藤原道山(尺八奏者) ・【にっぽんの音】
案内役 能楽師狂言方 大藏基誠
色んな分野の方と共演をしていて坂本龍一さん、野村萬斎さん、サックス奏者のケニー・Gさん、ウイーンフィルなど様々な方とコラボレーションしています。
自分の中にないものを知る事が出来ることと、音楽を共有できることが嬉しいです。
自分の音楽の引き出しが増えて行く事も嬉しいです。
共演者とは自分が思い付く時と、たまたまのご縁があった時などがあります。
尺八の音はフルートに近いと思います。
尺八は音色が多彩だなあと思います。
西洋の音楽は綺麗な音を出す事が普通メインですが、尺八は雑音みたいなものも音楽の一つとしてとらえられてきたので、それが面白いと言う事で逆に西洋の人達が取り入れてやったりしています。
ウイーンフィルの人と共演した時に、私をずーっと見ていてたフルートの人が真似をしてきました。
音で会話できる面白さがあります。
*「実のり」 ウイーンフィルのコンサートマスターのフォルクハルト・シュトイデ(ヴァイオリニスト)という方と初めて共演した時に、是非これからも共演したいと言う事で、共演するようになってそれで作曲した曲です。
これはウイーンのホーフブルク宮殿の中にある教会でウイーンフィルの人達と録音しました。
ここでシューベルトが歌ったんだよとか、ブルックナーが指揮をしたんだとか、教科書に出てくるような歴史的な方々の名前がどんどん出てくるような場所で演奏できたということはテンションが上がりました。
作曲は僕がしました。
ヴァイオリン、チェロの部分、アレンジは大島ミチルさんにお願いしました。
僕もフルートの研究をして、別なところから見る事が出来て勉強になりました。
尺八のノイジーな音、風の音が加わったり、そこにまとっているものが日本らしさだったりするものがあるかもしれません。
月も色々な言葉で表現したり、色も細かく表現したり、日本の繊細さがあると思います。
尺八には大きく分けて技が3つあります、息の技、指の技、首の技。
息の技は音色の変化、綺麗な音から力強い音迄出す。
指の技は半分開けたり、1/4開けたりすることで一つの穴で4つの音が出ます。
首の技は首を横に振るとビブラート、縦に振ると音の高さが変わります。
3つをコンビネーションして音を作っていきます。
尺八はなかなか音が出なくて、始めた時は1週間音が出ませんでした。
音の出ない楽器に初めて出会いました。
アメリカのシカゴに行った時にヒビが入ってしまった事があります。
急激な乾燥が一番良くないです。
音も乾燥していいる時と湿気が多い時で多少音が違ってきます。
*「ゆりかごの歌」 日本の童謡 歌うような感じの作品、優しい感じの音。
尺八は荒々しい音が出る楽器と言うイメージがあるので、優しい音が出る楽器だと言う事を聞いてもらいたいと思ってこのようなものを出しました。
祖母、母もお琴を教えていたので、日本の音は常に身近にありました。
お琴よりは笛が好きでした。
祖父の友達が尺八をやりたいと言う事でついでにやったらと言われて始めました。
2020年にはデビュー20周年になります。
父はクラシック、ジャズなどの洋楽も好きでしたので、そちらの方の音楽も耳に入ってきていまして、いいものはいいと言う思いはありました。
日本の音とは、竹林を通る風の音、あの音はとても印象深いです。
心が整って行くような思いがあります。
大伴家持の有名な歌で
「わが宿の いささ群竹 吹く風の 音のかそけき この夕べかも」と言う歌がありますが、「かそけき」 ひそやかなとか微妙なと言う意味ですが、ああいう音の変化を楽しめるのが日本人ならではないかなと思います。
竹林で演奏したこともあります。
*「最上川舟歌」 歌 伊藤多喜雄
大地から湧き出てくる歌と言う感じがして民謡の力強さを感じます。
古典を大事にするからこそ、新しい事をやって古典に導いてゆく。
古典もできた当時は最新の音楽であったので、良いからこそ時代を越えて伝わっていったと思っているので、人間にとって大切なものが含まれていると思います。
来年20周年になりますが、初心にかえって自分の音楽を見つめ直して、次のステップアップをしていきたいと思います。
*「東風(こち)」 日本の音楽を西に向かって吹きたいと言う思いで作った曲です。