2013年6月18日火曜日

村松謙一(弁護士)        ・会社をよみがえらせることが私の使命

村松謙一(弁護士)    会社をよみがえらせることが私の使命
村松さんは30年間、中小企業を助け、再建している弁護士です
彼の事務所は日本各地から訪れる相談者のために、交通の便が良い東京駅近くのビルの中にあります
訪れる人の中には衣類を質屋に入れて旅費を作ったり、片道切符で来るなど、その窮乏ぶりがうかがえると村松さんはいいます
そうした中小企業の経営を後押ししてきた、中小企業金融円滑化法を国は2009年末から運用してきましたが、この3月31日で終了しました
その結果アベノミクスの中でこれから困窮する中小企業が、30万~40万社に上るのではないかと危惧されています
村松さんは会社再建のために、中小企業の社長や銀行の人と交渉を重ねてきますが、その交渉の時に熱が入ってくると、膝やテーブルを叩きながら、リズムを取って、話します
今回もそんな場面がありました

円滑化法が3月31日で終わって劇的に変わったかと言うとそうではない
中小企業がとても資金繰りが大変だと、特に中小企業にとっては金繰りが命、です
その資金繰りの中で、金融機関への返済が重たいと、沢山払っている 
それをちょっと待ってよと言う事で、金融機関に対する返済を待って待ってほしいとお願いをした場合に、金融機関はそれは待てんと、すぐ払えと言ってはいけないと、少し待ってあげることを見てあげなさいと、そういう意味では円滑化法で、支払いが少し伸びるという話を銀行も了解しなければいけないと、いう話の法律を作って、でも延長延長と言う事できていたが、3月31日に終わってしまいました

倒産の危険にさらされるかも知れない 日本には中小企業が420万社ある 99.7%  
0.3%が大企業ですね  
中小企業がほとんど日本の経済を支えていると言っても過言ではない
ただその中で円滑化法で助けてくれと、支払いを待ってほしいという方々が、30万社、とも40万社とも言われている  約1割に相当する
九州から北海道まで助けてほしいという声があがっている
365日、西に行ったり、東に行ったりしています
弁護士 裁判所での仕事が大半だと思います  
私のように地方に行って金融機関に頭を下げて、なんとか会社を助けてくださいというような弁護士は数は本当に少ないと思います
全国に弁護士が1万5000人いるといわれるが、100人いるか、50人いるかいないかだと思います

専門的に企業を再建するために、弁護士が関与するという事を私のポリシーに中に、私の使命に入れているという事でしょうね
もともと、学生のころは体を使っている方だった、法学部にいたので、弱者の救済ができればいいかなと思って、弁護士の道を目指す  
司法試験と言う非常に厳しい 100人に1、2人受かるかどうか大変だったが、それを何とか乗り越えて合格した
どんな弁護士になろうかなと思っているときに、事務所の師匠である、清水直先生が書いた [臨床倒産法]と言う本に出会って、これを読んで、本当に涙して、企業を助けることが、かくも過酷で意義のある事で、これだなと思いました

生活が守れて、人生が守れて、命が救われるかもしれない、と思った
小さいころから、正義感は強かったほうだと思う
私は清水に育ちました(清水次郎長のところ)
慶応大学時代に身体を壊して、挫折を味わって、野球一筋から、勉強一筋に集中する
清水先生の人間性を学ばせていただいて、中小企業の方々には弁護士と言う支えがないとやっぱり心が折れてしまうというのを真近に見て、これだという事で、ずーっと清水先生のもとで勉強してきた  
それが素地、土台だと思った (小さいころから次郎長伝 を聞いてきた)

