2013年6月23日日曜日

嘉数道彦(琉球舞踏家33歳)     ・21世紀を生きる沖縄の組踊

嘉数道彦(琉球舞踏家33歳)      21世紀を生きる沖縄の組踊
沖縄の伝統芸能の組踊は、セリフを通して歌と踊りで物語を展開してゆく沖縄独特の歌舞劇です
この芸能は中国や東南アジアと交易が盛んだった琉球王朝の時代に発展しました
伝統と格式のある組踊ですが、沖縄戦後はしばらく衰退の道を辿ってきました
しかし、ここ10数年 保存会の地道な活動や、ユネスコの無形文化遺産に指定されてから、見直される様になってきました
今日お話を伺う琉球舞踏家の嘉数さんは若手のリーダーとして活動しており、今年の4月からは、国立劇場沖縄の芸術監督にも就任し、今後の活躍が期待されています

国立劇場沖縄の企画制作課長兼芸術監督をしている
年間30公演が琉球芸能、伝統芸能を中心に企画され行われている  どういった方向性の公演を行っていくのかを決めながら、公演内容を検討、公演してゆく  実演家でもある
作品も書いている 演出家でもある       現在は沖縄劇場に専念している
幼いころ、祖母が一緒にいて、実演はしないが、沖縄芝居が大好きで、私を手を引いて通った
それが沖縄の芸能に興味を持つようになり、関心を持った(2~3歳頃)
自然と違和感が無く入って行った
沖縄言葉が聞ける方、使う方が少なくなってきているが、伝統芸能には残されているので、憧れることによって、おばあさんに聞いて、答えてくれてこの繰り返しで、徐々に言葉にも親しんでいけるようになり、どうにか理解もできるようになった

熱心に真似をしたりするので、両親が琉球舞踊の研究所に通わせた方がいいという事で、4歳から通った 初代の宮城能造先生の門を叩いたが、おさない4歳なので 月謝もいいのでいらっしゃいという事になった
小学生はいたが、なかなか続か無い 中学に行くと辞めてしまった
中学、高校になると部活動が中心となってしまうが、私の場合は剣道部に在籍して、部活の中途でも行かせてくれたので良い環境だった
大学は沖縄県立芸術大学  琉球舞踊、組踊の専門的に学べる場
本土復帰した後にできた学校 伝統芸能が学べる学校として大きな影響を及ぼしている
県立芸大を卒業した人が活躍している

琉球舞踊を中心に大学に入るまでは、勉強してきたが、沖縄古典劇 組踊は大学に入学するまでは本格的に取り組んでいなかった
組踊に関しては、それほど興味は無かったが、学んでいるうちに変化が起きてとても興味を持つようになった
琉球王朝時代に本土の歌舞伎、能を題材にして、歌舞劇に発展した
中国から皇帝の使者が来たときに、宴席で演じられる演目の一つとして、作られた ジャンルのひとつとして組踊がある
我々世代にはとっつきにくい、芸能だったが、やはり知ってゆくことによって中身が分かってきて、見方が変わってきて、深みが分かるようになった

大学2年、3年となると組踊にはまってしまった
題材が古いし、言葉が古すぎて良く分からない、動作がゆっくりで、中身が分からないと難しい
一番最初に興味を持ったのは、「執心鐘入」  能の「道成寺」に影響を受けて作られたもの
演じて学んでゆくと、お客さんの反応とか肌で感じつつ演じることで、更に表現の深さが舞台の上で気付かされた点が多くある
宮城能鳳(人間国宝)先生のもとで先生のお話、芸を真近で見ることができて、自分たちも発表の場を与えられて、今があるのかなあと思って非常に感謝している
大学院まで進む  組踊をもっと学びたいとの思いがあった
新作の組踊も作った  組踊に関しての関心が薄いので、どう今後演じてゆくのかと思って、同世代、若い世代が会場に足を運ばないのが現実で、20年後、30年後の客席はどうなるのだろうろ思って、現在演じている古典では伝わりにくいのでなないだろうかと思って、未熟ではあるのですが、若い世代、子供たちに解ってもらえる作品を作ってみたらどうかと、いう事がきっかけです

絵本のお魚の話を 子供用に 10分 組踊の様式にはめて、教えて、子供と一緒に発表した
卒業の際に新作組踊を取り込もうと 「宿納森の獅子」 と言う作品を作った
実はディズニーの美女と野獣が原案なんです  それを沖縄版に置き換えて、言葉、音楽、動きも組踊版に置き換えて、作品を作りなおした
従来の組踊では、考えられないような内容  従来の組踊は古典的な忠孝の精神、儒教道徳を重んじた作品がテーマになっているが、若い世代、観客層求めるには、テーマをすこし共感するようにするのがいいのではないかと、美女と野獣に題材を借りて、行った
基本形は組踊を踏襲しながら作っていった  多くの方から優しい言葉をかけていただいた

男性舞踊家は芸一つで生きてゆくことは、厳しい  3か月稽古して1日の本番で終わってしまうのが、現状で、芸能一本で生計を立てて、家族を持ってゆくというのは非常に大変です
今に限らず、これまでもずーっとその現状で来ているので、昼間は別の仕事をしながら、稽古に臨むのが現状ですね
私も非常勤職員として、県の住宅課に行ったり、パスポートを作る旅券センターに行ったりしてきた
夜も7時から始まって2時間、3時間行う  
発表の数が多い時には稽古が深夜に及ぶ時も多々ある   志を高く持ってやっている

今年の3月、歌舞伎の坂東玉三郎さんをお呼びして 東京と国立劇場沖縄 組踊の参加していただいた
いろんなジャンルに挑戦する人なので、同じ古典芸能なので挑戦したいと言う事で、大城立裕先生が新しく作ろうという話になって、今回の公演にこぎつけた
新作組踊の「聞得大君誕生」  琉球王朝の宗教的なトップ 聞得大君の誕生前を描いた物語
(聞得大君は琉球国王の妹)  聞得大君の恋物語を絡めた作品に仕上げられている

沖縄の芸能界をあげて、公演にこぎつけた 夢のような公演だった
勉強になったことは? 自分の納得いくところで舞台に立つという姿勢でしょうか
教えられたものをやってゆく様な状況ですが、玉三郎さんは自分が納得するまで、納得して動く
細かい点まで提案し、議論を重ねながら作ってゆく事など勉強になった
ぶつかりあわなければ、良いのは生まれないし、決してぶつかりあったからと言って、駄目になることは無いとおっしゃっていました
聞く耳を持ちながら、ぶつかって、ぶつかって、良い舞台を作るのがお客さんのためであると心構えをおっしゃった

発売と同時に完売となる非常に好評だった
組踊に対する考え方が大きく変わってきたと思う
継承と創造が両輪のように出来ていければなと、考えています