松本隆(作詞家) ・【謎解き うたことば】
日本語学者 金田一秀穂
言葉の魔術師といわれている松本さんの作った歌は2100を越えて400組近くのアーティストに歌詞を書いています。
松本隆さんに日本語学者 金田一秀穂が聞きます。
「木綿のハンカチーフ」
普遍 木綿は一番安いもの 木綿は死語に近い、死語は好きです。
スニーカーではなくて「ズック」が好きです。
「ビー玉」 京都の一流料亭で食事した時に、いとさん(女将さん)が最後に出てきて、あらかじめ用意する間がなかったと思うが、ポケットからビー玉出したんです、嬉しかった。(「硝子の少年」がヒットした半年後ぐらい)
「木綿のハンカチーフ」
恋人よ ぼくは旅立つ
東へと向かう 列車で
はなやいだ街で 君への贈りもの
探す 探すつもりだ
いいえ あなた 私は
欲しいものは ないのよ
ただ都会の絵の具に
染まらないで 帰って
染まらないで 帰って
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ハンカチーフも死語です。
恋人よ という呼びかけも死語に近いかもしれない。
「セクシャルバイオレットナンバー1 」・・・
外来語と日本語の組み合わせが多い、反対語を組み合わせるのも多い。
「しあわせ未満」、「ふられてBANZAI」・・・
ジャンルを超えています、派閥にも属してもいないし、作詞家協会にも入っていません。
詩を作ってから曲を作って行ったり、逆もあります。
順番的には詩が先にあるとは思いますが、抑揚がついて、メロディーになって、それに膨らませるとサウンドになって、日本の場合真逆になっていて、それが音楽が衰退している一つの原因になっていると思います。
漠然と何となくこんな形かなあと最初浮かびます。
自分の日常のなかで心は動いていて、詩を書くようなポジションの心の位置があって、そこに持っていくのが大変です。
もやもやとしたものが詩に成って行くと思います。
タイトルが思い付いて半年後ぐらいに詩が出来ると云うようなこともあります。
長い詩を2時間ぐらいで作って、吉田拓郎に渡してたら、3分ぐらいで作ってしまったものもあります。
「はいからはくち」
ノスタルジック つげ義春さんの絵の世界に似ている気がします。
「・・・です」「・・・ます」 は話し言葉と書き言葉の合間をねらいたいと思いました。
「・・・だぜ」石原裕次郎の言葉に良く出てくる、ちょっと不良っぽい湘南言葉。
今の日本の言葉は荒っぽい、いい加減さがあるが、言葉は大体いい加減で、地方によっても時代によっても違う。
曖昧模糊としたまんま流れて、行ってその時代の日本語になって行く、それはしょうがない。
最近僕の詩を朗読するのが流行っていて、「初恋」をすーちゃん(田中好子)が朗読してくれたが、物凄いインパクトだった。
朗読すると凄く新鮮で、音楽を取っ払っても歌詞は成立すると思いました。
中原中也にささげる詩 「砂時計」 松本隆作詞 つんく作曲
海鳴りのもっと深くで
人魚たち 泣いてるみたい
無理やりに鋏で切った
愛だから逆に縺れる
運命を遮りたくて
出した手がもう折れそうで
ほら雨が雪になりそう
泣き言は喉で封じた
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