2016年6月28日火曜日

玉川奈々福(浪曲師)      ・気がつけば編集者から浪曲師に

玉川奈々福(浪曲師)      ・気がつけば編集者から浪曲師に
昭和30年代まで落語や講談を押さえて、大衆芸能のトップに君臨した浪曲ですが、いつしかラジオやTVに登場する機会がめっきり減りました。
そんな中大活躍をしているのが玉川奈々福さんです。
玉川奈々福さんは上智大学を卒業後、出版社に入社して文芸図書の編集者になりました。
著名な作家と組んで、かずかずの本を出しましたが、人生の転機となったのが浪曲の三味線との出会いでした。
初めて間近で聞く三味線の音色に衝撃を受けた玉川奈々福さんは玉川福太郎氏に入門しました。
厳しい稽古に耐え7年後の2006年プロの浪曲師玉川奈々福としてデビューしました。
以来、自分の芸を磨くと共に積極的に様々なジャンルの演奏家と共演したり公演のプロデューサーをしたりしてきました。
新作作りにも取り組み、今日の世界に新風を吹き込もうとしています。
浪曲への熱い思いを伺います。

「左甚五郎旅日記」の中の「掛川宿」の冒頭を演ずる。
譜面が一切ない、微妙な合図で、一席をアウンの呼吸で三味線のかたと進める、自由な芸です。
私は三味線から入りました。
上智大学を卒業後、出版社(ちくま書房)に入社して文芸図書の編集者になりました。
沢山の人々とお付き合いさせて頂き、著名は方で言えば小沢昭一さん、嵐山光三郎さん、井上ひさしさん、山田洋次さん(映画監督)、横尾忠則さん(画家)、志村ふくみさん(人間国宝)、石牟礼道子さん等に色々勉強させてもらいました。
作家の方々と話す時に語彙が豊富ではなく自分が軽く、一生続ける習い事をしたいと思って、或るとき新聞で日本浪曲協会が一般の人に向けて三味線教室を開くという記事があり、参加する事にしました。
三代目玉川勝太郎が会長で幹部の人が大勢来ていて、30~40人位参加したいと言う人が来ていました。
三味線をやった人がかなり多かった。
初代東家浦太郎師匠を弾かれていた玉川美代子師匠がお手本の三味線を弾いてくださって、これまでの三味線の音の概念がガラガラと崩れた。
扱い方を全て教えてもらって、おっかなびっくり触りました。
辞めないで来たのが今につながっています。
隠されたミッションがあって、才能がありそうだったら、ピックアップしてプロに誘いこもうという思いがあった。
翌年7月7日に玉川福太郎師匠から誘われて、その翌月が舞台が用意されていてプロの曲師としてデビューしてしまいました。

主に土日、師匠の曲師として弾く様になりましたが、3~4年経ってもなかなかうまくならなかった。
浪曲での三味線は声の合間をつくって引かなければいけないのに、声とぶつかる三味線を弾いていました。
浪曲が判らないから、一席浪曲を覚えるようにすれば三味線の呼吸が判ると言われた。
先輩から勉強会をするように言われて、浪曲の本格的なスタートでした。
1995年に入門しましたが、2006年に玉川奈々福になりました。(玉川奈々福で10年になります)
ある時師匠の家で酔った勢いで天保水滸伝をやってもらう様に師匠に進言、お前が会をつくれと言われて会を企画することになりました。
かつては3000人位浪曲師がいましたが、少なくなってしまって今の師匠を見てもらったら凄いと言われるのではないかと、天保水滸伝をするとともに、第一回ゲストに小沢昭一さん、第二回に井上ひさしさん、第三回に澤田隆治さん(お笑い界のドンと言われる)、物凄くお客さんが来てくれました。(今まで伝え方が下手だった)
色んなジャンルの人とコラボも行う。(韓国のパンソリ、オペラ、落語、講談など)
自分の浪曲を客観的に考える事になるし、色んな芸能の表現などを見られて、浪曲を考えなおしてくれるいい機会にもなりました。

他のジャンルの歴史、浪曲の歴史、自分の芸能はどういうところから生まれてとかを、話しているうちに色々勉強にもなりました。
三味線は語る人物の感情に寄り添って、語る人物の背景にある世界の風景を、感情を音色一つで描いてくれます。
平家琵琶、謡曲、浄瑠璃(江戸)、浪曲(明治)が生まれる。
私は新作も作っています。
浪曲は義理人情の世界が多いが、そうでないものもいっぱいあります。
老若男女に絶対に判る浪曲をつくってやろうと思って、浪曲「シンデレラ」を作り笑いも取り入れようと思いました。
或るとき「椿姫」を聞いて、この物語は浪曲むきではないかと思いました。
吉原を舞台にして、花魁「松の位」 遊女を椿太夫として考案して新作を作りました。
笑いだけを強調すようという訳でもありませんが30分位あるので、色々感情が動く方が、人の心が躍動するので、笑う部分、ホロっとする部分があると面白いので笑いもいれるようにしています。
「金魚夢幻」 玉川奈々福 創作
深堀隆介さんに金魚を書いていただいた演壇のテーブルかけ。
養漁場の金魚師でん助と今までにない色に生まれてしまった金魚との恋の物語。
子の話は金魚の話の様で、実は私たち人間について書かれており、人間とは何か?という大きな問題が隠されています。
我々日本人が金魚と共に歩んできた長い月日の深い結びつきが、この一作に込められています。
若い浪曲師5名が、どんどん伸びてきています。
生の声の圧は、CDなどとは違う迫力があります。
浅草の木馬亭で毎月1~7日 浪曲の定席があります。