新田ユリ(指揮者・日本シベリウス協会事務局長) 北欧の調べ、シベリウスに魅せられて
新田さんは1961年東京生まれ、フィンランディアや交響曲第二番など、フィンランドを代表する作曲家で来年、生誕150年を迎えるシベリウスの演奏をライフワークにしています。
現在は指揮者として活躍する新田さんですが、当初志していたのは、音楽教師でした。
新田さんがシベリウスをライフワークにしたのは、およそ20年前、シベリウスの奏でる北欧のメロディーが
幼いころ暮らした、北海道の大自然と重なり、心に響いたからです。
新田さんはフィンランドでシベリウスの演奏を数多く行う、ラハティ交響楽団で研修を行った経験から、フィンランドの音楽家との演奏活動も精力的に行っています。
シベリウス作曲の「クレルヴォ交響曲」 シベリウスの出世作 フィンランドを表現する様な素晴らしい曲
子供のころから楽器を演奏する事は好きだった。
近所のピアノ教室に通って、弾くと言う事が好きだった。
4歳からピアノを習い始めた。
札幌に引っ越して、素晴らしい先生に出会って、巨匠と言われるピアニストの演奏を聞かせてもらった。
今から思うと非常に大事なことを教えてもらったと思う。
バイオリンが好きだったので、レコードをきいたりした。
弦楽器の広がりのある全体的な響きに非常に憧れをもっていた。
札幌交響楽団を聞いていた。 東京に戻ってきて、N響に注目していて、コンサートマスターに注目
していた。
高校にオーケストラがあり、バイオリンを持つ機会があって、見よう見まねで、弾いた。
憧れのコンサートマスターの席に座れた。
職業として、音楽は頭の中にはなかった。
将来、教師としてつきたいなと、初めは音楽大学の教育学部に入る。
指揮研究会がサークルとして有り、小松一彦先生が習ってきた斎藤秀雄先生が作られた、斎藤メソーッドを、4年間の中で勉強した。
手が、何かを考えたこと、思ったことを 思う通りに動かないと相手に伝えるものなので、どのようにしたら明確に伝えることができるか、運動的なことを最初にたたきこまれる。
30分、同じ速さで手を振りなさいと言っても、疲れてくると、遅くなったりするので、それは困るので必要なテンポを正しく示す。
なにより力を抜きなさいと、言われる。
腕の力は必要最小限で支えられるような状態の訓練を受ける。
大学4年生の時に、小松先生に期待しているよ、といわれて、教師になることはやめて、アシスタントとして現場での修業を行いながら、小松先生の元にレッスンを通う。
尾高 忠明先生の前でドボルザークの新世界を振って、そのあとに先生に呼ばれて、話をしてその後先生から指揮棒を送られてきた。
桐朋で尾高先生(日本を代表する指揮者の一人)のもとで勉強する事になる。
子供のころからロシア音楽が自分の周りに在ったので、傾倒していたが、ある時期から北欧、英国 弦楽アンサンブルに触れる機会があって、ヨーロッパで勉強するための航空券を頂き機会があり、中央ヨーロパの劇場、オーケストラを廻って勉強する機会を得た。
自分の中に惹かれる音の世界があったんだと、気がついて、それが北欧、英国の弦楽作品だった。
古くから伝わる民族的な楽器の響きだったり、環境、自然が、上手に盛り込まれた作品が多かった。
20世紀になると、中央ヨーロッパは調性が崩壊して、無調になって、しかしその時代に在っても判りやすい旋律、判りやすい和声 、判りやすい響きを使いながら、新しい物を生みだしていっているという国が北欧であって、惹かれるものがあった。
日本が中央ヨーロッパから距離があるが、それと同じように中央ヨーロッパの周辺の国々、地続きではあるが文化的にもすこし距離のある国々の音楽の在り方に、日本が学ぶべきことがあるのではないかと、思った。
北欧の作品を集めて、演奏して、皆さんに知っていただく様な活動を始めた。
1994年以降なので、約20年経つ。
シンプルさは北欧の音楽にはある。
北欧、フィンランド等の作品は、音符がそう多くはないが、描かれてる世界はとっても広く大きく感じる。
シベリウス(1865年生まれ、亡くなったのが1957年)生きた時代は19世紀、20世紀にかけてなので、自然 特別に効果音がなくても、何となく音が聞こえる。(風、とか)
自然が生み出す音は、意識するととっても複雑に音楽的に鳴っていると言う事をシベリウスは凄く楽譜に書きこんでいる。
デリケートな変化をシベリウスは大事にしている。
作品として共通して言えるのは、同じことを絶対に二度書かない。
交響曲 スタイルがあるが ソナタ形式 初めに出てきたテーマが再現部に戻って来た時に、だいたい同じ物だが、そういう書き方をしていない。
フィンランドの人達、 フィンランドの三大3S シベリウス サウナム(サウナ) シス(sisu 忍耐強い 不屈な精神を持っているという意味)
フィンランドの人達は、日常の生活でも静かであることを大事にする。
邪魔する人にはちゃんと、苦情をいう、そういう文化がある。
演奏会場でも、小さな子を連れてくるが、大前提として静かに聞いていられると言う事が条件として暗黙の了解になっている。
都会から離れた時間を週末を過ごすと言う事をかなりの人達がしている。(電気、水道のない様な小屋 自然環境の中で過ごす)
静かな森の中で、小さい子供でも鳥の声を聞いて楽しんでいたり、静かな方が自分はリラックスできると発言したりだとか、静けさを大事にする。
北海道、広大な野原がある環境で育ったので、自分が体験してきた空気、音がフィンランドにあった。
喧騒が苦手で、フィンランドに行って凄くホッとした、懐かしかった。
窓にある雪の結晶が、少しずつ違う様に、シベリウスのの曲には書きこまれているが、遠くから見ると
とても白い色であったりと見える。
シベリウスは来年、生誕150年 企画が色々あって忙しくしている。
現在 日本シベリウス協会会長が 舘野泉 この秋から会長を引き継ぐ。