2013年12月2日月曜日

西村史(ふみ 主婦)       ・俳句に救われた息子と私

西村史(ふみ 主婦)     俳句に救われた息子と私
西村さんの息子さんは1kgに満たない未熟児として生れました
6年生になる今は身体は成長しましたが、入学当初はまだ身体は動かしずらく、何度となくいじめに遭い不登校を繰り返していました
そんな中家族の心を支えたのは息子さんが、幼稚園のころから始めた俳句で、大手新聞社の俳壇に度々入選し、著名な俳人たちから高く評価されています
俳号は息子さんが大好きだと云う小林一茶の名と、自分の名前から一字を取って、小林凜を名乗っています
今年の春には凜君の俳句やふみさんのエッセーなどをまとめた本が出版されまして、俳句関連では異例の5万部を発行するまでの反響をよびました
学校でのいじめや息子さんと俳句との出会い、親子を支えてくれたエピソード等様々な思いを語っていただきます

句集「ランドセル俳人の五・七・五」(ブックマン社) 息子の溜めてきた俳句を本にして残したかった
お便りカードがたくさん来ている
現在小学校6年生 7か月の早産 940gしかなかった 
医師からは命が助かるかどうか判らないので、3日間待ってくれと言われ集中治療室に3カ月いて退院したが、毎月の病院通いが続いた
今は私と同じ高さになった
俳句との出会いは、幼稚園のころに本を買い与えた本のなかに日本語大好きという本があって、そのなかに俳句のページがあり、俳句に出会った またNHKの番組にも影響された
自分の身の回りの事を5,7,5で表現するようになった

最初のころ
「お母さん 離れ離れは 大嫌い」   「鶯が 鳴いてメス呼ぶ ほーほけきょ」
あわてて書きとめた 次々に溢れるように言い始めた
5,7,5のリズムがぴったり来ていたようだ
幼稚園は楽しかったようだ  これこれができるようになりましたとの報告がもらえた
小学校に入学したとたんにいじめが始まった  
入学した1週間目に左顔面を強く打って腫れあがった
息子は後ろから押されたと云っていたが、担任の先生は一人でこけましたとの報告をしてきた
右腰に皮下出血をした時にも、息子は突き飛ばした子の名前をはっきりと言ったんですけれども
その子はガンとして認めなかった  

教室に入ろうとすると入れないようにされたりとか、足とか手を引っ掻いたとかが、日常的に有りました
祖母がいじめの現場を見た時があり、クラスの女の子から毎日いじめにあって泣いているいることを知らされた事がある
学校とも話はしたが、担任の先生に息子が訴えてもしてないと、否定して、相手の名前の事をいっても調べませんでした
偶然、私もいじめにあって逃げてゆく息子の姿を目撃した
職員室へ逃げて行って倒れ込んでいる息子に、担任の先生はしていない、していないと云って息子の手を引っ張り上げている光景を目撃しました
目撃されていることを知った先生は、違ってましたと平然と謝罪しました
先生とも話をしたが、学校側はうるさい親が来たと云うぐらにしか、思って取り合ってくれなかった
校長先生とも話をしたが、平行線だった  対応が信じられなかった

私も中学校の先生をやっていますが、その学校の対応は信じられなかった
不登校を決意した時期もあった  2年生の時、足を掴まれコンクリートに倒れ込んだり、身の危険を感じて秋から登校しないようにしました
5年生の時に上級生が階段で突き飛ばす事が4回あったが、上級生の担任に話すと証拠がないと取り合ってもらえなかった
息子は学校を止めると云いだした  学校には行かせないようにした 5年生の6月の事
休んでいる間は勉強しながら俳句をずーっと続けていました
自分の好きなことに没頭すると云う事が出来て、その中の一つが俳句です

学校を休むと云う事が気持ちの上では、大きなマイナスになるのではと言う心配があったが、自分の好きな事が出来て、生き生きしていました
俳句は家族で他の人間では作ったことがなかった  
新聞に小学校の3年の時に入選して、書店に行って俳句の入門書を購入して、息子と一緒に俳句の基本を学び始めました(季語とかなかったり、でたらめだったので)
NHKの通信講座にも入って、添削をしてもらった    毎回頂いて勉強しています
散歩しながら花、虫、空の雲、夕日、目に映る自然を読んだ句が多い
大手新聞社の俳壇で多く入選するようになる  最初が小学校3年生の時  12月
入選の知らせを私の母から受けて涙が止まらなかった
学校にも俳句を見せたが、俳句だけでは食べていけませんと、当時の学校長にあざわられて、私の代わりに俳句を持って行った母が、泣きながら学校から帰ってきたことを母から聞いた

「紅葉で 神が染めたる 天地かな」 「ブーメラン 帰らず蝶と なりにけり」
「万華鏡 小部屋にあがる 花火かな」

撰者の評価  NHKでの評価はみずみずしい と言うようなことが目に付く
大人の感じ方と違う感じ方をしているように感じる
小林一茶が大好きです 特に句の中では 「やせ蛙  負けるな一茶 これにあり」
「われときて 遊べやおやの ない雀」 など

いろんな動植物を観察する力、そこから心に受ける感受性、それを言葉にする表現力
観察力、感受性はこうして身につけたと云う事は無かった
ただ虫を捕まえてきてはじーっと観察していたりは随分やっていた
ファーブルというあだ名を付けた事がある
私が感じるのとは違うドキッとするような発想をすることが多かったので、俳句を作る様に誘った
ザクロの実が割れているのを見て 「実ザクロの 音たてて割れ 深呼吸」
表現力については読書の影響が強いと思います
字をおぼえるようになってからは、あらゆる本を読んでいました

本になったきっかけ 母が新聞で有る文章に感銘して、先生にお便りを出して、それかきっかけで便りのやり取りをするようになって、息子の俳句の事を伝えたら、絶賛してくれて、出版社を紹介して下さるようになった
凜の俳句を評価してくださった長谷川櫂先生、金子兜太先生
入選したことが励みになってその後も俳句を作っていくことができた
「小くうまれ 大きく育て 雲の峰」 という句を先生からいただきました
学校でも応援してくれる先生がいて、6年生になっても赤坂先生に受け持ってもらっています
英会話の先生 ショーン・ハート先生にも応援してもらっている(私は11年になる)
息子も一緒に行くようになって、先生からお話などを聞かしてもらっている

日本ではうまく挨拶できない子であったりすると、「すみません」と言ってしまうが
アメリカでは家の子は、こういうところがあるので理解してくださいと理解を求める、そして周りの人がその子を理解しようとする、理解することは大事なこと
息子の興味が俳句だったので、家族が一緒に俳句にどっぷり浸ってきた
息子と一緒に観察する事で私たちも一緒に癒されてきたと思う
最近の句
「柿赤葉 自ら光り エメラルド」 「ベレー帽 かぶりどんぐり 芸術家」
「冬のバラ たちむかうこと 恐れずに」

最近は自分の思いの内面を表現するようになってきたと感じる
「しじみ蝶 われの心の 中で舞え」
本を読んでいただいた方たちより、お便りを読ませていただいて、息子も前に進んでゆく励みになってます