2021年1月30日土曜日

平塚千穂子(ユニバーサルシアター代表) ・ようこそ!ユニバーサルシアターへ

 平塚千穂子(ユニバーサルシアター代表) ・ようこそ!ユニバーサルシアターへ

平塚さんは東京出身、48歳 2016年に日本で初めてのユニバーサルシアター『CINEMA Chupki TABATA』をオープンしました。  障害の有無にかかわらずだれも一緒に映画を楽しめる映画館で上映作品にはすべて音声ガイドと字幕が付けられています。  昨年からの新型コロナウイルスの影響で休館を余儀なくされた時期もありましたが、映画を楽しむ空間を何とか残したいと感染予防を徹底し、奮闘してきました。  

眼が見えない方はイヤホーンの音声ガイド、聞こえない方には日本映画にも必ず日本語字幕を付けて上映したり、完全防音の個室が一部屋あり、小さいお子さん連れ、感覚過敏の人、発達障害のじっとしていられない人が利用したり、後ろのほうには車椅子スペースがあります。 全席20席の小さな映画館ですが、居心地のいい空間つくりをというシアターになっています。

『CINEMA Chupki TABATA』の Chupkiはアイヌ語で自然界の光を表す言葉で、太陽、星とか自然界の光は誰にも平等に降り注ぐので素敵だと思って付けました。   

非常事態宣言が出された4月にはこの先どうなるだろうと不安でしたが、沢山のかたにご支援いただいて、映画から離れないでいる方がまだいらっしゃるのが支えになっています。   休業中に寄付をしてくれたり、いろいろ励ましの言葉もいただきました。   

小さいころは映画館に行くという事はあまりありませんでした。  高校生の時にウエストサイド物語を見たときには音楽も素晴らしいし、ダンスも凄くて、なんてすごい作品なんだと目を見開きました。   一番のきっかけになった時は仕事とかいろいろなことで挫折して、先が見えなくなって落ち込んでしまって、ふらっと映画館に行って観て、何回か通っているうちに回復していって、立ち直ることが出来て、そこからです。(26,7歳)

映画館でアルバイトを始めて、そこから映画を仕事にしていく入り口になりました。  ユニバーサルについては、別のきっかけがあり、異業種交流会に参加して、映画館を持ちたいというクレージーな夢という事で参加しました。   チャップリンの「街の灯」というサイレント映画を目に見えない方に届けようという企画を考えました。   視覚障碍者の方に映画をどう思っているのか、映画を観たいと持っているのか、質問を投げかけたら、予想以上に映画を観てみたいという事だったが、言葉、音の情報が必要になるので、サイレント映画は全く触れることが出来ない。   何とかならないかなと思って動き出したのが,ユニバーサルシアターにつながる原点になります。   

最初に視覚障害者の人は朗読劇をやっている人たちで、凄く明るくて自分が偏見を持っていたことを知りました。   チャップリンの「街の灯」というものをどう届けようかと考えたが出来なくて、朗読劇の人たちに相談したら、サイレント映画なんて難しいところからはいらないで、普通の映画から始めたらと言われました。  国内、海外などを調べていきましたが、日本では商業的にはそういうサービスはなかったです。  海外ではアメリカ、イギリスではバリアーフリー映画館が、アメリカでは100館以上あるという事を知りました。(20年前)    日本が遅れている事実を知って、映画を見えない人達と一緒に楽しむための音声ガイドの研究と環境作りをしてゆく団体を作りました。(2001年)

全国に視覚障害者の人に登録していただいて、映画を鑑賞するうえでどんなサポートがあるといいか要望を聞いていきました。  音声ガイドの研究、作製を目的にしたボランティア団体『City Lights(シティライツ)』を立ち上げました。  2008年から毎年、「シティライツ映画祭」を始めました。   映画館を借りてやっていましたが、自分たちの小屋をもちたいという夢を掲げるようになりました。   映画館としての条件をクリアーしなくてはいけなくて、やりながらいろいろ学んでいきました。   最初500万円ぐらいで出来るかなと思っていたが、防音工事だけで1500万円かかるという事でした。  募金をスタートして全額募金で賄うことが出来ました。  クラウドファンディングも立ち上げました。 

聴覚障害の人は洋画は楽しめるが字幕がついていない日本映画は楽しめない、小さいお子さんをもったお母さんたちにも楽しめるようにとか、いろんな関りが広がっていくうちに構想も膨らんでいきました。  呼びかけに映画ファンの人たちが答えていただきました。  映画に対して恩返ししたいという人達とかいろいろな人が参加していただきました。   自分の理想を越えてしまったような思いがあります、別の力が働いたような気がしました。

音声ガイドなどもチームを作って、視覚障害の当事者も参加していただいて、シーンを考えながら時間をかけて作っていきます。  見えない人も想像する、楽しむ映画の世界の邪魔をしない様な音声ガイドに段々変わって行きました。

映画館という場所は映画を作った方と、鑑賞する方を橋渡しをする場所だと思っていますが、作る方の情熱とか、思いをちゃんと届けるとか、見たお客様の受け取った思いとかを繋ぐ場所に立たせてもらっているのですごく幸せなことだと思います。   これに支えられている人生だと思います。