2015年10月28日水曜日

大原永子(舞踊芸術監督)      ・「大人向けバレエ」を根づかせたい

大原永子(新国立劇場 舞踊芸術監督)  ・「大人向けバレエ」を根づかせたい
71歳 東京生まれ 母親の勧めで4歳からバレイを習い始め、11歳の時に大きな転機が訪れました。
バレエの先生の養女となります。
厳しい訓練に耐え天才少女バレリーナとして注目されるようになりました。
ただ舞台で拍手喝浴びる一方でテクニックが重視されるバレイに疑問を抱いていたと言います。
31歳の時にイギリスに渡り、感情表現を重視するバレエと出会った大原さんは、スコティッシュバレイ団に入り、欧米の各地で活躍しました。
その後スコットランドと日本を行き来しながら、新国立劇場バレエ団の指導をはじめ、去年9月舞踊芸術監督に就任しました。
長く海外で踊った経験からダンサーの精神的な強さとより豊かな感情の表現が必要だと感じる大原さんは、そのために現在はドラマティックな人生をつたえる作品を選び観客を魅了する大人のバレエを見せたいと取り組んでいます。

私は現場が長くて、能力は現場で初めて発揮されるものと思っているので、いろんなこと全て眼を通したりはしようと思っています。
「ホフマン物語」の場合は古い私の過去からの作品なので、装置、衣装等新製作なんでも責任を持って対応しています。(「ホフマン物語」は新国立劇場で今後上演)
一人一人パートによってリハーサルの仕方は違うが、ドラマのあるものは個性を生かさなくてはいけないので、彼らの才能を引き出すだけでなく、自信を持たせることを心掛けて教えているつもりです。
新国立劇場に入団して(1999年の夏から)、10年前から ダンサーが自分で表現したいとか、もっと自立してきたと思う。
日本人は先生に従う事がずーっと血の中に入っているようで、よく聞きますし、自習もよくするので
真面目です。
自分の訓練してきたもの、自分の考えているもの、観客にどれだけのものを与えられるのかという事が大切だと思います。

4歳になるまで疎開していてバレエなどは知らなかった。
母親の勧めで4歳からバレエを習い始めたが、1年間毎回泣きに泣き通した。
私は覚えが無いのですが、写真を撮ることがきっかけで、お稽古をはじめたようです。
11歳の時に先生だった橘秋子さんの養女になる。(母が私のも父にも相談なく決める)
理解できずにいた。
実のお嬢さんが牧阿佐美さん バレエ学校で寝起きを共にする。
レッスン、日常生活の厳しさにはあさみさんがいたので耐えられた面もある。
2月に小仏峠での滝行もしたが、恐ろしいとか感じなかったし、苦労ではなかった。
料理、栽縫、お茶、お花等やっておいてよかったと思う。
13歳で牧阿佐美バレエ団に入団、主役を舞台で踊って、少女雑誌のグラビアを飾り同じバレエ団にいた森下洋子さんと共に天才少女バレリーナとして子供達の間で憧れの存在だったが、自分ではあんまり思わなかった。

その頃バレエのテクニックが主になっていて、疑問を感じていた。
イギリスの振付師ジャック・カーター氏が日本に来ていて、勧めでイギリスに渡ることになる。
スコティッシュバレエのオーディションがあり、ベリル・グレイに声を掛けられて、くるみ割り人形のこんぺいとうの精を踊りませんかと言われて、ゲスト出演させてもらって、よかったら入団してくださいというのが縁だった。
ピーター・ダレルの作品と出会えて、人柄にも触れて、これが私が望んでいたものが形になった様な感じです。
彼自身がドラマティックな人で、感情の起伏が激しかった。
彼は身体の動きで感情の表現を出す訳です、それは可能で私に示してくださった。
悲劇でも喜劇でも自分の実際の人生ではないが、演じるという事に感情を同じ様にその中に入れて吐き出すという事で、快感を覚えました。(日本ではそれができなかった)

演劇バレエが好きです、感情が強く出せる様な物が好きです。
役作りで日本では型にはまってしまう傾向があるが、自分が考えて私はこうやってみたいと役作りを考える。
バレエ団のダンサーはあちこちから来ているので、ピーターは細かい気使いがある。
52歳まで舞台で踊っていたが、50歳のちょっと前にバレエを踊るのは辞めると言ったが、自分が自信を持って踊れるものだけでもいいからと言われて、その後も踊ることになった。
怪我とかで辞める人でも人権の問題とかで2年間は辞めさせない様になっている。
10回手術をしている。 半月板損傷とかで手術をして失敗したりして膝が動かなくなって、大きな手術をすることになって、6から9カ月訓練出来ないと医者から言われたが、5ヶ月で戻りました。
バレエは生きることの道だったので。
欧米では劇場に行く事は楽しみであり、誇りでもあり、家族で楽しいものを見に行くという様な、生活の一部に入り込んでいるというのが深い様な気がする。
日本では襟を正して見に来るような気がして私が日本で踊っていた時には緊張します。

「ホフマン物語」 詩人ホフマンが3人の女性に恋をするが、どの恋も成就しないという悲劇。
ファンタジーの世界でもある。
各々3幕で違うストーリーなので、バレエのスタイルも違う、ドラマがある。
主役は同じ人だが各世代の年齢の違いを出さなければいけないので、主役の難しさがある。
年齢を出すことはなかなか難しいと思います。
.日本人は人に従う事を教えられるが、自分がしたいことをしっかり持っていないと、人間としての強さを持っていないと、自分の責任を果たすという事が大事で、演じている人が大人になって大人のバレエだと思うので、喜劇、悲劇で観客を満足させる、それが大人のバレエだと思います。
続けてこられたのはいい人との出会いがあったからだと思います。