行いました。
楽団員の家の損壊が有ったのですが、地域で育てられたオーケストラとして役に立ちたいと言う事で、出来るだけ早くコンサートを開始する事になり、或るお寺の会場が無事だと言うことが判ってそこで行うことになりました。
自粛する中で、折れそうな気持ちを立て直せないかとの思いが、急ぐ要因になったのではないかと思います。
音楽を中心に、或るコミュニティーみたいなものが生まれて、音楽の力があるんだという実感があったと思いました。
被災地に支援する音楽は、全く新しい枠組みを作らなければいけないと思いました。
東北大学の大滝先生にお願いして代表になっていただいて、24日にこの組織(音楽の力による復興センター東北)を作りました。
26日がコンサートの日でした。
京都からも駆けつけて頂いた人もいました。
自粛中の中での演奏は社会にどう受け入れられるかと言うことは心配でもありました。

お寺で行なったことが演奏会の趣旨と言うものを明確にしたのではないかと思います。
交通が不便の中で100人弱が来て頂きました。
演奏者も聞く方も被災者同士の垣根のないコンサートが出来、深い感動をおぼえました。
全国的にニュースになり、寄付がたくさん寄せられるようになり、音楽への評価も高まり、仙台市内の2か所で37日間のマラソンコンサートを行いました。(第二弾)
その後他のところからの要請もありました。
体育館の避難所の一角で4人で演奏をやったりしたこともあり、寄り添うようなその場の空気を感じました。
様々な反応があり、音楽は何らかの形で役に立っていると言うのが少しずつ深まっていきました。
避難所などは決して良い音響がいいわけではないが、そこにいって演奏して被災者の皆さんが元気になっていくという音楽の有り方があるのではないかと思います。
演奏家にとっても聞く人達にとっても深い感動がある、それが500回続いてきた音楽の中身なのかなあと思うことがあります。(今年で550回以上)

演奏家の想いを整理して行ってお手伝いをして、開かれたものを目指した部分もあり、それぞれの気持ちを整理して、或るコンサートを実現してゆき、他にウイーンフィルその他のお世話もさせて頂きました。
時間がたってゆくに従って歌いたいと言う話が出てきて、仮設にいる人が練習をやってコンサートをするとか、聞く事から自立する、前を向く方向に移ってゆく事もありました。
地域のコミュニティーのお手伝いと言う様な役割にもなりました。
ウイーンフィルは子供の為のコンサートの授業を作って5年間にわたって被災地を訪れて来ましたが、最初が私たちがお手伝いしたコンサートでした。
とても大きなパワーだと思います。
被災者の皆さんの心の動きに対応した音楽活動になりますが、音楽はそういった心の動きに対応できているのではないかと思います。
老人ホームに演奏に行った時に、今寝るところだと言われて、子守唄代わりに演奏したら、拍手と握手攻めにあい、心に沁みる様な演奏が出来、最終的に良かった受け入れられたと言う話もありました。

5年間は人それぞれに時間が過ぎ去ってゆきましたが、どうやって寄り添っていけるのだろうか、鎮魂、癒し、励まし、自立、改めての絆作り等、そういうものを試行錯誤して行った5年間ではなかったのかと思います。
「音楽の力による復興センター東北」は社会に支えられる音楽から、社会を支える音楽を作り上げてきたが、有効な仕組みがある事を提案していきたいと考えていますが、何時までかは判りません。
音楽が空気を震わして、それが身体に伝わって、身体に伝わった音楽が心に届くと言う、ライブならではの音楽の力があるのではないかと思います。