2014年12月21日日曜日

出田秀尚(眼科医師)         ・視覚障がい者に寄りそって

出田秀尚(眼科医師)        ・視覚障がい者に寄りそって
我が国の近代網膜剥離手術の先達として、此の30年間網膜剥離の手術は勿論、難しい目の手術を専門に全国から訪れる数多くの視覚障害者を、失明の危機から救ってきました。
76歳の現在も、外来診察に当たっていらっしゃいますが、患者や家族に病気の治療や手術で視力が回復しない時のための術後ケアに力をいれていらっしゃいます。
失明という病とどう対処したらいいのか、この30年間で眼科治療はどこまで進んできているのか、お話を聞きます。

癌は治療が格段に進歩した。
分子遺伝学で新しい薬が出てきて、薬でも治せるようになりつつある。
眼も格段の進歩をしている。 
白内障、昔は水晶体を取り出して代わりに厚い眼鏡を掛けていた。
今は超音波で眼の中で水晶体を砕いて、直径2mmの管からそれを吸いだして、折りたたんだプラスチックのレンズを眼の中に入れてしまう。 次の日から外を歩ける。
傷ついた網膜の組織を iPS細胞を増殖させたものをそこに挿入して、と言う様なものも試みられている。
加齢黄斑変性

糖尿病は昔はほとんどなかった。  去年あたり、失明の第一原因は糖尿病網膜症だった。
網膜がやられて、網膜が出血して、網膜が痛む、剥げて、光を感じる膜がやられるから失明する。
緑内障 眼圧が高くなって、視神経を圧迫して、神経を侵されて、見えなくなる。
糖尿病網膜症、緑内障が増えてきている。
ハーバード大学 スケペンス教授のもとで網膜剥離の手術を経験。
日本との違いにショックを受けた。
昭和42年ごろ、眼科医になるが、当時の網膜剥離の手術は網膜を後ろから電気で外側から焼きつける。 
両目ともふさいで絶対安静、トイレも行けない、食事も起きて食べられない、枕で固定されて頭を動かせなくて、3週間過ごす。
治る人は1/2だった。

ハーバード大学 スケペンス教授 網膜はく離の講習会があり、網膜剥離の理論、診断、手術の理論を聞いた。
手術をした翌日から歩いている、5日間の入院で、そしてドンドン治ってゆく。
あまりにも日本との違いにショックを受けた。
スケペンス教授のもとでの2年間のフェローシップ (Fellowship) 応募者が100人に一人しかとらないとの事だったが、受かることができた。
手術も、外来の患者も対応させてもらった。
残って勉強したい、住みつきたいとの思いもあったが、あまりにも日本との違いが大きいので日本に持って帰って、日本に役に立ちたいと思って、日本に帰ってきて、熊本で大学に籍を置いて、学んできたことを教えてきた。
人間性についてもスケペンス教授に教えてもらった。 患者さんに寄り添っている。
患者を見るときに色々工夫をして観察をして、理論的なことが裏付けされている。

未熟児網膜症 保育器に入った子が眼をやられる。 新しい光凝固という治療法が開発されたが
未熟児網膜症を診察するのが日本の直像鏡では眼の後ろ半分しか見れないので、スペンス教授が開発した、「双眼倒像検眼鏡]を使うとよく眼の周辺部まで見える。
学会を通じて発表してきて、3年間頑張ったが、講義、診察等で朝早くから夜遅くまで大変だった。
自分で思う様な事が出来る立場ではなくて、40歳になって、このまま大学にいたのでは網膜剥離で人を助けることは出来ないと思って、妻の父親が眼科の病院をやっていて、大学をやめてこの病院を継ぐようになった。
網膜はく離の手術は大学病院などでやる様な難しい手術なので、開業医ではうまく行かないと言われたが、最低限手術出来る装置類を用意して、手術するようになった。
学会での発表をしていたので、全国の眼科医から教えてもらいたいと集まってきた。
スケペンス教授のところの様なフェローシップを作って、後進の指導を兼ねてやってきた。
緑内障、白内障などの患者も来るようになって、それに対応するように、客員医師も来ていただいて、いまでは全ての眼科を扱えるようになった。

治った患者さんからは偶然電車であって、感謝の言葉をいただいたりして嬉しかった。
「万民息災」 深い意味がある。 日本古来の事。
患者さんに寄り添う事が、何となく流鏑馬(やぶさめ)を長い事をやっていたことが身についたのか、スケペンス先生のやり方が体の中に入って行ったのか、眼の見えなくなる人に対しても、最後までこの人の人生を見てあげるのが務めだという風に思いながらやってきた。
心のケアを大切にしました。
眼を治すだけでなくて、その人の人間を一生涯見てやらなければ、と言う気持ちがあった。
眼が見えなくなった人に、治療方法のない人、に対して アドバイスを差しのべる。
ロウビジョン 低視力者 高齢になっている方が眼が不自由で動けない様な人達の手助けに、「自然に触れる旅」 自然は肌から感じる、四大元素 地、水、火、空 は肌で感じる。
クリエーティブな力を与えてくれる。
バシュラール 哲学者  人間に想像力は二つあると言われる。
薔薇は見たことがあるから想像出来るが、形式的な想像力しかないが、経験したことが無いことを想像する力は本当に物事をクリエートする力を持っているから創造的想像力、二つある。
創造的想像力は何が作ってくれるかと言うと、バシュラールによると地、水、火、空という。

若い人は教育を受けて職についている人はいいが、特に高齢者は増えているので、年に2回ぐらいバスに乗って、自然の四大元素に触れるため、阿蘇、天草に旅行する。
巨木に皆で手を組んで抱える。
塩水に足を浸けたり、木には香りを持っているのでそれを嗅ぐ。
そういった事に接して皆、元気付いている。
70歳すぎるとお迎えを考えるが、それに向かってどんなに生きるかは、未知の世界を歩くわけなので、クリエーティブな力が無いと乗り越えられないと思う。
何が災いしているかと言うと、今は理屈の世界、全て理論ずくめ、理論が正しいと思っている人が多い。
理屈は半分で後は、人間性、情の世界なんですよ。
情の世界があることを知ってもらいたい。(若い医師にも知ってもらいたい)
体から覚えないとしょうがないと思う。
挫折を沢山すること、私などは自分で右に行きたいのに左に行かざるを得ないことは、半分以上はそうです。
自分の思った通りに行けた試しはないが、左へ行ったから又新しい世界ができて、うまく行ったりする。

患者さんの気持ちを汲まないといけない。 その為には顔、態度を見ないと判らない。
患者さんがどういう不安を持っているか、と言う事を先ず判ってあげないといけない。
だから情の世界が大事。
自分体の中から幸せを、生き方を感じっとってもらうと言う事なんですね。
30代の方、網膜はく離の手術をしたが、真っ暗な世界になった。
励まして、盲学校に行って、鍼灸師になり、子供の剣道の試合に応援にいって、一本取る前に「肩」と言ったんだそうです。  奥さんも吃驚したそうです。
なんで判るのかと言うと、子供の息使い、相手の息使いが判る、又双方の足音も聞こえるそうです。
だから判るそうです。鋭い感覚を持っている。
網膜はく離でそのような状態になった後、家族のきずなが凄く良くなったと言います。
肌から入ってくる自然の刺激で、自らクリエーティブな力を醸し出している例と言うんじゃないでしょうかね。