長沼毅(生物学者、広島大学准教授) 微生物を追ってどこまでも
極限の環境に生きる、微生物を追って深海、地底、北極、南極、砂漠、火山など調査、生命の起源を求め世界中の辺境を巡る行動力から科学界のインディージョーンズと呼ばれ、その研究手法は辺境生物学と呼ばれ海外でも注目されています
何故辺境の微生物を追いかけるのか其探究心はどこから来るのか、伺います
本当は出不精なんです 仕事なのでいやいや行っています
微生物はこんなところには、いないでしょうと言うころにもいる
それ相応に特殊な能力を持っている、煮えたぎった熱湯の中とか、氷の中でも生きている、そういうものを調べる事に依って生命の限界を求めたい
温度だったら何度まで耐えられるとか、酸、アルカリだったらどの程度まで耐えられるのか、限界を知りたいと思った
わざわざ辺境まで行く 地球にいる生き物たちの生命、命の本質が解ると思った
今までの生物学は飼いやすい生き物をやっている それらは生物界のど真ん中にいる
はじっこにいる生物を調べたくて、生物の輪郭に興味を持った 輪郭が描ければ生命の概略、全体像がつかめるのかなあと思っている
温度、酸、アルカリ等の厳しい環境、生き物は水が無いと生きられないが、水分が全くない砂漠でもそれなりに生きていける
そこが生命の本質かなあと思った
生き物としての生物はあまり興味が無い 子供の時から理屈ばっかり考える方だった
自分とは一体何だろう、自分は一体どうしてここにいるのだろうとか、幼稚園の頃思ったりした
其時の衝撃は忘れられない
高校時代に生物の時間があり、大嫌いだったが、生命の起源とはという文章があった
大学で生命の起源の勉強をしたくて、ある教授の教えを受けようとしたが、学部を間違えてしまった(生命の起源は化学の分野、同じ名前の先生がいた)
本命の先生がいまさらしょうがないと、そこで頑張ってと言われた
そうこうしているうちに、日本人の初の海底火山の調査のメンバーに、参加できる機会が訪れた
海底火山こそ生命起源の場であると、言うような説が出回ってきたばっかりだった
其時に乗った船が海洋科学技術センターの船だった
海洋科学技術センターに入り、引き続き海底火山の調査をすることになる
水深2000mぐらいのところにカメラ、ロボットを降ろして、調査する
海水が岩の割れ目をつたわって熱水になって出てくる 温度は300数十度 水圧が凄いので300度を超えても沸騰しない
見たことのない生物がいっぱいいる そこはオアシスになっている
チューブワーム 筒の中にミミズのような生物がいる 1m長さ 太さ2~3cm 最大で3mぐらい
海底から立っている 何千本と白いチューブが 先端から赤いものがありそこから酸素を取りこむ
海底火山の周りに密集している
チューブワームにとってはイオウは毒ガスではなく、エネルギー源です
チューブワームは食べない、動物なんだけれども、でんぷんを自分で作ってしまうおかしな生き物
澱粉は植物が太陽の光合成に依り作るが、チューブワームは暗黒の世界で、光の代わりにイオウの成分を取りこんで、酸素と反応させると化学エネルギーが出てくる、そうすると太陽と同じことができる、そうすると植物と同じことができる
高校の時にはチューブワームは発見されていたが、私は細かく調べた
深界6500でアメリカとヨーロッパの間に巨大な海底火山がありそこの調査に参加した
イオウをエネルギー源にする微生物をサンプルとして取ってきた
培養だと思ったら、培養する薬一式を忘れてきた
海底では沸騰に似た現象があるそうすると、塩水と真水に分かれる
海底火山は塩水と真水が交互に出てくるのでそこに耐える
バクテリアを塩水と真水に交互に何回も入れてゆき、生き残ったのが一匹だけいた
これを持ち帰り、調べてみたら、そっくりな遺伝子を持った遺伝子が南極にいた
3400mの海底から取ったものと全く同じものが南極にいる
それで南極に行くしかないと思って南極に行く事になる
岩盤の至る場所から塩がある部分がある
そこに行ってサンプリングして培養したらそいつなんですね
氷の表面は雪とか、風に乗って微生物がくる
積って中にもいるので、氷自体が微生物の宝庫と言っていいほどです
