井上たかひこ (水中考古学者) 歴史を開く水中考古学
井上さんは昭和18年生れ サラリーマン生活を送った後、43歳で脱サラ アメリカに渡って
水中考古学を学びました
学位を得た後、世界各地で沈没船や、海底都市の調査に係わってきました
水中考古学は嵐や地震などで海や湖に沈んだ遺跡を古文書や言い伝えなどを元に探り当て、
歴史を裏付けたり、謎を解明したりする考古学の一分野です
これまで地中海をはじめとする 海底で多くの古代の遺跡 遺物が発見されて話題になりましたが
日本でも一昨年、長崎県沖で13世紀のモンゴル軍の沈没船が見つかり
元寇という歴史的事件の解明に役立つものと脚光を浴びました
水中考古学の可能性は大きく広がりつつあります
海底を探る方法は空気を詰めたタンクを背負ってのスキューバダイビングが 中心ですが
科学技術の発達で音波探知機や水中ロボットを使うことも多くなり今後の発掘への期待が
高まっています
平成23年にはユネスコの水中遺産保護条約が発効しました
その影響を受けて 水中の文化遺産と其れを探る水中考古学にも日が当たり始めています
海に潜ったときにはわくわくしながら発掘している 場合によっては途轍もない財宝に巡り合うのではないかと思ったりして11月ぐらいまでは潜っている
春先に調査の準備 夏に発掘調査 秋から春にかけてその資料の分析、報告書の作成をやっている
水中考古学は自分自身が潜らなくてはいけないので、地中海では50m位を毎日潜っていました
プランクトンが少ないせいか薄明るい(日本では暗い)
海底が見えるのが良いが海底が見えないのは怖い 手探りの状態は怖い
千葉県の勝浦沖にアメリカのハーマン号(黒船に近い船)が沈んでいて、それを10何年か調査している
明治2年たまたましけで沈んでしまったが
その船は函館に籠城していた榎本武陽(旧幕府軍) と戦う為の援軍船(熊本藩がチャーターした船
熊本藩兵350名 米国乗組員80名が乗船)が横浜港を出発して函館に向かった
処が 勝浦沖でしけに有って沈んでしまって 相当の犠牲になった
全長が71m 当時の日本に来ていた船で最大級 海中で調べると蒸気機関のエンジン
鉄の棒が一直線に並んでいる 全体像はまだ解らない
船は甲板、マスト等は上の方の部分は流されて無くなって フナクイムシ(ミミズの大型の様な形)が
いるので木を食べてしまう そうすると上の方は残らない
したの方は永い間に土砂が溜まってしまうので、それに隠れてしまえば酸素が遮断されるので
安全に守られる
魅力 宝探し的な事(何が出て来るか解らない) 無人島にキャンプ (自給自足 電気が無い
小型のジェネレーターを持ち込む)満天の星の下で眠れる
長崎県の元寇の船 の調査 (元軍が使った石の玉) の謎解きの楽しさ
地中海だけで難破船が10万隻が眠っている 世界中では 20~30万隻に成るのではないか
日本では200隻は越えている(解っているのが216隻)
調査が出来ているのは20隻位 ほとんどは未調査に成っている
陸上の遺跡と比べるとかなり少ない
1960年から始まったばっかり、国、行政の認識の問題がある
陸上と同じような感覚に成ってきたが、それまでは異端児的に思われていた
表面からは見えない(土砂が覆ってしまっている) 地中海のもっとも世界的に有名な遺跡
アレクサンドリアのクレオパトラの海中宮殿
これもあまり深くない 水の濁り、表面から見えない 軍事的なことも有って(立ち入り禁止)
実際は10~15mくらい
潜るための潜水技術、危険と裏腹 そういった条件の為に発見が難しい
瀬戸物 天日で乾かしてしまうと壊れてしまう事がある 木片も水を含んで豆腐のようにぶくぶく
している 脱塩して水槽に付けるのは良いが乾燥させないといけない
下手に乾燥させると歪んだり 縮んだり、曲がったり、元の復元が難しい
場合によっては壊れてしまう
防ぐために化学薬品でコーティングして ワックスをかけて、元の状態に出来るだけ近くなるように、
保存処理する
そうしないと船の復元はできなくなってしまう
陸上では発見されないようなものを水中では発見されることがある
沈没船 木造なので陸上では遺跡として残ることは難しい 積み荷から解ることがいろいろある
歴史的に価値の有るものがある
