2017年7月26日水曜日

大場信義(全国ホタル研究会名誉会長)・ホタルのヒミツ(1)

大場信義(全国ホタル研究会名誉会長)・ホタルのヒミツ(1)
72歳、神奈川県鎌倉市出身、東京理科大学を卒業後、企業の研究所に勤務してから横須賀市の自然人文博物館の学芸員として長年螢研究に取り組みました。
全国各地で蛍の調査を行って新種の発見や不思議な生態の解明をしたほか、海外に出向いて日本ののルーツを探る調査もしてきました。
一方で蛍の生息環境を守る取り組みをしている人たちにさまざまなアドバイスを行っています。

蛍研究45年になりますが、昆虫が好きでした。
職業についたときに、命に触れ合うと云う事が最低限譲れないところでした。
バクテリア等の微生物とか、酵素とか分子生物学的な背景の方の企業の研究に入って、やっていました。
研究が一段落して、昆虫の研究をしたいと思っていた矢先に発光反応に上司が眼を付けて、横須賀市に博物館があるが、そこの館長さんが世界的な発光生物の研究者で羽根田弥太先生でした。
その先生にお会いしてから、昆虫と発光生物で蛍ということになりました。
学校の先生も一時経験しました。
企業の研究でも学校でも同質でそれぞれドキドキわくわくしました。
蛍研究は独自でやって来ました。
面白い、楽しい、不思議、何故だろうと云う思いに支えられてきました。
同じ源氏蛍でも環境が違うと、全然違う挙動を示すとか色いろありました。
蛍は物を言わない生き物で、環境の問題とか最終的なジャッジは蛍がすべきだと思っていて、私自身が蛍から教わりました。(蛍のメッセンジャーだと思っています)

蛍が光っているのは雄雌のコミュニケーションだと思っていて、他に身を防衛する、相手をびっくりさせるために光る。
蛍はにおいを出します、捕食者が食べた時に苦かったりすると、学習して光っているものは苦いと云うことで、止めようと云うような構図が出来ると思います。
食べられる頻度が下がって来る。
オスはメスを見つけなければいけないので、卵を産むためにはオスと交尾しないといけない。
自分がオス、メスであることを判らせるために光るが、オスとメスで光り方が違う。
源氏蛍がこれがオスだとかメスだとか、判別が非常に難しい。
平家蛍は明らかにオスとメスでの光り方が違う。
源氏蛍はオスはメスを探すときに一斉に飛び出して、集団で同時についたり消えたりします。
メスは下の方でぼーっと光ります。
そういう行動によってたがいに識別します。
種類によって固有なコミュニケーションのやり方をしています。
2000種類世界にいますがそれぞれ違います、中には光らないホタルもいます。

新種の蛍、30年前西表蛍が見つかりました。
冬に飛ぶ蛍がいたが、それを雨の中を調査していたが、或る時一日中降る中に雨がぱっと15分間止んだ時があり、見たことのない様な幼虫のようなお尻を上げて光る蛍がいたんです。
どう見ても幼虫に見えたが、足の形態、口の様子などを見ると成虫の形質をしていた。
それはメスでオスが違う処にいるのではないかと思って探し求めたが、メスしか見つからなかった。
その後も行ったがメスしか見つからなかった。
オスは光からないと云う事がその後に判った。
オスの活動する時間帯は冬に出てくる。(12月~1月)
メスがオスと会うために光っていた。
オスが飛んでいてまっしぐらに飛んで行って交尾をして、交尾が終わると直ぐにメスは無駄な光を放たなくなる。
パタパタと消えてしまって、あとは何も無くなってしまって、それがオスを探すのが困難だという背景が判りました。

メスは産卵するが、土に潜って卵を産む。(陸生の蛍)
日本には源氏蛍、平家蛍、久米島蛍の3種が水生の蛍で、世界では8種しかいない。
日本では陸生の蛍が約50種いるが、そのひとつが西表蛍です。
里地の石垣など、学校の校庭などにいます。
世界的にみても貴重な蛍で、石垣、西表、浜島の3島にいますが、世界に類をみないほど生息密度が高い。
メスの体長は1cmぐらいで卵を産む時に身体を丸めこみ、30個ぐらいを産卵して抱きかかえる。
卵を産んでリング上に成った時に光る位置をお尻から変えてしまう。
卵を守るために身体のふしぶしに3点づつ発光器があり、丸く光って見える。
身体が丸くなっているので、相手を脅かすために目玉のような模様となっている。
オスもメスも強烈なにおいを出すので、鳥などは食べたくないと思う。
光る為の2つの回答を私に与えてくれた(コミュニケーションと防衛)

幼虫型蛍はいったいどこからやってきたんだろうと思いました。
台湾を調査すると似たような蛍がみつかりました。
大陸を調査すると、マレー半島、シンガポールには似たようなほしむし?(星虫?)と云うのがいることが判り、タイなどにも西表蛍そっくりの蛍が見つかりました。
中国大陸雲南省2000mぐらいのところで共同研究者と10年間調査を続けましたが、中国大陸には色んな種類の蛍が見つかり、新種も見つかりました。
南米ブラジルなどに鉄道虫がいて頭から赤い光を出して、メス成虫は幼虫型で防衛シグナルも全く同じです。
蛍が大陸間を移動できるわけがなく、大陸が繋がっていた頃でないと説明がつかない、その頃に祖先が出てきて、大陸移動とともにそれぞれの大陸で固有の進化を遂げて、今現存している、歴史的背景が、気が遠くなる時間を掛けて成立していった。
それを西表島の西表蛍が示してくれた。

羽根田先生が戦前、パプアニューギニア、ニューブリテン、ラバウルなどで木に蛍の大群が光っているのを見ました。(一晩中光っているという話だった)
木の伐採が進んで木がきわめて少なくなってきた。
木で蛍がどうして大群で光っているのだろうという疑問があった。
密林の中のオスとメスの出会いの場所だった。
集まれる数が木のサイズによって違う。
幼虫は陸生の貝を食べるので、餌不足の問題もあり、それを回避するために、卵を産むときに分散する。
餌問題で木のサイズをどうやって判断しているのかも判らない、生命の不思議、命の営みの不思議です。

キリギリスの身体が手足は普通の緑色、身体は黒、頭は赤で蛍のようなキリギリスが蛍の木の周りにいます、擬態といいますが。
蛍に似た恰好をしてなんらかの仕組みで外敵から身を守ってると云うことだと思います。
そのような昆虫が1本の木に10数種類います。
甲虫、キリギリス、蛾がいたりしていて本当に吃驚で、それが現実に起こっている訳ですが、それは謎です。
森林伐採が進んでいて、どんどん消えてしまうので、このようなミステリーは全部消えてしまい、取り返しができないので、二度と省みることが出来ない状況で、余りに大きな喪失感がぼくにはあってならない、これは消してはいけない。
しかし大変難しい。
せめて多くの人に伝え、蛍は光っていることによって伝えているんだと云う風に感じています。