2014年6月5日木曜日

大竹おさむ(木工家)        ・木の不思議に魅せられて

大竹おさむ(木工家)      木の不思議に魅せられて
1953年生まれ 大学を卒業後、サラリーマン生活を経て、木工家具を作る仕事に転身しました。
その後20年安曇野の工房で一人、木と向き合い椅子やテーブルなどを作っています。
その手触りの良い滑らかな肌合いと木の木目をいかした作品は、多くの人に愛され各地での展覧会や個展で注目されています。
木は生命活動の不思議さ、人とのかかわりの不思議さなどに満ちていると言います。
大竹さんはその不思議さを感じ取りながら、木には人を幸せにする力があると信じて、家具作りに取り組んでいます。

35歳でサラリーマンから転身。 
大学を出てから、技術系の企業に就職したが、12年務めていて、当時仕事が厳しくて、心理的にも参ってしまった。
海外出張が多かった。 様々な国に、ひっきりなしにいっていた。 夜遅くまで残業していた。
脱サラを妻に話をしたら、それいいんじゃないかしら、と言われて、気の抜けるような感じだった。
NHKの番組で CWニコルさんが物作りの工房を訪ねて、インタビューする番組だったが、こんな仕事をしたいと思った。
調べてみたりしているうちに、段々この道に入っていった。
最初に感じたのは、木と言うのは不思議なものであると、感じた。
木と言うのは、目に見えない、空気中の二酸化炭素と、水と、太陽の光、 光合成の作用で葉が茂り、木が大きくなるが、直径が1mを越える大木でも、同様で空気中の二酸化炭素と、水と、太陽の光ででき上っていて、実に不思議だなあと感じた。
こんなに硬くて重くて丈夫なものが、目に見えない、ほんの二酸化炭素などからできている、この不思議さ段々感じるようになりました。
木を利用させてもらって生活をしているが、木がそんな風にして地面から生えてというのが、とっても不思議です。(生命活動の不思議さ)

木には年輪がある。 春夏秋冬の季節の変化で1年ごとに広がってゆく。
私は61歳ですが、樹齢100年の木ですと、途中に私が生まれた時と同じ年輪がある。
この年輪の時に生まれて、この年輪に小学校にいってと、自分が生きてきた歴史が年輪の中に物差しの様に、残っていると言う事、之が又不思議なこと。
同じ時間を共有してきた、と言う事が木の断面に見てとれる。
神社には大きな大木があり、御神木としてしめ縄があるが、人間と共に暮らしてきた、人間よりはるかに以前から生きている、そういう事に神様を感じて、たてまつっていると思います。
北欧でも同様で「トネリコ」が神聖な木として、扱われている。
木のなかには、精霊が宿っていて、こんこんと叩いて精霊を呼び覚まして、不吉なこと、他人の悪口等を許してもらう、そういう風習がヨーロッパにはある。

日本は木の文化の国 世界最古の建物は法隆寺。
正倉院の木工品、宝物として残っており、日本人と木のかかわりは非常に深い。
椅子、テーブル 使う木は広葉樹  針葉樹は比較的柔らかい、まっすぐに延びるので建築に向く。
桜、栗、楢、楓など使っている。
予め板を十分に乾燥させてからでないと、使えない。
厚さ1寸(3cm)につき、1年乾燥させる。 2寸だと2年乾燥させることが必要。
伐採の時期は冬が一番いいと言われる。(水を吸い上げていない状態)
かんな、のみなどで加工する時は、工夫した自分なりの道具でないと、思い通りの加工ができない。
手で扱う刃物は、自分で砥がないといけないので、巧く砥げるようになるのは一番大事です。
家具に使う広葉樹は固いので、刃物の切れ味が悪いと仕事にならない。
テーブルの表面を削るという作業に入った時は、30分に一回は砥ぎます。

家具を作る時に一番大事なのは使いやすさだと思います。 
いくら見た目に美しくても使いにくかったら失敗です。
椅子 座りごこち。 長時間座っても疲れない。 簡単ではない、奥が深いものです。
背もたれ、座面  位置、角度、形 総合的に判断して、設計しなければいけない。
座りごこちの良い椅子を作って、それを基本にして守りながら、考えて形を色々変えてきた。
滑らかな手ざわりも、いい座りごこちの一つ。  工場で機械ではできないものだと思います。
木目を生かすと言う事も、手作りならではの世界だと思います。
外国人は緑、青とか平気で塗ってしまうし、木目を気にしないが、日本人は木目、肌触り等に非常に関心を持つ。
①新しく物を作りだす、創造性があり楽しい。  
②実用品を作っていることが又楽しい。(お客様に使ってもらえる、役に立つ)
③木は環境に優しい。  空気を汚すようなものは出てこない。 捨てられても環境を汚さない。

生活している環境の中で木が使われてない、電車など、木で出来てはいない。(昔は木で造られていた)    車も同様なので、ちょっと寂しい。
マンションも同様、全部合成品。  木がないので落ちつかない気がする。
我が家に戻ってくると身近に木に接するのでホッと安心する。
せめて日々暮らす住宅の中には、木で出来たものをなるべく多く使ってもらったらいいんじゃないかと思う、人間の気持ちを楽にする、癒す効果があると思っているので、なるべく木のものを使っていただきたいと思います。

山と海は一見関係ないと思われがちだが、関係がある。 
人間が生活してゆく上では、森と海は密接な関係がある。
山で育った木が枯れ葉を落として、地面に落ちて、分解されて特定な物質になり、川に流れ出て、海に行って、そこで植物性プランクトンを育てる源になり、其れを食べた魚が成長する。
漁師が取れた海の幸を祭りの時などに、山の神社に奉納する風習があるが、漁師さんたちは直感的に森の恩恵を知っていたのではないだろうか。
木を使って物を作ると言う事は人間にとって大事な事と思うので、将来も続いていってほしい。
我が家には大きなテーブルがあって、それぞれそこに集まって、自分の仕事なり、学習なり、いろいろやっていた、大黒柱の様な存在だった様に思う。
集まって、家族がコミュニケーションを持てるような家具を作れれば幸せなことだと思います。