2013年6月13日木曜日

渡邉研太郎(南極観測隊長)    ・自然を恐れず侮らず

渡邉研太郎(第54次南極地域観測隊長)  自然を恐れず侮らず 
1956年 昭和31年に宗谷で出発した第一次南極観測隊から数えて、今回は第54次南極観測隊となります
第54次南極観測隊長を務めた渡辺さんは、東京大学大学院博士課程出身で60歳、現在は国立極地研究所教授で、専門は海洋生物生態学の研究です
渡辺さんは第22次隊から第54次観測隊長まで、越冬隊長の2回を含めて7回の南極観測隊を経験しています

宗谷が第6次隊まで動いていたが、古くなって砕氷が難しくなり得るという事で、退いて、大事な国家事業であるので、継続すべきだという事になり、政府の方もその方向で再開を決めた
その間に3年ぐらいのブランクがある
越冬できない年もあった 2次隊では氷の状況が1次と比べると非常に厳しい
これまで50何年やってきたが、接岸 近いところまで行くことができたのが珍しい
一次隊がいけたのは奇跡だといわれるぐらいの状況だった
2次隊は越冬を断念した その時樺太犬一緒に連れ帰ることができなかった
映画にもなる   犬係をやっていた北村泰一先生が原作者 

昨年の11月に発って、3月に帰ってきた 観測隊、昭和基地以外でも観測隊がある 3つ
最近は大きくは報道されないが、海水が凍って大陸から沖合に向かって張り出している 定着氷というエリアがあって、その沖に流氷がある  流氷は風、海流で行ったり来たりしているが、時にはびっちりしてしまう
昨年度は流氷にもつかまってしまった  昭和基地に向かってある定着氷も厚さが、4mとか5mとか8mとか、かなり普段よりも厚くて、接岸を断念せざるを得なかった
流氷帯は53隊では2週間ちょっとつかまっていたが、54隊では人工衛星の画像を見ながら、航路を決めることができたので、1日ちょっとで通過できた
定着氷域 接岸できると、ホースで燃料を燃料タンクに移送できるが、接岸できないと燃料の運搬に酷く厳しくなってしまう

54次では雪の状態が悪くて雪が、ぐちゃぐちゃに溶けてしまっていた
積雪はあるが、雪上車が走ること自体が非常に難しい状況になってしまった
大きなクラック(氷の割れ目) 2mぐらいあり、ヘリコプターでなければ運搬できなかった
大型ヘリコプターを持っていないと昭和基地に運べないとの経験があって、2機を搭載していたが、1機が故障になり、残りの一機も予算も厳しくて部品のスペアーが無い状況だった(綱渡り)
研究用の費用を削って、輸送のために小型へりを2機チャーターした
貨油の77%運ぶことができた 貨油をどれだけ運べるかが死活問題となる
53次は50%強にとどまった  備蓄していた燃料を使わざるを得なかった
大きなコンテナに入っていたものも、ごくわずかしか運べなかった(コンテナから分散して)
最悪のケースは氷上輸送も僅かしかできない その場合は貨油が十分なくて、越冬するメンバーも減らさなくてはいけないと、関係者の中ではしていたが、そこまですることもなく済ますことができた 

30名の越冬するのに十分な物資を運ぶことができた 40名の時もあったが観測者の人数確保が難しくなってきた(研究のみに1年間専念することが難しくなった)
22次隊の時に行く  海洋生態学をやっていて、研究しながら学位をとれるという事で採用してもらって、今に続いている
趣味でダイビングをやって言えて、潜水調査をやることにもなっていて、タイミング良く入れた
調査も計画通り出来た  藻類の研究 (アイスアルジー)  底生生物 (うに、ひとでとか)
砂のあるところから潜ったが、植物プランクトン非常に増えていて、水は濁っていて、あまりきれいではなかったが、他に岩場で潜って、そこには、うにとかひとで、海綿なんかが生きていた
氷の下は豊かな底生生物がいた   砂場以外のところは氷に穴をあけて潜った、命綱を付けてペアで潜る 
 
24次隊では危険なことがあった 7月14日(真冬)  1×2mの穴をあけて潜ったが、レギュレーターのある部分が氷ついた 
急に空気が出るようになった 水の中で何か起きたか分からなかった   
命綱をたぐったら明るい穴が見えたので、そこに向かって一生懸命に戻った(比較的浅い場所にいたので助かった)
調査深さは20m程度の範囲  6月22日を中心に1月半は太陽が出ない 光合成ができない  
アイスアルジーは氷の下の境界中心に増える  海水が凍っているので塩分の高い液体部分がポチぽつとあって、気温がちょっと上がると上から下まで繋がって海水がちょっと動いたりして、そこに藻類が増殖している

植物プランクトンと藻類が氷が溶けたり、暗くなってきたりすると増殖がスローダウンして、海底に向かって沈んでゆくと、海底の生物が利用する うに、ひとで、ほやなどは利用している
基礎生産者 太陽と水と二酸化炭素を原料に有機物を作りだす(自分の体を作る) それが無いと動物も生きていけない
条件が厳しいところで生き物の本質が見えてくる
南極大陸はほとんど雪と氷におおわれているが、部分的岩が出ているところがある
スカルブスネス と呼ばれる露岩があって、そこにはいろんなタイプの水たまり(湖沼)がある
ほとんど真水の物から塩分の濃い湖沼がある   海の水で増える植物は湖沼にはない
真水で増える植物 ラン藻類 シアノバクテリア コケなどが見られる

「コケ坊主」 湖沼の底から高さが60cmから80cmの円錐形の物が、湖底から飛び出していたりして見える
10cmになるのに100年以上になるという結果がある
地球温暖化が言われるが、印象は?  1年いただけでは分からないが、5年前に昭和基地で観測された気温のデータを統計的に解析した人たちがいまして、その結果からすると気温については有為な増加傾向は無い  南極にもいろいろな場所があり、半島のようなところでは気象のデータでは確実に気温が高くなってきていることはわかっている
昭和基地のあたりでは、そういう事ではなくて、統計的には天候の悪い日が増えてきている