速水 洋(歩行訓練士) ・歩くよろこびをともに
63歳、1990年から視覚障害者を対象にしたウオーキングの会「白い杖の集い」を主催しています。
大阪市にある長居公園のマラソン周回コースを月に一度歩くものでこの6月で355回を数えます。
およそ30年もの間途切れることなく続いてきた秘訣そこに込めた思いを伺います。
歩行訓練士は目が見えない、見えにくい人達に白杖を使って歩行訓練をすると言う、独り歩きしてもらうものです。
私は家庭訪問をして歩行訓練を行う、歩行訓練士です。
生活の為に歩く訳ですから色々なものがあり、10円玉と100円玉が判るとか色々有ります。
急に目をつぶると色々できない。
目を使わないで物ごとを処理する方法が判らないから。
歯ブラシに歯磨き粉を乗せるにはどうするか、いくらでもありますが、例えば歯ブラシに指を添えて、自分の指に添える感じでチューブを出せばいいんです。
ウオーキングの会「白い杖の集い」は1990年からやっていますので30年になります。
長居公園の身体障害者スポーツセンターに第二木曜日に10時に集まると言う事だけなんです。
一周2813mで15周歩くと42,195kmになります。
思い思い自分のペースでやっています。
身体障害者スポーツセンターの部屋の中で自転車をこいだりするのもいいが、思い切り青空の元でのんびり歩きたいと言う人がいました。
それでやってみようかと言うことになりました。
目が見えない人が歩けなくなるのは
①危ない。
②今何処に居てどっちを向いてて何処へ行けばいいのは、方向の問題。
アメリカからやってきたオリエンテーション アンド モビリティートレーニング( Orientation and mobility training, 視覚障害者の単独移動を促進するための学習や練習。)と言うものがあります。
公園では方向性が難しい。
マラソンコースの道(一般の車は入れない)であれば周回して、迷わない。
最初集まったのは3人でした。
次回は6人になりました。
次には12人になりました。
会員と言うのは無くて気が向いたら来るようになっています。
私は何人来たかは記録に付けています。
5月の時点で一番多い人が274回、連続してきているのが184回と言う人がいます。
色んな交流が生まれました。
私は和歌山県で生まれました。
高校3年の時に大学に行きたいと言う事で、高校卒業後、福祉の方に行こうかと思いました。
父親が視覚障害の2級だったんです。(弱視 杖なしでも歩ける程度)
東北福祉大学に行きました。
大学2年の時に河添邦俊先生の障害児教育の発達理論の講座がありそれにすごく感動しました。
人間の可能性に感動しました。
寝た切りの子は寝ることができると言う発想です、できないことは無いんだと言うことです。
卒業後東京の施設に行きました。
視覚障害プラス知的障害を併せ持つ人達の訓練施設でした。
そこに歩行訓練士が居て面白いなあと思いました。
歩行訓練士として大阪に行くように言われました。
3年後に大阪で歩行訓練ばかりする所に欠員が出来たので、そこに飛びつきました。
妻は訓練生でした。
歩行訓練をすると出来なかった事が出来るようになります。
マイナス思考からプラス思考に変わっていく過程が一緒に見られる訳でそれが凄いです。
一緒に喜べるわけです。
彼女(妻)も積極的ではなかった。
私はNHKのTV番組に出させてもらって、それを見て、視覚障害者の歩行訓練と言う言葉が耳に飛び込んできて、NHKに問い合わせて、家に来ました。
彼女は歩行訓練を通して前向きになっていきました。
決め手は可愛かったです。
本を書いたり講演活動などを2人3脚でやってきました。
視覚障害を理解してほしいと訴えて来ました。
妻は3年前に亡くなりました。(以前からクローン病でした。)
気が弱いけど我が強い人でした。(人当たりはいいが自分を曲げない)
視覚障害に付いて判っているつもりでも、判り切れていないと言うところがちょいちょい出てきます。
目が見える人は色んな事をやってしまう、1秒、2秒待てばできることをつい言ってしまうと当人は恥ずかしい思いをしてしまう事がある。(靴の履き違えとか)
杖一本で外を歩けるようになるので、家の中ではどれだけ可能性が広がるかと言うことです。
人が喜んでくれるのが楽しいです。
プラス思考に変わっていくその瞬間を目の当たりにできて、こんな経験ってなかなかできないです。
歩行訓練をすると言う事は自分の弱みをさらけ出すので大変ですが、一人で歩きたいと言う思いがあるわけです。
落ち込んでいて自分と同じ様な人はどうしているんだろうと周りの人を気にして「白い杖の集い」に参加して仲良くなるパターンとかあります。
喋っているだけで元気になります。
平日にやったのが良かったと思います。
ルールは無いです、自己紹介はします。
全国各地でこんな取り組みをして欲しいと思っています。
できるだけ今の感じでやっていきたいです。
歩く喜びのお手伝いができることは凄いと思います。
生涯一訓練士として頑張っていきたいです。