2026年5月19日火曜日

佐藤清隆(広島大学名誉教授)        ・「“神の食べ物”チョコレートに選ばれて」“チョコレート博士”

 佐藤清隆(広島大学名誉教授) ・「“神の食べ物”チョコレートに選ばれて」“チョコレート博士”

佐藤さんは愛知県生まれの79歳、 広島大学名誉教授、元は名古屋大学工学部で食品に使われる食品油脂を物理学的に研究していた工学博士です。 ある時その研究が大手チョコレートメーカーの目に留まり、チョコレート研究の世界に足を踏み入れます。 そこで佐藤さんはチョコレートのおいしさを大きく変える仕組みを発見、国内外で高く評価され、数々の賞を受賞しました。 近年はカカオ豆の起源や歴史、生産地の課題にも目を向け、チョコレートを通して生産者を支える活動を続けています。 チョコレートにかける佐藤さんの思いを聞きます。

学生時代は名古屋大学の工学部応用物理学と言う学科で博士課程を出まして、その後広島大学の生物生産学部の食品物理学と言う研究室に入りました。 油の結晶の性質を研究していました。 チョコレートの油ココアバターといいますがそれに出会いました。 ココアバターはチョコレートの原料、カカオ豆を発酵して乾燥してローストしてすりつぶして絞ると、天然の油脂が出てきます。 チョコレートを口の中に入れすっと溶けてとろける感じが出て固まった後、表面がつやつやしてパリッと割れると言う、そういう食感を作ってる主役がココアバターなんです。

チョコレートを作ってる大手の日本の会社から話が来ました。 1986年チョコレートを放って置いたりすると、表面が白くなって美味しくなくなると言う、そういう問題で頭を悩ましていました。 ファットブルーム、油の結晶が性質を変えてしまうことから出てくる現象です。 メーカーでは年間億単位の損失を出していると言う状況でした。 チョコレートの製造の中では、カカオバターの固め方が大事だと言うことで一緒に研究をやってほしいと言われました。 若手社員の育成についても依頼されました。

ココアバターの結晶になる時に結晶の種類が6種類あります。 それぞれ固まる温度、溶ける温度、味も違ってきます。 コントロールが難しい。この5型の結晶を作って維持すれば、チョコレートの製品が安定して、ファットブルームが起きにくなるんではないかと予想しました。 分子設計をすればいいんだと言うことに気が付きました。 1989年にアメリカの雑誌3本論文を発表しました。 世界から注目を集めました。外国のチョコレートメーカーに行っていろいろ教えました新しいチョコレートの製造技術にもつながっていきました。 アメリカ、ヨーロッパで5つの賞を頂きました。

材料のカカオ豆についても関心を持つようになりました。 産地によって味が違います。 その原因を知りたくて、2007年ごろから9カ国を訪ねて、チョコレートはできるまでの歴史を含めた壮大な世界があると言うことに気づきました。 ベネズエラはカカオの発祥の地です。 カカオ豆は熱帯でしか育ちません。 カカオ豆の中には油が半分ぐらい含まれていますが、残りはタンパク質、栄養成分で、カカオ豆の油が固まってしまうと、栄養が不自由な分なので芽が出ないんです。  カカオは豆の周りを甘くして動物を引き寄せますが、豆は渋いので、豆の周りの果汁を食べて糞として豆が出てきます。 それでカカオの生産範囲を広げていってます。

カカオの底知れぬ大きな魅力に引き込まれました。 氷河期があったりするとアマゾンの原流域でしかカカオ豆は残りませんでした。 人類がアマゾン川の流域にやってきて、約15,000年前カカオ食べ始めます。 重要な食料です。 チョコレートにはポリフェノールが豊富にあります。 昔から体に良いと言う事はわかっていたんじゃないかと思います。 2018年に、人類がカカオを飲んでいた痕跡がある最古の遺跡が南米のエクアドルの熱帯雨林あることがわかりました。 偶然土器の中からカカオ豆を発見しました。 それまでは北米と言われていました。 エクアドルでは重要な儀式にカカオが飲まれていたようです。

カカオの農園で起きている問題にも関心を持つようになりました。 天候、異常気象、病害に対して常に戦っています。 貧困と言う問題もあります。 3年前にカカオショックが起こりました。 バレンタインのチョコレートも非常に高くなりました。  異常気象がアフリカを襲いカカオ育たなくなってしまって、去年は数年前の4倍に価格が値上がりしました。  

リスクを分散させる必要があります。新しい土地でカカオ豆を生産するサポートが必要である。 南緯北緯20度以内の熱帯地方では、基本的にカカオを生産できます。 僕はフィリピンに注目しています。  生産地を多様化していくと言うことで力を入れてやっています。 遺伝子の解明がカカオの世界にも入ってきて、異常気象に対して抵抗性が高いとか、病気に負けないと言う種類の開発も今研究されています。 チョコレートの奥深い世界に、次々と引き込まれてきました。 1000万年前にカカオは生まれたらしいですが、何度も氷河期を襲いましたが、彼らはそれを乗り越えて、カカオのしたたかさに見習いたいと思います。 ファットブルームが起きない様な技術が出来そうなので是非完成させたい。