幕末も薩長が強くなってきて、江戸幕府が劣勢になってきて、戦ったときに江戸幕府の人たちがみんな死んじゃった
そうすると駿河湾に大きく死体が浮かんだ
その時に死体を手をつけてはいけないと、言う事で誰も手を出せなかった
それを次郎長さんは、そんなのを放っておくのは人間かと、言う事で、俺は縛られてもいいからという事で、みんなに引き揚げさせて、そこでお墓に埋葬させたという話を聞いて、それは強いものに逆らうよりも、人間としてやるべきこと、正しい事 それを人間として正しい道は何かこれが一つの道徳でもある 
人情を持つものが人間として一番正しいのではないかと思った

今年弁護士として30年になる 救済は100、200社ではきかない
中小企業はお金が無い でも約束は守らなくてはいけない  
適正な借り入れは、売り上げが背丈とすると、その半分が適正な借り入れだと思うが、身長をはるかに超える借り入れをしてしまう
出ていくお金を少なくしてしまうか、全く止めてしまう
これをバンドエイド効果という 出血を止める  
それが活力になる それが円滑化法だった
それだけではだめで、問題はその次、ばんそうこうをはがす時期 
この2、3年 血が止まっていることに甘えてしまったのかもしれない
デフレで売り上げが少なくなってしまう 
社長と一緒に銀行に行って、返済を待ってもらう、あるいは2億、3億の負債を5000万円にカットしてもらう あるいは無しにしてもらう と言うようなお願いをする 
 
1億円を借りていると1年間で500万円かえすが、10年間で5000万円をかえしてゆくと、裁判所では5000万円払って、5000万円は無しですよという法律がある(民事再生という手法がある)
でも私はそれをやらないで、あくまで銀行と交渉しながら、解決してゆく手法を行う 
私的な民意整理 裁判所を使わない債権  それを私は第一義にやっている
銀行に行く回数が、裁判所に行く回数よりも多くなる
正直に交渉する  潰した方が得なのか、少しでも生かして沢山回収した方が得なのか、銀行さんにどれが得なのかを考えてもらう  
例えば1億円借りて、100万円ずつかえすとして 10年返済で1000万円 100年かかって1億円、どっかで限界が生じますから、会社を潰してしまうのか  会社を抜本的に治すのには債権カット 
これを我々としてもお願いする  
銀行はそうすると非常に困る でも銀行のためにもなるように考えている (これはお金の話)

会社が倒産すると地域の従業員、取引先、 仕事が無くなってしまうので、生活が困る
一つの会社が残ると言う事はいろいろ波及効果はある   
みんながちょっと犠牲を払う事で立ち直ることはいっぱいある 
ところが人間と言うものは、みんな自分さえ良ければいいというのが多い
だからそんなことは知ったことでなない、と 俺のところだけは返せ とそれをやるから倒産する
それをやらないで、みんながしょうがないなあ、みんなが平等に、しょうがないなあと言う人たちが集まると、立ち直ってくる  底力があるので
債権者の気持ちは等しからざるもの、不平等を嫌がる、平等ならいい

情報を知らない、のもいけない いくら損したか、いくら得したか 中小企業の人は隠したがる
情報を全部出してもらって、みんなで考えましょうと、そうすると良い考えが出てくるかもしれない
合意すると、上手くいくし、残念ながら足の引っ張り合いは、大変 3方1両損が得ですよ、と説明している
相談に来る人は、夜も眠れない、食事ものどが通らない (典型的な鬱状態)
話していても上の空  まず我々が付いて話を聞いてあげる 気が楽になる 
一人でいるのが一番不安ですよ  先ず眠ることから始める(睡眠導入剤とか)
まず後押しをしてあげましょうと言ってあげると明るい顔になる
いろんな体験の話をしてあげる  
あなたの会社よりも、もっと大変なこのような会社があると 話してあげる 精神的な安定を得る