地中海のウルブルン難破船の場合は 紀元前1350年ぐらい 古代青銅器時代
今から3400~500年前 ちゃんとした骨組の有る船
象牙 カバの歯 工芸品用 キプロスで生産された銅の板 それにスズを混ぜて、武器とか
農器具だとかを作っていた 1枚27kgが 350枚 約10トン
キプロスは銅の産地 バルト海地方しか取れない琥珀とか リッチな積み荷が積まれていた
今から3500年前に東地中海一帯を交易する船が走っていた、と言う事が非常な驚き
ギリシャ人が地中海一帯を支配していた 交易も支配していたろうと
言う事が定説だったが、 アメリカのジョージ・バス博士が調査したプロジェクト
ギリシャの船と言うよりもセニキュア人だったろうとの説に傾いてきている
西アジア考古学者も水中考古学に注目しだしている
陸上では発見できないものが水中考古学で発見されている
歴史の解明 航海史の解明は水中考古学無くして出来ないだろうと言われている
定説を覆すことがあちこちで見られる
それまでヨットを乗っていた 何不自由なく暮らしていた 何かが足りなかった
自分の心をみつめた時に 自分の人生で求めているものは
サラリーマンに成ることだったのか そうではないだろうと
自分の好きな事を好きなだけやることが良いのではないかと思った
水中考古学に出会って惹かれて行った(43歳) アメリカに留学した(ジョージ・バス博士のもと)
英語が出来ないことが辛かった
大学院の授業を取り始めたが落第点を取って烈火のごとくに怒られた
最後はレポートを出したら、認められた
アメリカは勉強しないと駄目 入学は楽だが、卒業するのが厳しい
カリブ海のポートロイヤルという海底都市があり、1692年の大地震で港町 海賊の本拠だった
(ヘンリー・モーガンがいた)水深5m 銀の海中時計が発見
文字盤は消えて無くなっていたが、レントゲン検査をしたら 時計の針の痕跡が見つかった
11時52分を指していた 大地震が襲った時刻だった
日本では元寇船に何回か加わった 話題性規模の大きさ 超一級の遺跡
「てつはう」(鉄砲) 蒙古襲来言葉に出て来る 鉄砲(炸裂弾) 炸裂弾がバーンと飛んできて馬が
跳ね上がっている 鎌倉武士が必死になって馬を操縦している
絵が出てくるが、そこに出て来るのが「てつはう」(鉄砲)ですね
元軍が撤退する時に目くらましてきなものだろうと言われてきたが、最近の調査で
その中に鉄屑が一杯詰まっている事が判った
非常に殺傷能力の高い兵器であることが解ってきた
電子工学が日新月歩で進歩している 水中ロボットを活用しているケースが増えてきている
そうすると人間が潜れないような水深に調査が伸びてきている 新しい発見が期待される
日本ではまだまだ課題 これに、行政が支援する体制が整っていない
韓国、中国は国家が支援して体制が確立している
元寇船については国から金が出るが、以外は資金不足に成っている
もっと貢献できるのにと言うもどかしさはある 水中考古学に対する大學が少ない
環境がまだ整っていない
マイケル・ハッチャー氏が(イギリス人がオーストラリアに帰化) シンガポール沖に中国の沈没船を発見した
貿易陶磁器 無垢の物をオークションにかけて、何千万ドルを儲けた
これではいかんと中国は危機感を感じて、中国は国家がバックアップしている
韓国も 1970年代に元の時代の交易船が発見されて 中国、高麗の青磁 等が見つかり、
そのふねも引き上げて 博物館に展示してある
韓国の海軍が支援して潜ってやった 文化財を国威を掛けて調査するようになった
(日本は寂しい状態)
タイタニック ユネスコの世界文化遺産に批准された(100年経つと文化遺産に成る 商業行為は
出来なくなる)
好きなことをやれるのが人間にとって幸せかなあと思います
職業を選ぶ時、遠回りしないで 有利、不利で選ぶのではなく 好きかどうかで選んだら、人生に悔いはないのではないかなと思います
飽きが来ないし、後悔することもない 精神的にも安定してすることが出来る
「斜員」に成れ 滅私奉公を捨ててしまって斜めに構えて、世の中を見る習慣を付けると
良いのではないかと思う
そうすると少し違った世界が見えて来る 自分流に生きる
水中考古学を広めるための本を出版したいと現在、執筆中