2012年11月2日金曜日

秋山好輝(フルート製作者58歳)   ・銀食器でフルートを作る

秋山好輝(フルート製作者58歳)       銀食器でフルートを作る  
19世紀の銀食器を使い、フルートを製作している  
1954年徳島県の生れ  高校時代はフォルンを吹き、将来は音楽家を目指しましたが、大学進学に当り演奏者ではなく、楽器製作の道を選びました  
生来、器用な秋山さんは上京してフルート製作会社の門をたたきました  
コツコツ仕事に取り組む秋山さんは若くして要職に抜擢される事になりました  
当時製作したフルートには秋山と刻印されるまでになりました 
さらによい響きを求めて独立して、フルートの名器と言われる、フランスのルイロットに係わることになります 
ルイロットと言えば、バイオリンに例えればストラディバリウスに相当する名器です   
その製作は19世紀のヨーロッパの銀食器を使い、かなずちで叩いて管を作るなど、手作りが基本です  

1870年代のフランスの銀食器を溶かして、板にして手で巻いたのがこの楽器です   
昔の材料の良さ  不純物が含まれていて、再現するのが難しい
1855年~ルイロットの会社が始まっている  ミネルバと言うマークが打ってある 
年代が違うとマークが少し違うので選んで使っている
ルイロットの使っていた出来るだけ同じ条件で作るように、こだわっている  
管を作る時点でもう楽器の音はすでにほぼ決まっていると思っている
最近はパイプを専門に作る会社が有るんで、パイプをつくる工程は殆どの会社はやっていない 規制品の管を買えば部品を載せるだけでいいのでフルートを、作るのは意外と簡単なんです 
ただ音を追求してゆくと管に行きついたので、気が付いた 
自分で作るしかないと思った  
作る人は良い楽器を作りたい 
経営者は良い商売をしたいと思っているので、今に至っている

97年に工房を立ち上げた時は家賃を払えない状況が結構続いた  
当時は眠れない日々が続いた  或る意味ふっきれた 
お金を儲けるのではなく、とりあえず好きな笛を作っていければいいと、なんとなく暮らせればいいと変わってきたので 良いと思うようになった  
紙が切れなくなった挟みを使って板を切る  それを丸める 
継ぎ目を見えないように擦って仕上げる  簡単ではあるが誰にも出来ないと思う  
独立をして普通の楽器を作っていたのでは駄目だと思っていた  
有る時不思議な手紙が来て、ルイロットと同じような楽器を作るには、巻き管で作ることが
絶対条件のように書いてあった   
ルイロットの後継者に成ってほしい様な意向が有ったのではないかと思った
   
2000年5月20日にジャン=ピエール・ランパルさんが、亡くなりまして、その1ヵ月位に一通の封筒が届いた  差出人、住所が書いてなかった  
日本人ですが、フランスのルイロットに勤めていたていた人らしい  
手紙が背中を押してくれたようだ 
フランスのルイロットは職人さんがいなくなって途絶えてしまった 
繋がらなくてはいけないという危機感が有った
日本人の器用さと根気強さが期待されたのではないか  
貴方が伝承するにふさわしいのでどうでしょうかという内容でした
フランスの楽器を目標にしていたので、11月1日にパリでフルートのコンベンションがあるので、手紙の主を調べようとしている

ジャンピエール・ランパルさんの遺言かなあと思っている  
フルートの世界的な演奏家 唯一金の巻き管は彼が持っている
音色 響きが豊か 色彩感がある 演奏家が想いを込めればいろんな音に変化する  
演奏家の想いを楽器に伝えやすい
音量指向に行っている現在、逆の方向のもの  優しい音がする    
現在シームレスなので工業生産されている
現在、私のは内側にひずみを付けている  
それによって多彩な音が出るようになっていると思う
以前には、作ってみたがルイロットを使っている演奏者に何かが違うといつも言われ、考えたがもう材料しかないのかなと思った

たまたま目黒の美術館に行って銀食器の展示会をやっていて、これだと思った 
調達 ロンドンの友達が直ぐに見つけてくれた
定期的に調達している   無くなる可能性がある  
国内で似たような材料を作っているが、矢張り不純物が違うので同じようには行かないのが現状 たまたま入れた会社がフルートの会社だった  今は良かったと思う 
会社で若くして研究部長になった  
演奏者の声を聞けば聞くほど会社では無理だと思った  
生産性と良い音を出すこととは相反する事であることが判った  
周りの人に助けられて、今が有ると思う  応援してくれている人がたくさんいた
機械をくれた人 部品を作ってくれてお金は後でいいよとか そういう人のお陰で出来た 
家賃はあとでいいよとか 力になってくれた

一緒に夢を見て下さいと言っていた  
ルイロットを越えたんじゃないかと演奏者から言われてきた  
ルイロットは古いので元気が無いようだ 新しいとエネルギーがある 
内側にひずみを付けるのは独特なもの フランスに行くがどういう評価してくれるのか楽しみ
プロの演奏者は使いたがらない  難しい コンディションに左右される楽器  
プロは毎日悪条件の中で演奏しなくてはいけないという、そこが一番大きな問題
それと価格が高い 
今使われいる楽器と違った方向にむく可能性があるので奏法まで見直さなければいけない可能性があるので決断が必要だと思う

楽に吹ける可能性  今の状態を残して楽に吹けるようにするには難しい問題がある   
購入はアマチュアの人が多い 最後の一本と思って購入する人もいる
技術の後継者は?→人を探して という問題ではない  
本気でフルートを作る人が出てくれるかどうかですね
力仕事だし、汚れる仕事だし、危ない仕事だし、お金に成らない可能性があるし(10年ぐらい) 今後10年ぐらいの内に一人ぐらい出てくれればいいなあとは思っているが
教える方も余裕が無いと駄目なので、ゆとりを持って仕事が出来るような状態になったときに、人を育てるだけの余裕が出来るかも知れない
今は笛を作っていて、楽しい時期ですね  段々作る数が少なくなってきている  
年に10本作りたいと思っているが、5~6本に成っている

更に良い音を創り出したい  そのうちに1年に一本に成ってしまうかも知れない  
もっと楽な選択肢があったのかも知れないが、本物を作りたいという想いは何時も有った  
権限は無い、経営者ではないと本当に思った
経営する方の逆の部分も経験した   どれだけ真剣に考えているか、しかないと思う  
進化させなければいけない 
常に一歩前に、最高のフルートとは、それは難しい  
作り手が思っている理想の楽器と 演奏者の理想の楽器は一致しないものだと思う  
100%満足した楽器は演奏家にとっては、つまらない楽器になると思う  
95%満足して5%は演奏家が何かを考えなければいけない  

そういう楽器が一番良い楽器だと思う   
お客さんの顔を見てその人に合わせて楽器を作っているが、大量生産するメーカーは先ず楽器を作って、それを選んで、買う人が選んで買えばいいと言う事で全く違う  
しばらく吹いて吹き手も楽器になれて、もうちょっと何とかという事で微調整することも有る  
顔を見ない人の楽器は作らない  工房には来て貰うのが基本的なスタンス    
優しい音 柔らかい音だと言われる