山下洋輔(ジャズピアニスト) ・即興セッション旅日記
77歳の今も全国はもとより世界中を旅して演奏を続けています。
以前からエッセーには定評がありますが、今回は久しぶりに旅を中心にしたエッセー集を纏めて、そこには旅先でのさまざまな出会いは勿論、師として仰ぐ作家の筒井康隆さんや指揮者の佐渡裕さんとの交流も描かれています。
演奏スタイルがそのまま日常のような山下さんに印象に残るエピソードを伺っていきます。
エッセーのタイトルが「猛老猫の逆襲」、猛老猫は自分の事、猫が大好きです。
久しぶりに出したので逆襲としました。
基本は旅のエッセーです。
椎名さんから最近旅ものが無いと言われて気が付いて、話がたまたま来ました。
或る音楽雑誌に書いたのがエッセーを書くようになった始まりです。
アルトサックスの坂田明などはひっきりなしに面白い事を言います。
うずくまっている犬に向かって説教をしていたりします。
自分の失敗とか旅先の色んなエピソードをネタにしたりしています。
書いた文章のお陰で先に進むと言う事もあります。
昔の方が生れて初めてニューヨークにヨーロッパに行ったとかテンションが違います。
今は今で何を見ても面白いと思う性質は変わらないので、いちいち驚くんです、それが自分でも心地良いです。
面白い人、もの、ことにずーっと出会ってきたと考えています。
もみ殻がピアノの中に転がり込んで、板の下で芽を吹いて間を伝わって出てきた。
日本からきた調理師さんが面白いからこのままにしておこうということになりました。
ミャンマーでは湿気(水)があり、ピアノは陽のあたる窓辺にあった。
そういった関係で芽が出てきました。
そのままでピアノを弾いたことがあります。
その後ウイーンに行きました。
クラシックオーケストラとやることになり、指揮が佐渡裕さんでした。
大作曲家の名前が彫ってある名所に行って、その彫ってある名前の上を足で踏んづけて歩いてもいいんです。
呪いがあるのではないかと思ったら、そうしたら靴が壊れてしまいました。
スニーカーの方が身軽でいいです。
1986年位からオーケストラとやるようになりました。
譜面どうりにはとてもできないと思って、自分のやり易いように変えてしまうけど良いですかと言うことから始まりました。
譜面通りにやらなければいけないところもありますので、練習を一生縣命します。
岡林信康さんのギターと私のピアノ、異質ではあるが雰囲気があっていて一つになっている。
林英哲さんの太鼓とも一緒にやりました。
色々の分野の人との話がありますが、断ったことはないです。
親戚の人達がが海外でも活躍して居るので、打ち上げに集まって大さわぎしたりしています。
親戚だからこそいろいろ意見を言ってくれます。
海外のライブハウスとかミュージシャン、プロデューサー、ファンの町の人など何十年のお付き合いがあります。
祖父(山下啓次郎)の設計した奈良の監獄が保存されると言う事で、そこでも演奏するとか色々あります。
明治の5大監獄があったが、鹿児島の監獄がなくなると言う事でそこでピアノを弾いたのが尾を引いて、今度は奈良の監獄が保存されると言う事でやってきました。
中庭の特別ステージでやりました。
思わず「おじいさんの古時計」をやってしまいました。
ドイツが最初の外国でしたが、ビールの思い出があります。
残念ですが、寿司、刺し身は駄目です。
冷やし中華は好きで、全国冷やし中華愛好会を作って、何故冬に食べられないのかとかやりました。
いきなり会長になり、全国に新聞発行もしました。(30年ぐらい前)
筒井さんが第2代目の会長になりました。
「ジャズ大名」筒井康隆さんが書いたものを、どこかおかしくないかとかチェックをした事があります。
松井守男さんとは知り合って直ぐに松井さんはフランスに行ってしました。
2003年に松井さんはレジオンドヌール勲章をもらいました。
「世の中は全て人と人とのつながりしかない、世界中そうなんだと実感した」と挨拶したら、松井さんは「人を紹介することは誰でもできるけれど、成功するかどうかはその人の実力次第だよ」と言ってくれた。
私の場合、旨い具合に出会いが続いて行ったと思います。