夏石番矢(俳人・明治大学教授) ・「世界俳句」の地平をひらく
本名は乾 昌幸さんです、1955年兵庫県相生市生まれ。
14歳のころから俳句を作り始め、金子兜太さんの選により何度も雑誌に掲載されました。
東大学生俳句会でも創作や評論を手がけました。
早い時点からあらゆる言語での最高の短詩である世界俳句を提唱して、1998年には鎌倉佐弓さんらと国際俳句機関紙の「吟遊」を創刊しました。
2000年にはスロベニアのトルミンで世界俳句協会を創立、第1回大会を開催しています。
今年9月には東京で第10回大会が開かれると言うことです。
夏石さんは世界俳句の観点から創作と翻訳を続けるほか、2018年には編者として山頭火俳句集を出しました。
この中で種田山頭火を世界俳句に繋がる前衛詩人と評価しています。
東京大会には18カ国、アメリカ、アジア、アフリカ、ヨーロッパからほぼ30人来ます。
テーマがあり、「俳句その地域性と世界性」。
19世紀後半から俳句が世界に広がり始めました。
東京都から80万円の助成金があり説明を受けて来ました。
お金が足りないのでクラウドファンディング( Crowdfunding 群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語)の謝礼を作っています。(絵を書いたり、字を書いたりして)
参加して下さる方の俳句8句、顔写真、略歴を2言語にして収録します。
世界俳句はどういう言語であっても成立します。
年4回「吟遊」を発行しています。
妻(鎌倉佐弓)らと一緒に1998年に創刊しました。
1996年~98年にパリにいって、その後ヨーロッパで出会いの機会を作ろうと機運が高まっていました。
俳句は5,7,5 季語があるが、それがすべてではないと言うことです。
松尾芭蕉の訳の句も知られているのは5,7,5ではなくて3行訳なんです。
その国の音楽性がいい音節の数に訳されています。
世界では共通の季節感は無い、ネパールでは季節は6つあり、アメリカでのイリノイ州では1日のうちに真夏から真冬まで体験しました。
「未来より 滝を吹き割る 風来たる」 作:夏石番矢 (教科書にも載っている)
大学院生時代に作った句で、その後未来の滝と言うタイトルの句集もアメリカ、フランス、ルーマニアでも出ています。
群馬の吹き割りの滝を見て作った句です。
この句は44言語に翻訳されました。
ポルトガルの代表的詩人、日本にも2回来てくれました。
「ここに天国 我らの身体 同じ歌歌う時」
ポルトガル語での紹介
モロッコのベニスさん
「裸を見るのが好き 踊る女 炎でしかない」 訳:夏石番矢
ギリシャの女性
「この果物に 虫と共に 神の声 横たわる」
2019年 第15号 最新号 51カ国、39言語、174人、503句が入っており大変でした。
「虹の橋 別の仕事が したいです」 山岸竜治さん
「海遠し 洗濯機が 泳いでる」 金城けいさん
「広場で買う 水には 夕焼けのおまけ」 鎌倉佐弓さん 外国(イタリア)の風景
私が最初に作った句は覚えていないです。
「足止めて 見るは梅雨の 唸る川」 郷里の鞍居川の氾濫を詠んだ句です。(14歳)
「降る雪を 仰げば昇天 する如し」 (高校1,2年生の時)
山口誓子さんの「天狼」に掲載される。
東大学生俳句会に所属することになります。
第1句集1983年(36年前) 「猟常記」
「冬の朝 階段の音に もう一人の我」 (高校時代)
「裸日を 今夜も星々は 誤植だ」 日本の冬は星がよく見えます。
「みなみの大魚の 夢に入りて 叫びたし」 神話を詠む。
2018年 山頭火俳句集の編者。
山頭火は世界俳句の視点で見ると、日本だと芭蕉、蕪村、一茶になるが、世界的な視野で見ると 芭蕉、山頭火になります。
世界的に見ると独創的なものが必要になります。
山頭火は凄く読書家で知識人でもあります、この人の教養の基礎は天神様なんです。
防府天満宮の寺子屋にも小さいころから学んでいて、小さいころから書もやっていました。
神経も細やかな人でした。
日記の中の句が面白かったです。
「闇が 空腹」 山頭火の短い俳句 実際に夜中の不眠に悩みながら、お金も無い食べ物が無い夜を過ごして、苦しんでいて、インパクトが強いです。
「氷の禁域」 羽生結弦選手とリンクする部分があります。
「星も人も 高速スピン 氷の首都」
「氷の上で 無極動の炎が 手足か」
「禁域」 入れない特別な場所という思い。
「氷の禁域」がインドで印刷、出版された。
出版社のオーナー二人が文学博士です。
最初は西ヨーロッパに広がってアメリカに広まって、第3世界に広まっていきました。
今後国が増えそうです。
(掲げてある俳句の文字が違っているかもしれません)