2016年7月7日木曜日

カオリ・ナラ・ターナー(メイクアップ・アーティスト) ・「笑顔で夢をかなえてきた」(1)

カオリ・ナラ・ターナー(メイクアップ・アーティスト) ・「笑顔で夢をかなえてきた」(1)
82歳 アメリカ ハリウッドで40年以上トップレベルのメイクアップ・アーティストとして活躍を続け、TV界のアカデミー賞と言われるエミー賞を日本人で初めて受賞しました。
先月日本に一時帰国したカオリさんのインタビューを2回に分けて放送します。

日本では美容学校、ご婦人たちのものの考え方、日米の女性のどっちが幸福なのかという様なものの考え方、色んなところに呼ばれています。
映画、TVの場合、映画にそった役柄に合わした顔を作らなければいけない。
For the Boys」という映画の場合17~80歳までの女の一生の様な顔を段々つくって行かなければいけない。
*「For the Boys」:軍隊慰問歌手ディクシー・レオナルドの半生を描く人間ドラマ。
俳優の都合、撮る時系列などで若かったり、歳取ったりした顔をその都度対応していかないといけないし、17歳から80歳での撮った時の顔が違っていてはいけない。
例えば、顔の傷の状態、色なども、日によって傷が変わっていかなければ行けないので写真を撮っておかなくてはいけない。

メイクアップ・アーティストとして砂嵐、寒さなど過酷な現場でもあります。
交通事故の場面だと、どういう転がり方をしたのかとか、それによってどういうふうに泥を付けたり、紫色にするのにも、各所各所に付けたり、面白さでもあります。
やけどの場面も、噴火して煙が静まったら、全身に見えるところにやけどを作らなければいけない。
上手く出来た時は本当にうれしいです。
一人一人がそれぞれ担当を一秒一秒に命をかけてやっています。

色々な要望にたいして対応していかなくてはいけないので、あらゆる場合のものの化粧道具を持っています。
手術の場面でも、その人の肌の色(白人~黒人)をカバーしなくてはいけないし、(同じ白人でも10種類あります)、ゴムで作ったお腹の内臓の上に、薄い血のりを載せて、カバーの嘘のものをお腹に置いて肌色に塗ってそれを切って血がでるとか、一つの場面でも一日がかりになる。
今は撮影機材が良くなって撮った場面を良いか悪いか直ぐに確認することができるが、昔はそうはいかなかった。
昔は傷を作るのに手作りだったが、今は傷が出来上がってるものがいっぱいあって、それを貼ってメイクすればいいだけになってきている。
手で作ったものとはったものとでは違います。
ユニオンで決まっていて、8時間はもらえるが、オーバーになるとパーセンテージがついている。
映画では10時間~12時間は普通で、TVの場合は時間が決まっているのでオーバータイムが増える、20時間ぐらいに増えることもあって過酷です。(お金は増えるが本当に過酷です)
TVは私は嫌いで、映画のほうが私は好きです。

For the Boys」という映画の中で、戦場に慰問に行く場面があるが、1000人ぐらいの兵隊がいたが、それは本物の兵隊さんだった。(兵隊さんがエキストラをやる)
ある場面が終わって、湾岸戦争が始まって、そこにいる兵隊が全部行くように命令があって、この兵隊さんたちを慰問しようという事になりました、明日は戦場に行くのかと兵隊さんのことを思うと胸がいっぱいになりました。
私は両親が自分がしてほしいことを人にしてあげなさいと、育て上げられたので、寒い時はジャケットをかけてあげたり、疲れた体の肩をもんであげたりしましたら、本当に喜ばれました。
こういった気使いは日本に生まれてよかったと思っています。
最近はそうではないようですが。
肩がぶつかると向うでは笑顔を交わすが、日本ではぶつかると睨まれてしまう。
一番いい顔で電車に乗ったりしてほしいと思います。(電車の中では寝ているか、携帯をいじっている)
日米で違うのは風邪をひいた時に日本では無理してゆくとよく来たねと言われるが、米国ではうつされるとまずいので、今日分のお金は払うから直ぐ帰る様に言われる。
明るい人は、にこにこしている人は、ユニオンから仕事の声がかかって呼ばれる。(ある程度テクニックは同じで結論的には人間性)

日本では俳優さんを大事にし過ぎる、むこうでは5分5分の付き合いですから。
日本では頬がふっくらしている方が喜ばれるが、アメリカでは頬骨がはっきりする様なのが好まれ、その人の骨格に合わして化粧をするのでアメリカ人の方が楽です、シャープに仕上げます。
むこうの人は一重の目の人が羨ましくて好きだと言います、セクシーだと言います。
向こうでは鼻を削ったり、胸を小さくしたりします、ブラジャーの紐で肩が凝ってしまうということで文化の違いを感じます。
装うと言う事は女に取って、或る楽しみであり、宝ものであり大切にしないといけない。
むこうは皮膚が薄くて弱いので直ぐにしわがよってくるし、一遍延びたら縮まない、たるんできたり、垂れてくる。
メイキャップで大変なのは、首の垂れをガムテープようなもので後ろに引っ張って隠すのが大変です。
風呂は毎日入る、疲れた顔をアイロンかける様なもの。
洗った後に顔に卵の白身を塗って、そしてお湯で白身を落とすとぴかぴかに光る、そのあと自分に合った乳液を付けて、ティッシュペーパーで覆ってやって、乾いたら取れば完全に乳液は中に入っている。
化粧も大事だが、自分が美しい心にならないといけない。
物事を良い方に考えると目の輝き方が違う、いくら化粧をしても目が輝いていないと駄目です。
楽しく生きなきゃ、みんな苦労はあります、無い人はいません。

日本人はもっともっと外国に出てほしい、日本人は器用で優しい。
箸を持つと言う事は凄く頭にいい、それだけで日本人は得をしています。
日本文化を最低一つ(茶道、花道、柔道などなど)身につけて来てほしい、プライドが持てます。
外国に出て始めて日本の良さが判ります、いかに皆さん雑な人が多いか。
いつも教え子にいいますが、二ついいものを持っていて、欲しいと言われた時にあげるのに、辛いけど良い方のものをあげてみなさいと言います、そうすると後で気持ちい、悪い方をあげると後で後悔する。
いい絵を見たりいい話を聞いたりいい本を読んだりして、自分を磨いて、自分の意見を持つ女性になり、所作を身につけて欲しい。
メークをすることによって、自分の心が楽しくなる、そうすると人に優しくなれる。
笑顔を持つ、笑うと笑顔も優しくなる、赤ん坊はあやしてくれる、大人になったら自分で人をあやしたり、自分をあやしてほしい、癒しの時間を作りましょう。
良い種をまけば良い花が咲き、悪い種をまけば悪い花が咲く、人に優しくしましょう。