2013年1月6日日曜日

横山秀夫(作家55歳)      ・再始動警察小説の旗手



横山秀夫(作家55歳)  ・再始動警察小説の旗手  
1957年生れ 大学卒業後上毛新聞社に12年間勤める  
1998年「影の季節」で第5回松本清張賞を受賞 作家としてデビュー 警察を舞台にした
数々の小説でベストセラーを出し続けます 2005年「震度ゼロ」を発表以降心身の不調のため 7年間新刊を出せなくなりました
昨年の秋、久しぶりに刊行された警察小説「64」は執筆してから10年以上の時を経てから
書店に並ぶことが出来ました
「64」刊行までの長かった道のり、執筆中の思いをお聞きします

7年ぶりなのでデビューの時より緊張した 自分で送り出した本がどの程度戦ってくれるのか 
もう祈るような気持ちですね
ミステリーの好きな人達が今年一番面白かったミステリー本 文春図書館ミステリー 1位  
このミステリーが面白い で 1位 と2冠を取る
自分としては最良の自信作として出したつもりだが、読者がどう判断するかは解らなかった
書けないこと 自分に対する恐怖 驚き、失望 とかが先に立ってしまった様な時期が有った
一言でいうと 思ったものに成らない  作家としては書けないと言うのは 零点ですから、
 毎日零点を自分に付けてゆくのは辛かったですね
あせりますね、しかも 本を最後にだしてから2年経ち、3年経ち、 年月が過ぎれば過ぎるほど 自分のあせりも溜まるし 
読者も3年も4年も待ったのだから確かなものが出て来るだろうと、
期待値が上がっているだろうという推測なども自分に跳ね返ってきて、それが4年5年となって 全く見えなくなってしまった

きっかけというのは 具体的なものではなかった  庭で草むしりなどをしながら、ふっとそうだったのかというような瞬間が有って パソコンにむかって
叩いたりしたが、それでうまく書けたわけではないが、なにか気付いた事が有ったりして、日を追って そうだったのか こうすればよかったのか
と言う様な事が多くなってきて、部屋に閉じこもる様になってきた  
何がきっかけなのかは解らないが、時間が解決してくれたのかなあという風にも思っている
最初睡眠時間4時間で 間に合わなくなって、3時間半 3時間と削っていった  
マンションを借りて、1年の内10数日しか家に帰らない状況が有った
身体の方が参ってしまったが、ただ気持ちが折れることはなかった  
その後もやる気満々だった 

「64」でポキっと言うような感じだった  どういう風に手直し、したらいいのかが、全く出来なくなってしまった
10年以上時間を掛けてしまった  昭和64年に発生した未解決の少女誘拐事件の事を指す
、県警のなかでのふちょうがロクヨン 
刑事以外の警察官を主人公に警察内部の事を書く手法   この手法のパイオニア
組織とその中で生きる個人 と言う事をずーっとテーマにしている   
組織の中に居た時には解らない組織と言う者が有ること 組織から離れて解った
フリーとなったときに そのことも幻想だったとの思いがしてきて、組織に属していようが居まいが 
出版業界とのしきたり、しがらみの中で自分は立ち振る舞いをするわけですし、
日本社会、日本というものが一つの大きな組織体なので その中から完全に自由だと言う事があり得ないのだという事がデビューから    7年間で身にしみたので  おそらくその辺りから
「影の季節」の組織の中のいざこざの嵐を事件と見立てるみたいな発想に繋がっていったと思います  
「影の季節」は42歳 「ルパンの消息」は34歳の時で新聞記者として仕事をしながら書いていた  社内では爆発的に驚かれた
当時書くのが楽しくて楽しくてしょうがなかった  
会社に本を書いていたことがばれてしまって 筋が通らないと思って会社を辞めてしまった
佳作止まりで 会社を辞めてしまった 結婚もして子供が二人いたので 厳しかった アルバイトで少年漫画の原作を担当していた

自分の持ち場がどこにあるかって、自分では決められないし、自分ではわからないのかもしれない と言う風に感じたりして、組織と個人を書いた
部分が好きという多くの読者は重なる、共感できるものだと思う
人の誇り(誇りはどんどん削られてゆくもの それが当たり前だが だがかけらだけは持つ それは掴んでおけよ)、矜持 
書いているうちに出て来るものが文章としても言葉としても本物だと思う   世に出るまで大変な作業だと思う