今一番古いものは150万年前と言われているが、いろんな年代の微生物がタイムカプセルの様に保存されている
南極の氷に穴をあけて回収すると云う困難な作業が伴うが
150万年だったら、4000mぐらい 平均で2000mの氷がある
もし全部溶けたら70m海面が上がる 膨大な量
南極の氷の下には、液体の湖がある もともと南極には氷が無かった
もともとあった湖があり、その上に寒くなって氷が張って段々氷が広がって(3000万年前)湖の表面が凍っても、ある部分が水のまま取り残される そういった湖が400個以上あると言われている
1番大きいものはボストーク湖と言われる マイナス89度を記録したことがある処
湖の面積は琵琶湖の20倍 ロシア人たちが穴を掘っていて去年2月5日に貫通した
上に乗っていた氷の厚さは3769mだった 貫通した瞬間に水が逆流した
回収した水を分析したら、我々が全く知らないバクテリアがいた
過去1500万年間外界と隔離されていたので、独自の進化があったと思われる
南極は塩に強い微生物がいた 乾燥もしているので砂漠を目指すことになる
砂漠も同じようなバクテリアがいた
昼間50度、夜は0度 水滴になって霧になる それを利用する生き物がいる昆虫、植物、バクテリアがいる
サハラ砂漠で取ってきた塩に強いバクテリアを取ってきて、遺伝子を分析し、それに近いものをデータベースで調べたら、アメリカの地下500数十mの岩塩の地層から取れたものだった
それは2億5000万年前にできた地層だった
2億5000万年前に閉じ込められた 2億5000万年の永い眠りから目覚めさせた
フラスコの中で培養しているがそこで取った微生物と、私がサハラ砂漠で取った微生物が遺伝子的にほぼ同じ
時空を超えたつながりに、圧倒されてまだぼーっとしていて研究が進んでいない
遺伝子を調べる以上に、長い間眠っていられる秘密は何だろうとか、乾燥に強いんだったら、紫外線、X線等をあてて、様子を観ています 生命の限界を知りたい
X線に対して耐えられる もともとX線には当たらないはずなのに、耐久する能力があり、無駄な耐久力だとは思うが、どうしてそうなのか 進化の裏返しなので
地球外生命にも興味がある
①もし地球の生き物が地球の外に行ったら生きていけるのか
②地球外生命がいるとして、火星にも、いたら、彼等はどんな状況で発生し得るのか、どんな状況で生き延びられるのだろうか、を地球の生き物をモデルに考えたい
地球の中でも過酷と思われる生き物を一つずつ集めている
①地球が誕生した頃、温度、酸とか過酷な環境だったはずで、過酷な環境で我々の祖先はどのように生れたのだろうか
②もしかしたら地球の生命は宇宙から来たのではないのか
何億年も宇宙空間を旅してくる能力はどういったものが必要だったのか
宇宙飛行士の試験を受けたことがある 書類選考で400人程度 、一次筆記試験、身体のチェック
で48名の中に私も残るが、その後1週間 ペアを組んでやるが私のペアが野口さんだった
この人は受かるだろうと私は思った(受かれば直ぐにでも宇宙にいけるような準備をしていた)
火星の表面に2台の探査機が動いている
1台は10年ぐらい動いている もう一台は昨年8月に降りた(2台ともアメリカ)
今は生命はいないが、過去にいたと云う痕跡を発見してほしいと思っている
日本もいよいよ、探査に名乗りを上げるらしい2020年ぐらいに(私もそのメンバーの一員になっている)
現場に行くと新たな着想が生まれる
あの時やっておけばよかったなあと、言う後悔が一番つらいと思う
「しない後悔よりもした後悔」 した後悔だったら自分も納得ずくなので、まあいいか、と思う
悩んだらやる
空ぶりの連続ですよ 勝つまで負ければいいと、人生勝つ事は一回か二回でしょう
生命の起源の解明に自分が一部、になっていると云うことが快感ですね
次は赤道直下の氷河 5000mを越えると氷河がある 赤道直下は四季が無いので南極、北極とは全く違うので、そこにいる微生物を捕まえたいと思っている
次は成層圏、空気のサンプリングをしたことが無いので、そこには微生物がいるのではないかとおもっている