2015年10月3日土曜日

玉本英子(ジャーナリスト)     ・誰でも加害者になる ~戦火の中東 取材報告

玉本英子(ジャーナリスト)     ・誰でも加害者になる ~戦火の中東 取材報告
48歳 玉本さんは1994年からアジアプレスインターナショナルというフリーのジャーナリストが集まる組織に所属しています。
アフガニスタン、シリア、イラクなど戦地の様子を撮影し、TV、新聞、著書等を通じて伝え続けています。
21年間にわたる中東取材で何が見えてきたのか伺いました。

今年も5月ごろまでイラクの北部でIS支配地域との最前線まで行っていました。
クルド自治区とISの支配地域が隣り合わせになっているので、クルド自治区を拠点にIS支配地域ギリギリまで行っていた。
荒野に3mの高さに塹壕が掘られていて毎日の様に戦闘が行われています。
IS側が夜に忍び込んで来ると言う事があるので対応できるようにしている。
塹壕の近くの最前線でも普通の人が暮らしているのには吃驚した。
ISが非常に勢力を伸ばしてきたのが昨年辺りから、去年6月にイラク北部の第二の都市モスルを襲撃して、その後に近辺にイスラム教徒とは違う、ヤジディ教を信仰している、クルド人がいるが、この人たちが暮らしている村々を去年8月にISが襲撃した。
フセイン政権時代でもヤジディは悪魔崇拝だと言う考え方を持つ人たちが沢山いて、抑圧されて迫害されるという事がありました。

2012年にヤジディの村に結婚式に呼ばれた。
何にもない砂漠地帯に一つテントが張られ、花嫁は白いウエディングドレス(17歳)、男性はスーツを着て、500人位の人が着飾って、手をつないで踊って結婚を祝っていた。(私も参加)
去年の8月にはこの村もISに襲撃されて、女性たちは拉致されて、男性達は殺されました。
結婚式で出あった彼らが元気にしているのかどうかは判らない。
男性たちにはイスラム教徒に成れと、ならなければ殺すというが、イスラム教には成れないと言うとその場で射殺される。
女性たちは戦利品(奴隷)としてISの支配地域に連れ去られ、その数は3000~4000人といわれる。
女性たちは大きな施設に収容されて、ISの戦闘員がやってきて、自分の奥さんを探しに来る。
イスラム教の教えでは売春は認められていないので、奥さんにすれば性的関係を持てるので、強制結婚をすることによって所謂レイプする事になる。
ISの戦闘員が暮らしている宿舎に連れてゆき、レイプして、1カ月ぐらいすると他の戦闘員に売るとか、そのようなことが起きている。

このような情報はISの支配地域から逃れて来る女性がいるので、彼女等から様々な経験を聞いています。
ヒアンさん(19歳) 拉致されたが、その時にはすでに結婚していてお腹には赤ちゃんがいたが、強制結婚させられレイプされてしまった、身体に傷も負わされた。
世界に彼女たちの事を知らせなくてはいけないと言う思いが高まりました。
ISだけでなく戦争というものは人々を残酷にしてゆくものではないかと思います。
戦争は敵の人を殺すことなので、相手を人として見なくなり残酷になる。
湯川さん、後藤さんが殺害された時にイラクにいましたが、何かあった時に国に迷惑をかけるのではないかと思いましたが、ネット等で中傷されてたりしましたが、見た時には本当に辛かったが、まだ答えが出ていないが、安全面を十分に気を付けながら現場に出ていきたいと思っている。
この行動は自分の責任で有ることは紙に残しています。

もともとは大阪のデザイン会社でポスターやパンフレットなどのデザインをしていました。
たまたまTVニュースを見てその映像に非常にショックを受けたのがきっかけでした。
ドイツでクルド人が抗議行動を起こしていて、その中の数人が自分の体にガソリンをまいて火を付けて、ドイツの機動隊に突っ込むという衝撃映像だった。
色々疑問に残って、もっともっと知りたいと思って、ヨーロッパに出かけた。
クルド人が集まるカフェがあって、話を聞いたりして通っていたが、たまたまTVでみたその人がやってきた。
行動を起こした理由を聞いたら、私の故郷にいったら私がなぜやったのか、君も同じ事をやるだろうと言われて、彼の故郷であるトルコの南東部に行った。
トルコの人口の1/5がクルド人で1000万人以上いて、国を作りたいとトルコからの分離独立を目指していて、クルドゲリラが現れてトルコ軍との烈しい戦闘が行われていた。
トルコの南東部にはクルド人が多く生活していて、クルドゲリラに登録しているのではないかということで、そこにトルコ治安警察が村の人たちを捕まえて拷問したり刑務所に入れたりして人権侵害が行われていた。

パン屋さんの男性は電気拷問を受けて、爪が真っ黒になって潰れていたが、そういった人たちから聞いた話は経験したことのない様な事で本当に吃驚した。
日本の人たちも知るべきではないかと思って、ジャーナリストになりたいと思った。
取材をする中で拷問を受ける人は弱者だったが、弱者が加害者になると言う側面があると言う現実を知った。
シリアではISが拡大しているが、若いクルドの女性たちが銃を持ってISと対峙している状況を見ました。
復讐すると言う事で銃を持つが、銃を持つと言う事は人を殺すということです。
それを止めることは非常に難しいと思う。(負の連鎖)

父は5歳の時に広島の爆心地から1.1kmのところで被爆しましたが、今の活動を始めた時はそこまで考えたことはなかったのですが、今にして思えば影響しているのかなと思います。
2006年6月、7月にイラクの東部のハラブジャで原爆展を私が開きました。
ハラブジャという町は1988年にフセイン政権が 毒ガス爆弾を落として5000人が亡くなった。
ハラブジャ事件
「ハラブ島」とそこの住民は呼んでいて、ハラブジャと広島をミックスした造語であり、イラクの広島だと言っていたが、 父の事も話をしたりするうちに、ここで原爆展を開けたらと思う様になった。
広島の復興した様子などの写真も掲載し、説明した。
被害と加害の両方を知ってもらいたいと思って、中国に進出した写真も掲載して、平和の大切さを心に刻むことができるのではないかなあという風な思いがありました。
戦争を止めるヒント、戦争が始まるヒントが見えてくるかも知れないと思って、そういったものが伝えられたらいいなと思います。

今年の3月と4月にクルド自治区の治安当局に拘束された元IS戦闘員の面会取材を行いました。
神様のためなら死も恐れない人達という怖いイメージがあったが、本当に普通の人だった。
イラクに何回もスパイ容疑で捕まって、拷問を受けて死にそうになるぐらい首を絞められて、母親も逮捕されて、復讐したいと思ってISに入ったとの事だった。
以前文房具屋をやっていて銃を扱ったことはなかったが、急に銃を渡されて前線に行かされることになり、恐ろしかったと言っている。
怖さを逃れるため、痛みをしのぐためなどでにコカインを使用したりしている。
特別な人達が殺し合っているのではなくて、本当に普通の人達が戦争というのは殺し合う、残酷で絶対できないと言う様に感じている事でも、やってしまうんだなという事を知りました。
戦争は何もプラスにはならない、戦争は何なのかという事を伝えたいと思っています。
平和授業での子供達の感想文 友達になることが一番大事だと、友達になることが戦争をやめたり、戦争をとめたりする一つのきっかけになるかもしれない、という内容のもので、学ばされました。
いま現実に世界で起きている事(戦争、紛争 そこから派生する諸々の悲劇等)を知ることは非常に大事なことです。