村石 保(ブックカフェ店主) ブックカフェで人と本の居場所を作りたい
63歳 長野県生まれ 文学少女だった母親の影響を受けて、幼いころから、おおくの本に囲まれて育ちました。
地元の高校を卒業後、芝居の製作を志して上京、舞台を初め映画の製作にも携わりますが、20代半ばに故郷の長野に帰ります。
地元の出版社勤務を経て、40代の時に独立、編集者として一緒に仕事を行ってきた妻の寺島純子さんと夫婦で出版社を設立しました。
去年、出版社のビルの1階にブックカフェを開きました。
町から小さな書店が消えて、大型書店ではベストセラーばかりが目立つ時代、行き場を無くして本の居場所を作り、読書と言う一人の時間を楽しんでもらいたいと考えたからです。
1000~1200冊はあると思う。
書斎に来たとういう様な感じがする。 10.5坪 6人も座れば一杯。
私の仕事場も兼ねているので、奥の方に私のデスクもある。
基本的には8割~9割は古書で、後は自社の本を含めて新刊がある。
私の独断、偏見でその本が売れていようが売れていまいが選びます、ほぼベストセラーは無い。
小説が多いと思う。
小説が売れない時代で、逆にあえて小説を並べている節もある。
約20年前に、ヨーロッパのブタペストに行った時に、小さな書店らしきものがありそこに入った。
真中がソファーになっていて、談笑しながら珈琲を飲んでいる、中には本を読んでいる人もいる。
心地いい、こんな空間があるんだなあと思った。
一昨年、ビルを借りた時に、之はいい機会だと思って、やり始めたのがきっかけです。
どこへいっても、書店の風景はおんなじに感じて、本に埋もれてしまう様で、人間て程よい空間、広さが必要なんだと思う。
昔は書店ごとに個性があった。 本と人との交わりがあった。
カフカの全集が店頭に置かれていると言う事は、日本の書店で夏目漱石、芥川龍之介等の全集がレイアウトされている書店がどれほどあるか?
幼稚園の時の運動会に写真があるが、これほど将来を予想した写真は無いと思っている。
皆用意ドンの姿勢をしているが、私だけズボンのポケットに入れて、あらぬ方を見ている。
怠け者、行動的ではない、人のやっていることを見ているのが好きだった。
本が好きになったのは、母親、姉が本好きで、本がたくさんあった。
本を読んでくれたり、話をアレンジして話してくれて、ことのほか面白かった。
物語の楽しさを知った。(耳から入ってきた)
本が読めるようになると、本の虫になった。
小説を読み始めると、その人の本をみんな読みたくなる。
ノンフィクションを読み始めると、それをずーっと読み始める。 随筆、又小説に戻ってきたりする。
10冊以上の本は併読している。(関連したものをに広がって行ったりする)
自分が昔東京で買った本が長野の書店から又買われてどっかに旅をしてゆく、古書店は面白いと思う。
高校卒業して、結構大きな劇団に所属したことがある。
田舎暮らしをしていると、中央の文化にとても憧れた。
杉村春子の「女の一生」 滝沢修の「炎の人」など 中学、高校時代に名優の芝居を姉と一緒に良く見ていた。
その影響は大きかった。 芝居を作ることが自分の仕事だと思う様になった。
アングラ劇場 唐 十郎 寺山修司が台頭してきたときで、新劇が否定され始めた。
そういう時期だったので、花園神社で赤テントの唐 十郎の芝居をみて、其ショックを受けた。
古典的なロシアの演劇だとかに携わっていて、ほとんど自分のやっていることが嫌になってしまって、2年で辞めてしまった。
映画少年で映画も年間250本とか映画を見るぐらいだった。
自分で映画を作りたいと思って、映画の学校に行くが、映画で就職できるような世の中では無くて、体調を崩したり、失恋もして都落ちする。
20代より30代、30代より40代 50代よりも今がいいと思っている。
ひょんなことで印刷屋さんのお世話になったりして、そこから編集の道が開けてくる。
妻とも知り合う事になる。
妻が会社を辞めてフリーで編集をやったりライターをやったりしていて、数年後に私も辞めて、出版社をやることになる。
昨年からはブックカフェを始めるが、儲かるわけがないことはわかっている。
ブックカフェは道楽だと思いこみ始めている。
きっとくるお客さんも楽なんじゃないかなあと、勝手に思っている。
出版の仕事、編集の仕事ではとても出会えなかった人と、出会えるようになったことは、面白い。
お客さんの本の選択の相談相手などになって、話し相手になり、出会いが深まる。
心が病んで、ぽろぽろ泣きながら話始める人がいたりして、この子がそういってくれたら、ここを開いた甲斐があったのかなあとは思いますね。
赤の他人が隣り合わせることがあるが、本質的な話になったりすることがあって、なかなか良いんじゃないかと思う。
ページをめくる行為は自分の時間、本と人間の1対1の関係、それを邪魔しないのが読書の時間。
ある意味孤独な時間、マイナスのイメージで孤独死を捉えるのは、どうなのかなと思う。
本を読むことは孤独な作業、だが楽しいと思う。
還暦過ぎると、人のたたずまい、人の行為を割と見ていられる、余裕というか、だから道楽と言っている。
なにより店主が一番楽しんでいるのかもしれない。
目的地に効率よくいくよりも、迷ったり、悩んだりして辿り着いた方が面白い、今、ちょっと立ち止まろうよという、本も人も行き場を無くしているからこそ、そんな場所が提供できれば、と思います。