2019年6月16日日曜日

荻澤紀子(牛肉卸会社代表)        ・【"美味しい"仕事人】牛肉の価値を引き出す

荻澤紀子(牛肉卸会社代表)    ・【"美味しい"仕事人】牛肉の価値を引き出す
フレンチやイアリアンのシェフたちはサシの入った肉(霜降り肉)よりも赤身の肉を好む人が増えているそうです。
食通にも濃く深い赤身の味わいが注目されています。
東京の牛肉卸会社代表の荻澤さんは全国各地の牧場に通って、消費者の声を生産現場へ生産者の思いを消費者に伝えながらより価値の高い牛肉を提供しています。
これまでおいしくないと言うのが定説だった乳牛や繁殖牛など、子牛を産む経産牛にもスポットライトを当てて新たな価値を生み出しています。
そのためには牛一頭一頭の個性をしっかりと把握することだそうです。

サシの入ったとろける肉(霜降り肉)と言うのは、黒毛和牛ですね。
それは一つの価値観として大事な求められる日本のすき焼き、シャブシャブだったりには一番ぴったりのお肉になりますが、違った価値観のお肉も求められる部分もあります。
ステーキのように噛みしめる美味さに関しては、赤身のおいしさを求める方がいます。
ヨーロッパで修行して戻ってこられた方々が、赤身を追求したいがものがなかった。
繁殖牛は同じ黒毛和牛でも環境が違うので、赤身の力強さ、味わいの深みとかが出てくる牛種があります。
肉を付けたり肉に味わいを乗せるために一定期間餌をあげて育て上げる期間を持つ牛もあります。
以前はメインと言う感覚で扱われないことが有った部分だったりしています。
価値が見直されてきています。
乳牛にしても経産牛にしても健康に育てられてきた牛たちです。
黒毛和牛に比べて運動したりして筋肉質の部分もあるが、それを時間を置いてあげることで熟成させてベストの状態で次の料理人さん、消費者に渡す事を目標にしてやっています。
可愛いその子たちの命をいただくからには、最大限みんなに求められてほしいので愛情だけはたっぷり注ぎたいと思っています。

大学を卒業後、飲食店の世界に入りました。
食べることが好きでしたし、ご飯を食べている時は心が緩む時だと思います、そういったことに魅力を感じました。
牧場直営の都内の焼肉店で働いていた時に、枝肉の営業をしてくれないかと言われました。
食肉市場にいって枝肉の大きさ、落札スピード、金額などにすごくショックを受けました。
岩手の牧場にも連れて行ってもらいましたが、牛の可愛さ、働いている人達の姿など見て
消費現場とのギャップを感じて、情報が遮断されているような感じがしました。
地域でのビールかす、おからなど食料副産物を牛は消化してくれるので、アミノ酸など多く含んでいるので、牛にとっては良い餌になります。
地域のものを食べさせたいと言う事で立ちあげた餌会社がありますが、そこでの牛肉を東京で販売できないかと、東京事務所を立ち上げないかと言う話がありました。(7年前)
段々注文が入るようになりました。
5つの牧場主の一つ田村牧場の短角牛を販売することになりました。
赤身肉の販売の難しさは経験しました。
歯ごたえのある部位で、みんなが欲しいと言ってくれる赤身の部位が限られていると言う事に気付きました。
或る方からアドバイスがあり、短角みたいな肉は枝肉の状態で1カ月位吊るしておけば美味くなるんじゃないでしょうか、と言われました。
繊維をほぐしてやることでステーキとして使えるのではないかと言われ、それをすることによって突破口になりました。

生産、販売、料理それぞれの段階で、愛情をこめてベストをつくすと凄くいい状態で皆さんの口に入るんだろうなと言う事を、その経験で実感しました。
経産牛、赤身肉もその後チャレンジしていきました。
出来るだけ生産者の処に行って、理解できるように心がけています。
牛種によっても違いますし、一頭一頭性格が違います。
枝肉をみた時に愛情を掛けられてきたと言う事が判ります。
愛情を掛けられた子は細胞の中に愛情が入っていると思います。
お届する店にはいきますし、そのお肉について料理人さんと語らいます。
求められるものとのマッチングだと思います。
生産現場にも料理人さんとかと一緒にフィードバックさせて、みんなで作り上げて行く感覚がチームとなって、餌、育て方、肉の熟成など伝えて行くことで、面白い取り組みになっていると感じます。
伝書バトになってやっています。
岩手は畜産がないと成り立たないと、或る牧場主が言っていました。
草を牛にあげて循環させてゆくことで経済が成り立つ訳です。
黒毛和牛は草だけだと駄目なので、本来牛は草食動物なので赤身肉の場合は草を与えることで、良いものになると思います。
次の世代がやってみようかと言うように畜産業を夢のあるものにしたいと思っています。