2013年10月7日月曜日

蟻塚亮二(精神科院長)      ・戦争が与えた深い心の傷について(戦争平和インタビュー)

蟻塚亮二(精神科院長)   戦争が与えた深い心の傷について(戦争平和インタビュー)
太平洋戦争末期、沖縄では激しい地上戦が行われました
犠牲者は20万人を越え、沖縄県民の4人に一人は犠牲になったといわれます
其沖縄で、去年、沖縄戦を体験した高齢者を対象に沖縄戦があたえた心に影響について大規模な調査が行われました
調査を行った一人、66歳の精神科医の蟻塚良治さんに、戦争が沖縄の高齢者に与えた深い心の傷について、お聞きします

各市町村の老人のデイケアに集まる人を対象に、戦争体験を持った人から話を聞いた
75~89歳 431人 統計学的にデータに欠損がないのが、401人
過去の戦争の時の記憶が消えた記憶 ほっとな記憶がトラウマです
トータルすると39%の人がトラウマのハイリスク  神戸の震災は22%と言われる(5年後の調査)
68年経って約40%は信じがたいこと(心の傷の深さ) PTSD
老人性うつ病と一括して言われるが、聞いて見ると、トラウマを抱えていて、トラウマが暴れて眠れなくて眠れなくて鬱になるとか、不眠症、身体が痛いとか、頭が苦しくて、幻聴が聞こえるとか、いろいろ或る

読谷村 沖縄戦で米軍が初めて沖縄にはいってきたところ  124人 調査の1/4強
一番多いのが中途覚醒型の不眠 戦時記憶がよみがえってくる(フラッシュバック)
死体のにおいがよみがえってくる
或る種の人格変化、親族が亡くなったという事をきっかけに、戦争の時の記憶がよみがえってきて、発作が起きて、眠れないとか、精神病的な幻聴 とか起きる
背中におもちゃの赤ん坊をしょっていたおばあさん 98歳 (認知症)
背中の赤ん坊は3カ月だから、ミルクをやらなければいけないので、家に帰らなければならないと、病院に来た人がいて、話を聞いたら、その人の5人いた子供が戦時中に4人亡くなってしまった  背中の赤ん坊は、きっとそのなかの一人でしょう
認知症の中にも、戦争記憶を抱えている人がいた そんな例が一杯ある

認知症は、普通物を忘れるから認知症と思われるが違う
老人性認知症の特徴は印象に残る記憶は、より先鋭化して記憶に残る
それ以外の記憶は脱落する
強烈な記憶はより先鋭化する  
一般論としても、老人のうつ病を見たら、精神療法の基本は、過去の人生の中であなたの一番辛かったことは何かと、一生懸命聞くことだと、私等は教えられている
沖縄戦の場合にそんな風にしてトラウマが、今も影響していることが、今回初めて知って吃驚した
晩発性PTSD 晩年になってから、何十年もたってから発生するPTSD
普通はトラウマがあってから、6カ月ぐらいで発症する
定年退職したとか、仕事を息子に譲るとか、親族が亡くなったとかをきっかけに老いに直面する
自分が生きていた過去を全部もう一回総括して、過去の一番つらい記憶に直面する事になるので、そこで見たくなくても、見ざるを得ない
そこでもう一回再編成しないと、老境に入っていけない

約20年前に、今回の調査の中心になった「當山富士子先生が、保健婦として地域で健康調査をやった時にあきらかにPTSDを発見、その後の追跡調査がされなかった(ごく一部の地域だった)
系統的に調べた人がいない
家庭のなかでは戦争を語るのはタブーだったので、吾々世代の精神科医もあまり見ようとしなかったのかもしれない(トラウマ二次事象かもしれない)
戦争語りべ 3日寝ないのを覚悟出来ましたと言っているので、語りながら感情が激してくると思います  
でも其れを乗り越えられた人だと思います

2010年12月に一番最初に気がついたが、 年寄りの奇妙な不眠症の人が立て続けにきた
不眠症にもいろいろあるが、来院した人たちは、どのタイプにも当てはまらない
うつの症状がない→偶然アウシュビッツから帰った人の精神状況を書いた論文を読んでいた
その精神症状と(不眠のタイプ)と来院した不眠が全く同じだった
中途確定型不眠で、うつ病傾向がとても少ない、戦争体験がある
60歳以上で不眠になったとか、親族が亡くなったとか、仕事を退いたとか、見てきたら続々見つかってきた(戦争をトラウマに持った不眠症の人)
身体化障害もある 腰、頭、足が痛いというような症状(死体を踏んだのでその思いから足が痛い等 いろいろな体験から生ずる)

杖をついて歩いてきていた人が、すたすた歩くようになった
ほっとな記憶が語れないのを、安心感を持って語るようにする
かたるには涙が出てくるような状況だが、この人だったら語ってもいいという、信頼関係を持つ事が必要
一般の整形外科に行っている人たちの中には、腰が痛い、足が痛いと云っているが、よく聞けば実は戦争トラウマになっているのが原因になっている人がいると思います
渡嘉敷島の集団自決の話を聞くチャンスがあって、話を聞いて、之は精神医学的な現象が重なっているなと、直感した
心理的な梗塞状況で起きている 
全国各地で大空襲があったが、影響があったと思われるが、それとの関係が顕在化されない

あるパンフレットに書いてあったことで、62歳の男性が、妹が最近亡くなって、沖縄戦と同じようなPTSDが出てきた
フラッシュバックしてきて眠れない  (東京大空襲との関連もある)

分離 頭の切り替えをやらないと、いけない  家庭は人間の心のベースキャンプ
ベースキャンプが血みどろになれば、極論すると、精神病状態です
精神病状態とは自分の自我をコントロールできない
そこから精神病が多発する可能性はある、理論的にはある
沖縄の病院から福島の病院の精神科医の所長として、東日本大震災で被害にあった、かた達のケアに4月から担当
日常の場が変わってしまった 福島の場合は、災害精神医学、 沖縄の場合もかなり災害精神医学に共通するものがある
沖縄戦の場合には戦争だから、人が人を殺すという尋常でない価値観がまかり通る場面だから、福島と沖縄の違う所  似ているところもある

不眠症、沖縄戦の不眠に近い 診る上で、とっても役立っている  トラウマ型不眠
余震を気にして眠れないが、治療して怖くなるほど寝むれたと言っていた人もいる
トラウマ型のPTSDがあるという事  沖縄、大空襲、大災害
社会全体が判ってあげること、そうすると言ってもいいんだという雰囲気になる