渡辺司(プロゴルファー) ・〔スポーツ明日への伝言〕 ゴルフこそ人生、いくつになってもやめられない! 後編
渡辺さんは日本のゴルフツアーの安定した実力派プレーヤーとして19シーズンに渡って、シード権を維持しながら2勝、更に50歳以上のシニア―ツアーではメジャー大会の日本シニア―オープンなどを含む5勝を挙げてきました。 ところが2023年11月左ひざ半月板の手術を受ける際の血液検査から多発性骨髄腫と診断されました。 多発性骨髄腫とは、血液細胞の一種である形質細胞ががん化し、症状がひどくなると骨の破壊や腎障害を起こす恐れがあるとされます。 それでも10か月の治療とリハビリの結果ゴルフを再開できるようになって、今年は開幕からツアーに復帰しています。
勝つことと二位であることにわけてきたのは、「足して二で割る。」と言うゴルフを長年やってきましたが、そのなかで僕も優勝したいという気持ちがない訳ではない。 一つの大きなテーマ、家のローンが終わるまで(56歳ごろ)はと言うものがありました。 シニアーになって2年間で12試合3年目で8試合しかない。 この3年間(20試合)で僕は3回優勝しました。 20年やって2回しか優勝しなかった人間でしたが。 シニアーになったら「足して二で割る。」ゴルフを辞める勇気が湧いた。 順位を落としてでも上を狙うのが競技者かもしれませんが。 ここは攻めるのか、刻んで安全に行くのか、ゴルフのどんな場面でも頭にあります。
49歳で肩を痛めました、(50肩) 試合をしながら治療をするのは効果が薄いので1年間治療に専念して、50歳でシニア―ツアーに出る時には肩の痛みを感じないでゴルフができるようになりました。 多発性骨髄腫を見つけてくれたのは整形外科の先生でした。 半月板の手術を受ける際の血液検査で積極的な検査をして頂きました。 多発性骨髄腫と診断されました。 膝の手術は2023年1月に行いました。 多発性骨髄腫に関しては、急に治療をしなくてはいけないのかどうか聞いたら、直ぐにやらなくても定期的な検査を受けて1年経って12月に検査を受けた時には何ともありませんでした。 その間試合にも出ていました。 自覚症状は一切ありませんでした。 腕が痛くなって先生のところに行ったら腕の骨がぐずぐずになっていました。 そこから多発性骨髄腫の治療が始まりました。(2024年1月から) 肩の部分を切って骨の中に髄内釘?という金属を入れて固定して、手術が終わって、抗がん剤の治療を始めました。 それから1年8か月ぐらい経ちましたが、先生からは普通に暮らしていいという風に言われました。 ゴルフはやっていますが、免疫力が落ちているので、過度に疲れないようにとは言われています。
最初バンカーショットでは思っているところにクラブが降りないんです。 半年はかかりました。 ドライバーの方が簡単でしたが、250ヤード飛んでいたのが180~200ぐらいしか飛ばないんです。 試合復帰は2024年9月の大会でしたが、試合に出ると言うよりゴルフ場にリハビリに行くというような感じでした。
2009年シニアーオープン優勝。 初日73,2日目68,3日目66で9アンダーで単独トップ、2位と一打差。 一緒に回る筈だった腹痛で参加しなくなり、代わりの人(アマチュアのクラブチャンピオン)と一緒にまわることになったが前半その人が35で回って、僕は36でその人に負けてしまって、絶対この人には負けたくないと思って回ったら、30でした。 最終日は後半は凄い雨になりました。 最終ホールのグリーンは歩くとぴしゃぴしゃするような感じで、ボールは転がらないだろうなと思って打ったら、意外と転がって1m50近く残りました。 このパットが外れると4人のプレーオフになるので、このパットが入らないと僕の負けなんだと思って最後打ちました。 入ることが出来ました。
青木さんに練習ではこんなにうまくいくのに本番では全然うまくいかない、どうしてか聞いた時に、青木さんは「練習で100回やって100回成功する事が、たった一回の本番で失敗するのは当たり前なんだ。」と言いました。 「練習は地面の上に敷いた30cmの幅の板だと、試合と言うのはこの地面の板が状況によって10mにも20mにも50m、100mにあがってゆく。 足を踏み外した落ちてしまう。 地面で足を踏みはずしても何も起きないだろう。 自分にとって失敗に対する恐怖心が手を動かなくさせる、身体を固くする、地面の上を1万回歩いても身に付かない。 本番で板の高さが高くなるという事は自分の進歩なんだ。 マイナスではない。 ビビるということは進歩なんだ。 そこを歩く様にするためには這ってでもいいからそこで前に進むしかない。」 と言われました。 よく平常心を保てと言いますが、緊張状態から平常心に戻るのではなくて、緊張状態の上に興奮状態があるんです、この興奮状態が僕の思うゾーンなんだと思います。 戻ろうとするとこのゾーンには入れないんじゃないかと思います。 青木さんと言う偉大なる目標が僕の道の前を歩いているので、追いかけたいなあと思います。