2013年2月11日月曜日

阿刀田高(作家)         ・本の現場へふたたび 2

阿刀田高(作家)               本の現場へふたたび 2
創作への取り組み  短編小説への構想 アイディアがあり、それをどう生かすか  
日本では自分の生活を基盤にして作って行く小説が多いが
小説を作るにふさわしいアイディアを考えることから私の場合は始める  
その場合のアイディアの
発想はどうかと言うと本当に自分でもよくわからない
年中何か小説になるアイディアはないかと想像したり、考えている  
アイディアはいろんな形でみつかる
なんか変だなあと思う事から発展する場合が多くある 常に考えている  
浮かんだ時にちょっとしたことでも記録をしておく

どんな時でも思いついたときに何であろうと記録する 
メモに書いても10%位しか役に立たない しかしこまめに書いてゆくことが大事
こんなあら筋ではいって行ったら小説になるなと思ったら 5分で出来る 内容の微調整含めて
書きだす前に出来上がっている
主人公は自分とは違う人です  短編小説は必要最小限度の処で勝負したい  
自分の読者はどういうタイプの人だろうと考えて、編集担当者と打ち合わせて、文章を入れるか
どうかを決める事がある

星新一は1000回書いて止めたが、私はどうなるか分からない  
2007年から2011年まで日本ペンクラブ会長になる   
15代目の会長 1935年に日本ペンクラブが誕生 表現の自由を守ってゆこうと誕生した
(最初その10年前に国際ペンクラブが誕生している)  持ち回りで世界大会をやっている  
日本では川端康成の時に第一回目  井上靖の時に第二回目をやっている
私の時に第三回目の国際大会を行った  
80数カ国から200人を越える文筆家、ジャーナリストが集まった大会だった
日本ペンクラブの会員は2000人 総会をやると100人ぐらいしか集まらない 
ものを言いたげな人だけ集まる
 
2000人がどのあたりを考えているのだろうと探りながら運営している
電子ブックの登場 否応なしにIT化が進むことは間違いないと思います  
著作権がどう確保されてゆくかが 常に大事な要素がある
電子的な手段がどこまで発達するかは判らないが、広く、速く、安くというニーズには絶対勝っている
活字文化 紙に印刷する文化が知的な要求を満たしてきた部分がある  
良い著作と言うものは その著作者の大変な努力によってなっていると言う事を忘れてはいけない物凄い努力で出来るものであって、経済的な栄誉、社会的な栄誉,なんかの意味での評価が有って 初めて人間はそれだけの努力が出来る  大雑把にいえばそう考えてもいい  
だけれどもITとは著作者をそこまで優遇しない傾向がある
極めて民主的であって、いろんな人がボンボン声を上げて自分の物を発表していい  
後は多数決で選ばれるような状況で、そこには編集者が介入しないし著作者が必死の努力をしたかどうかは、関係ないと言う様な処で評価が決まって来る傾向がある   
広く、速く、安く 著作物を大衆の物にすることは絶対いいのだが、この方法では本当に良いものが出て来るかどうかは、非常に危ういと思っている

未来に対しては非常に心配です  
情報もいろんな形で情報が出ているけれども、そういうもので得た情報だけではものをやってゆくわけにはいかない
必ず得た情報の裏を取らなかったら、何か公的なことをやろうとしたらそれでは駄目 
百科事典は必ずしも100%信頼できるかどうかは解らないが、品質は9割がたは正しいものが
ずーっと出ている
IT関係の情報は実に危うくて、それでやってきましたよと言うことはとんでもないことになる
具体的な取材が無くても流れて来るものを纏めるだけで記事が出来る  
しかし本当のジャーナリズムはたった一つの事を調べるのに命を掛けて取って来ると言う作業がある

命を掛けてきた情報も 何となく得た情報を纏めて書いたものを 結構似たように見えてしまうのであったら誰がそんなことに命を掛けてまでやるかと言う、ジャーナリズムの生命に係わって来る
一番重要な問題だと思うが この頃 ちょっと命に係わっていないなと言う記事が見られるようになってきている  システムがその様になってきている  
IT化の危険は常にその辺にはあると思う
質の確保は 矢張り 人なんだなあと思います   
情報を得ると言う事では図書館は2番手になってきている 
世界の情報を瞬時に集める様なコンピューターをくしする機関の方がずっと凄くて、図書館は決してその様には成っていない処が図書館には人がいる 

ゆったりしているけれども自分にとっては必要な情報を求める人はたくさんいるので、自分は何を求めたいのか解らないと言う様な時には 人によって提供できるということは必要です
若い頃に 中勘助 「銀の匙」  ある時代の日本文の美しさを見事に反映している  
「ひっきょう」「つきづきしい」(ふさわしい 似つかわし) 「にび色」(灰色とも言えないはっきりしない色) 
「源氏物語を知っていますか」  古典の知識 原典を読むのが一番いいが 小説家として立ち
向かってみたいなと思っていたが 2年前から始める
自分なりの古典に対するひとつの見方が無いといけないと思った

紫式部 どうしてあのような才能を持ったか判らない  
19世紀から20世紀にかけて小説の黄金時代と言われた完成化された技を紫式部は本当に駆使している
誰かの影響を受けたということはない 宇宙人ではないかとさえ思う
「源氏物語」は世界に誇れる文化だと思う 
今後どれだけ書けるか判らないが短編小説を何か加えて、珠玉の短編小説を書いてみたい
井原西鶴 エンターテーメントとして一番的確に具現した作家だと思う 大阪の血を持っていないと
解らないだろうなと思います