社長さんと同じような心境(夜眠れなかったり、脂汗を流したり)になったことはたくさんある
関わっていた社長さんの中には、自殺されてしまった事もあるし、それが本当に弁護士としての無力感でもあるし、そういった経験もいろいろ踏まえて、弁護士をやめてしまおうかと思ったときがあったし自己嫌悪に陥る、いまでもそう思う時がある
皆さんは期待してくれているが、がんばっても結果が出せないことはある
みんなが見離したら、社長さんは死んでしまうかも知れない、そういう意味では一生懸命、努力した、努力した結果、社長としては、将来に取っては大きな宝になってくる

かばんの中には、亡くなられた社長さんの遺書、私の娘の作文が入っている
地獄を見てきた私ですから、その地獄だけは皆さんに見せたくない  
それが私の役 そういう役割もあるのかもしれない  神様が私に与えた役割かもしれない
娘は高校1年生の時に急折してしまった  
また明日ねと別れたが会えなかった 彼女も会えると思っていた 次の日に急変して、 医者の処置のミスもあったが、急変してしまった
明日が来るという事は奇跡的ですよ   素晴らしいことですよ
布団に入ったら、また翌朝がくる    
もし私が10億円でその明日が買えたらそうしますが、そういうわけにもいかない
今日一日が、 過ごせるだけでも、いろんな苦痛があって、いろんな苦しみがあるけれども幸せかもしれない   
今は絶望かもしれないが、絶望の中に必ず光は、絶対にあるんですよ

どんなことでも、自分の命を大事にしなければならない 経営者のかたにも言いたい
3万人が亡くなっているが、これも何とかしないといけない、中小企業の再生に結びつくと思う
2001年 参議院財政金融委員会に参考人に呼ばれる
中小企業がなかなか立ち直らないので、潰してしまった方がいいのではないかと言うような、意見がでたが、(グローバルなアメリカ的な発想が出てきた)  
違うのではないかと、頑張りたいと思っている人にカンフル剤を打つ、救済すべきだ と異論を唱えた
何故かというと、どんな会社にも命がついてくる  40万~の命がある 
自殺をしてしまう予備軍かもしれない(会社としても、国としても、弁護士としても守らなければ)
会社はコンクリートで出来ているものではなく、会社は赤い血が流れている人たちが、手をつなぎながら、生きている組織なんだ そこにようやく気がついて、いろんなことを今やろうとしている
銀行も3月31日で急に変わらないのも、ようやく、そういう事に気がついてくれた、と言う事もある
昔と違って銀行も違ってきた (全部が全部ではないが、相変わらず厳しい人もいる)
中小企業の社長さん、従業員の人たちは、ここは、もう一回見て見ぬふりをしない事

時代が変わってきた 昔は会社そのものを会社としか見なかった
会社再建に対しては、弁護士なんか出る幕ではない  会社は再建なんか出来っこない
駄目なものは潰れるという組織とコンクリートの世界でした 
我々はすこしずつあきらめずに30年間やってきた 
徐々に我々の言っていることも、ドンキホーテでなく、すこしずつ浸透し始めて、銀行内部にも自分で社長さんを死に追いやった方々が、たくさん出て来たことに、自責の念を持っている方が出てきたり、銀行をやめられて、会社を助ける側に回る人がでてきて、会社と言うものは命にかかわるものだと、社長さんは死ぬかもしれないという、救済をしなければいけないと、命の救済なんだと少しずつ変わってきて、政府もようやく気がついて、会社を助けるという事は、経済を助けるという上っ面ではなくて、命を助けるんだという風にシフトしてきた

そこまで言えるのは弁護士しかいない  (人権、ですし、社会正義なので)
みんな会社が立ち直ってくれるのが一番大事  雇用を確保
一つの会社を作るのに、10年、20年かかる、お金も何億もかかるが、会社を潰すのはたった1日で潰せる  そういう意味ではもったいない
企業救済 会社救済に対してもう少し理解してもらう
新しい会社を作るのは大変、むしろ今の会社を残すことの方がむしろ容易いかもしれない
経営者の方が今は、甘えているかも知れない、甘えるのはよくない、30年前の方が経営者の方は、身を律していたというのはありますね