2014年7月5日土曜日

杉本節子(料理研究家)     ・京町屋の暮らしと心を伝える

杉本節子(料理研究家)     京町屋の暮らしと心を伝える
49歳、料理研究家として、京都で育まれたおかず、おばんざいをNHKの今日の料理や、エッセー等で紹介しています。
生まれ育った杉本家住宅は京都でも最大級の町屋で国の重要文化財に指定されています。
杉本家には暮らしの決まりごとを書き印した、「歳中覚え」 備忘録が江戸時代から受け継がれています。
杉本さんは公益財団法人奈良屋記念杉本家保存会事務局長として、建物を守るだけでなく、京町屋の暮らしと心を後世に伝えていこうと、活動しています。

国の重要文化財に指定されている。  明治3年に建てられて、築144年になります。
2度火事で失っており、蛤御門の変で焼けた跡に再建されて建物になっている。
間口 30mぐらいある。  間口が商売の規模で有ったり、なりわいがどういったものかといったものかを表すと言う事で大型の京町屋の建物になる。
京格子 ベンガラが塗られている。
構造としての美しさ、そしてべんがらから生み出される独特の色見の風情があったんだろうなあ、というのが彷彿とされる部分がある。
玄関を入ってすぐのところが、商売に使う部屋がある。
寛保3年1743年に呉服商を創業した家、祖父の代までが呉服商、地方百貨店を経営していた。
土間を通って走り庭がある。 不動さんがある。 使っていた人は20人以上いた。
中にに入ると庭がいくつもある。 座敷庭、壺庭が代表的な庭  
当家の場合、仏間が部屋として独立していて、仏間の隣りに仏間庭が繋がっている。
庭は庭として名勝指定されている。  作業場としての庭もある。

仏壇 大事な部屋 父が9代目 もともとは三重県の山の合間に在る農家の息子が京都にでっち奉公としてきて、独立して後々呉服商としてきた。
西本願寺の信仰を持っていた家なので、浄土真宗の門徒という事で代代過ごしてきた。
信仰の熱心なありようが、仏間を設けてある。
父はフランス文学者で 杉本秀太郎 芸術院会員
家業は閉じた状態になっている。 
遺産を財団法人にして、建物、京町衆の文化を伝えようと、次の家業と考えてやっている。
「歳中覚え」 3代目が寛政2年1790年に書き始めている。
天明の大火で焼きだされて、災害に在って復興してゆく中で、年中の暮らしを書きとめて、又新しく暮らしを始めた。
書き改められて、4回目のあらためが寛保2年、之が手元に在る。
300ページほどある。

奈良屋杉本家の個人の家としての習わしが書かれている。
1月~12月まで時系列で描かれている。
先祖の命日、法事の時の献立、報恩講年中行事の中でも最も重要な法要)の準備から、どの様な法要をするかが書かれている。
節句の献立、祇園祭伯牙山(はくがやま)山鉾) というやま(山鉾)をだす矢田町に建っているので、門徒であると同時に祇園祭のやま町の氏子であることが、くらしの中では大きく、年中行事の中では祇園祭が一番晴の祭りという事で、祭りの準備からいろいろなもてなし料理の事まで書かれている。
正月は 元日  大福茶(こんぶ2きれと梅干2個を入れたお茶)をまず頂く 白味噌雑煮(具は 餅、頭芋、小芋、大根)  三種の祝い魚 (ごまめ 3匹  数の子5切れ ごぼう2切れ)
祇園祭 お客様を迎える献立が書かれている。  祇園祭は、はも祭りとも言われる。
はも寿司 あゆ寿司 当家の場合はあゆ寿司  吸い物として、はもが具として入っている。

日常  決まりごと 朝夕茶ずけ、香の物  昼一汁一菜 9月10日~3月2日まで朝、茶粥
月に3度(10日、20日、月末) 皆にお魚がつく様にする。
おきまり料理 習わしがある。  決まった日に決まった献立をする。
業種、信仰によって食べるもの、の決まりは異なる。
当家の場合は毎月16日と21日がお決まりの日になっている。
16日は浄土真宗の親鸞の命日に当たる。 21日はご生誕の日に当たる。
16日は自家製味噌を使った味噌汁であずき(親鸞が好きだった)、小芋、焼き豆腐がはいる。
21日ご飯が茶飯 お汁は豆腐の細の目切り  5~8月は、なすびの泥亀(どんがめ スッポン)汁に変えてゆく(旬の食材)

3月3日 この日を境に火鉢をしまう。  
火事が起こった時に外からの火が入らない様に、土蔵の窓を締めると言う事が、重要な行い事として書かれている。
窓を開け放って、お雛様をだして、春を迎えると言う、季節季節のけじめみたいな事をはっきり覚書から見てとれる。
6月は梅、11月は大根を漬ける、と言う事も書いてある。
人付き合い 親類縁者だからこそ余計なやり取りは一切やらなくてよい、と言う事が書かれている。
商売で付き合いが沢山あるので、身うちでは行わない。
店の運用については別に書かれている。 定め書き 定例書がある。
接客の態度、行儀作法、商品管理等が書かれている。

料理 祖父、母が料理が好きだったので、見よう見まねで、料理のイロハを覚えた。
商家の日常的な暮らしの食事は贅沢を慎む、質素倹約。
料理は1円でも出費しない様な食材使いまわしをする。
おばんざいは、そういう心得があって成りたっているものなんですよと云う事をお伝えしたい。
お漬物 年中保存しながら使って行く。
おこうこのたいたん (古い沢庵の塩気出して細かく刻んで炊いたもの)  
最後まで使い切る、食べきる、食材を無駄にしないで暮らしてゆく。 

食に対して仕事をしている方々、専門分野を 小、中、高、大学、社会人まで含めて、出張授業をする。 京都府から認定される。(京都府食育先生)
昨年 京の食文化味わい館が出来て、おばんざいの料理などを教えたり、講演などもやっている。
町屋ブーム、おばんざいブームになっている。
無くなってきているからこそ、懐かしんだりするのだろうと思います。
和食文化が世界無形文化遺産に登録された事もある。
食文化 学校給食における和食の検討会議で検討している。
食育 伝統的な食文化をいかに、子供達に伝えて、継承してゆくか、重要だと思います。
和食の代表的なものが京料理だと思うが、作り方を教えるだけでなく、歴史背景をきちんと踏まえて教えてゆく様な活動をして行きたい。

「教文記」  食べ物に対する戒めが書かれている。
「色々料理を好むは、不養生の第一。」(好き嫌いの戒め)
集団生活の中で、自分だけの気ままわがままをするという事について、 戒めの象徴的なこととして、食べる事を例に取って言っている。
好き嫌いがあると、自分の健康も損なうが、健康に産んでくれた親に対しても最も親不幸なことになりますよと、戒めている。
「歳中覚え」は自然に対する畏敬の念を、思いはせるようなものだと思っている。