2024年10月16日水曜日

山室寛之(野球史研究家)        ・〔スポーツ明日への伝言〕 プロ野球再編問題から20年

山室寛之(野球史研究家)    ・〔スポーツ明日への伝言〕 プロ野球再編問題から20年 

今から20年前の2004年、プロ野球は大きく揺れ動きました。 近鉄とオリックスの合併問題をきっかけにして、リーグ球団の再編成の動きが起こり、球団数が減ってしまう事に強く反対する選手会による史上初めてのストライキが決行され、50年振りの新規参入球団東北楽天ゴールデンイーグルスが誕生、ソフトバンクによるダイエー球団買収などがありました。  日本のプロ野球が誕生して70年目のこの年に直面した危機を、当時の関係者はどう乗り切ろうとしたのか、一連の問題は今のプロ野球とどうつながっているのか、プロ野球再建問題から20年、当時を改めて取材した野球史研究家の山室寛之さんに伺います。

山室さんは1941年北京の生まれ、九州福岡で育ちます。 九州大学を卒業して読売新聞社に入社、社会部の記者として活躍します。 社会部長時代にはオウム真理教事件、阪神淡路大震災などの対応を指揮していました。 1998年から2001年までは東京読売巨人軍の代表を務めました。 新聞社、球団の仕事に一区切りつけた後からは、戦前からの野球史の研究、取材、執筆を続けています。

1988年10月19日の出来事が2004年に繋がって行く動きが水面下ではありました。 2004年には近鉄の合併問題、オックスの球団吸収問題が起きます。  近鉄の指導者である社長の佐伯勇さんは応援に行くが随行したのが、近鉄を手放した際の社長である山口昌紀さん。 どうも阪急が身売りするらしいというという事を伝えられた。 山口さんは佐伯さんの元にその動きがあることを伝えます。 佐伯さんは突然「しまった。先を越された。」と発言します。 山口さんは佐伯さんの元で16年間働いた、豪放な方で佐伯さんを深く尊敬しています。 この時に山口さんは近鉄球団を処分しなければいけないという思いが宿ってきたと思います。 

1998年から2001年ごろメジャーに対するあこがれが強くなっていました。(特に巨人)  近鉄の野茂さんは1995年に移って、凄い活躍をしました。 2000年に横浜の大魔神佐々木投手、2001年にはイチローさんが行って野手でも十分にアメリカでも通用することが判ります。 松井選手がその後続いて行ってもう止められなくなる。 危機感がありました。 テレビの放映のスポンサーがなかなか見つからなくなる。 

2004年に近鉄とオリックスの合併の話が出る。 2月1日に朝日新聞が特報の記事を出します。 これが大騒ぎになる。 近鉄は35億円で売りたい。 5月に5期ぶりに黒字になったが、レジャー部門では60億円の赤字が出ていることを発表する。 その中で近鉄球団は40億円の赤字を公表する。  6月13日に近鉄とオリックスの合併が世間にも知られるようになる。 ライブドアが球団の買収をしたいという動きが出てくる。(6月30日)  

オリックスの宮内オーナーが、当時の球団の構成は1(巨人):5(セの5球団):6(それを羨ましく思うパの球団)だと言います。  そんななかでいろんな考えが出てくる。 巨人の渡辺オーナーの「たかが選手発言問題」が出て世の中を刺激する。 セ・パのいろいろな問題もある。 そのなかで選手会がストライキに入る。 「新しい球団を入れるために、最大限の努力をせよ。」、と選手会が言います。(9月のスト前日) 連盟は、「最大限の努力をするというのを入れると、新しい球団の参入に対して、フリーハンドではなくなる。」と言います。 これにより選手会の態度が硬化してストライキに入ってゆく。 

9月18日、19日の二日間ストライキが行われる。 選手会に対する同情が増え、連盟に対しての不満が高まる一方となる。 楽天の三木谷さんはしっかりした球場を持てば、何とかなることを理解し、やろうと決断します。 ダイエーは支援要請(産業再生機構)をせざるを得なくなる。(10月13日)  西武の堤さんが会社の不正経営の問題で辞任を発表しました。 ダイエーも西武もおかしくなる。 ソフトバンクではダイエーを何とかしたい、球団を持ちたいという思いが芽生える。 その時の責任者が後藤芳光さんで、父親と巨人の渡辺さんとは知り合いで、その伝手で話し合いが行われます。 孫正義さんは10月18日にはダイエーを買って、王さんに指揮を執ってもらいたいという事になります。

楽天、ソフトバンクはそれぞれの人脈によって誕生しました。 セ・パそれぞれ6チームになる。  残した問題としては交流試合の実施、アバウトだった入場者数を実数で発表する事。  これからの野球の将来は、少子化という問題は避けて通れない。 大谷選手の大活躍をいいてこにして,いい道を切り開いて欲しいです。