2016年7月18日月曜日

小笠原清忠(小笠原流・宗家)  ・品格は美しい姿勢から

小笠原清忠(小笠原流礼法三十一世宗家・品格は美しい姿勢から
鎌倉時代から850年近くにわたって、代々受け継がれてきた小笠原流礼法、流鏑馬や弓道の武士の世界の礼法と思われがちですが、その神髄の常に正しい心を持ち、常に正しい姿勢を心掛けるという教えは和の心を持つ、無駄なく美しい動きを生みだし、国際化時代の現代人の日常行動にも大いに役立つと言います。
外国人から日本の素晴らしい文化と賞賛され、最近見なおされつつある日本の伝統に根差した礼法を31世小笠原流宗家清忠さんに伺います。

小笠原初代は1162年に甲州、小笠原の庄がありそこで生まれて、当時の関東武士は京都に行って学ぶと言うのが全国的にあって、小笠原長清も京都にでて礼法、教養を身に付けていた。
1185年に頼朝が、鎌倉幕府を作って、京都の文化を取り入れて指導するようにと言う事で、帰って来いと言うことだったが、なかなか返してもらえなかった。
文治3年にやっと帰ってきたということが東鏡にあります。
私で31代目になります。
息子に継がせてゆくと言う事で、女性に継がせることはなかったです。
何人かに競わせて一番優秀なものに継がせる。
「弓は唯射て見せたとも無益なり、何ともなくて気高きぞ良き」 歌
弓は射て見せる、引いてみせるものであってよくない、何にもしなくても気高き、それがいいんだ。
「なり姿流れ流れに変わるとも奥意は同じ谷川の水」
川の流れは、流れに従っていろんな形を作ってゆくけれども、基は一つ、谷川の水。
礼法もそうで、武道、お茶、笛の礼法などといっているが基は一つ。
「究めれば無色無形なり」
色があるのはよくない、形があっても見せているだけ。

息子、男の孫もいます。
古いものをきちんと伝えてゆくのがうちの使命だと思っています。
礼法、弓道、馬術ができないと小笠原流ではない。
明治以降、礼儀作法を言われるが、もっと前は礼法があり、心と体を養うと言うのが主目的です。
常に正しい心を持ち、常に正しい姿勢を心掛ける。(昔はあった)
立つ、座る、歩くで以って足腰を鍛える。
歩く、常に真ん中に重心があり、後ろ脚を前に異動する、そうすると腿の筋肉を非常に使う。
明治期に崩れてきてしまった。
江戸幕府が崩壊して上級武士が無くなり、教養のない人も取り入れられて重い役に就くが、「野人礼になれず」という言葉を使って、逃げてしまう。
楽な方に行ってしまって、今の日本全てです。
歩きながら食べるなと言っていたが今はそうなってはいない。

立つ時は、風のない日に煙が空に立ち上るがごとく立て。
座る時は、水の中に石を落とすとスーッと沈んでゆくが、沈むがごとく座る。
真っ直ぐにということと、スピードが変わらないこと。
立つときは、立つ瞬間に気を付ける。(前傾をしないで立つ ももの筋肉を使う)
座るときは最後ゆっくりしなさい。
例えば、TV見るときにリモコンを取りたいと言った時に真っ直ぐ立てるかという事をやってみなさいと言っています。(腿の筋肉は鍛えられる)
膝行、膝退が出来るのは相当稽古しないと出来ない。
黒沢監督が映画のシーンで膝行、膝退を撮ろうとしたが、役者ができなくて、そのシーンを外したと言う事も聞いています。
NHKの大河ドラマでのシーンでも、うちの門人が吹き替えました。
昔、弓を射るシーンでも私が殆どやりました。
お辞儀をする時に吸う息で身体を曲げてゆき、吐く息だけ止まる、吸う息で起きあがると言う事をやった時に、吸う息で曲げてゆくのはゆっくりで、吐く息が早くて、起きあがる時の吸う息は早くなる。(動作に呼吸を合わせている)
呼吸に動作を合わせる。(自分の呼吸が判らないと呼吸に動作が合わせられない)

人によって呼吸はそんなに変わるものではなく、だから息が合う。(気持ちの交流ができる)
お辞儀は非常に大切なことだと思います。
手を前で組んで御辞義をするのは(リラックスした状態)、緊張した姿勢ではなく、それでお辞儀をするのはもう相手にたいして失礼に当たる。
手を前で組むと言う事は肩が前に行き、正しい姿勢ではない。
新日鉄の武田さん(昔は富士製鉄の人事部長だった)は、私が学生の時に尋ねた時の応対が素晴らしいかった。
厚生省の労働衛生局長をされてた、山口正義先生(後の結核予防理事長)の応対も素晴らしいかった。
伊達正宗が家臣に言った言葉、「この世に客に来たと思え」 御客さんでこの世に来たと思えば、そんなだらしない恰好はどこでもしないだろうと。
立ち居振る舞いが雑な人は会った人からの信用度が低くなると思う。

江戸時代までは将軍家に仕えていたが、明治になって一般を相手にして生計を立てると、どうしても妥協しなければいけないことがあるので、技が嫌しくなると言う事で、曾祖父が礼法で生計を立てるなと遺言を書いてそれ以後、必ず仕事に就く事になっています。
医療金融公庫に勤めながら小笠原流宗家を継いできました。
西洋の騎士道 正しい姿勢は求められる、乗馬とダンスをして正しい姿勢を学ぶ。
靴をはく生活と靴を脱いでの日常生活で大分違う事はあると思います。
体幹を鍛えることがはやっているが、立つ、座る、歩くの礼法をやれば体幹は鍛えられると思う。
4年前、国際柔道大会があり、体幹を鍛えるのを見せたいと言うので特別演舞してほしいとの要望がありお見せしたが、見ているかたは外国人の選手とコーチで日本人はまるっきり見ていなかった。
礼法のビデオを見せるが、誰がこういう事をやるのと聞くのは日本人、外国人の記者たちはこういういい文化があるのに、何故日本人はやらないのか、という声を聞きます。
歩く動作も直すには、大分時間がかかると思います。