森勇一(昆虫考古学者)・虫の化石が教える環境変化
森さんは昆虫生態学、環境考古学の研究に取り組み、特に虫の化石を考古学に生かすという
昆虫考古学の分野では先駆的な研究をしておられます
森さんによれば虫の化石は多くの情報を発信しており、それを読み取れば自然環境や人間の暮らしの進化が、浮き彫りとなって現代を顧みる貴重な手がかりになるといいます
昆虫考古学 遺跡から発見された昆虫化石をもとに、過去の人々がどんな環境でどんな暮らしをしていたかを研究する学問です(研究する人は非常に少ない 世界でもほんの一握り)
虫の種類は非常に多くて種を決めるのが、大変難しい
土の中から出てくる虫を決めてゆく必要があり、どのような虫の種類、とか決めてゆく事が非常に難しい
しかし、そこから解ってくることは非常に多い
例えば虫が北海道から見つかるとする 縄文時代の気候が判らなかったりするのですが亜熱帯の昆虫が見つかったりして、縄文時代の早期に気候が暖かかったという事が判った
気候が分かったり、人々が綺麗な環境で暮らしていたか、どういう暮らし方をしていたか
判る可能性がある
遺跡の土を掘っていると意外に昆虫が出ることは判っていたが、それを調べている余裕がなかったり、調べてもどんなことが分かるかという事がなかなか読み取れないので今まで捨て置かれていた
一番多く見つけられるのが、縄文時代から江戸時代まで、日本で遺跡を掘っている時代であれば大体出ている 日本の場合は土が少し酸性なので、昆虫の羽根、胸などは酸性に強い
日本の土は昆虫の化石に取って相性がいい
完全な形では見つかることは無く(120ぐらいの破片に分離してしまう)、足、羽根、胸のかけら一個とかの状態で見つかる 昆虫とは判るが、どんな種なのか分からないと、昆虫考古学の一番やりたいところまでは進んでいかない
昆虫を捕まえて、昆虫をばらして、一個一個 貼り付けて、どの昆虫はどういう形をしているかという研究を5年ぐらいやった 顕微鏡の世界
良く見ると種によって様子が違う そこから判ってくるという事が分かる
とにかく種が多いので大変 現在名前が付いているものだけでも90万~100万種 実際には3000万種とか5000万種とも言われている
種は、地球では現状65%が昆虫だけで占めている(事によると90%以上かも)
昆虫の惑星と言ってもいい状況
判る種類は? 糞虫、糞だけのえさ ある種は犬の、ある種は鹿 という風に特殊なので糞虫は一番判りやすい 200種は決められる 小金虫でも300種
30年ぐらい前 高等学校の理科の先生をしていて、古墳時代の土を掘っていたらビニールの破片のようなものが出てきた 非常に美しくて (2mmぐらいの破片) 図鑑をみて、ゲンゴロウかなと思って見てみたらそうだった それがきっかけになった
現在ではゲンゴロウも非常に少なくなってしまった
有名な山内丸山古墳 縄文時代と言うと林に囲まれていたのではと思われるが、組織的に長期間、大きな単位で住んでいたことが判っているが、見つかった昆虫の中に人が手を入れて擬似林化した栗だとかドングリの中でしか生きない昆虫が見つかっている
縄文人は林を開拓して、そこに自分の居住地を作って暮らしていた
姫小金 豆小金 とかが見つかる 人々が栽培したものの所にいる種
山内丸山古墳ではゴミ捨て場みたいなところに、種を捨てている そこに小さなさなぎがいっぱい見つかる ショウジョウバエであることが分かった 目が赤い事が特徴
もともと酒が大好きなはえ 種が果実酒を作る可能性のある種です
酒作りをしていたのではないかという、事が判ってきた
時代をさかのぼると、気候が暖かかったり、寒かったりしている
北海道で9000年前に赤筋金カメムシが非常に鮮やかな色の虫 が見つかる
北海道でも亜熱帯の昆虫がすむ時代があった
仙台、岩手で黒姫ゲンゴロウ、ゾウムシ 決して現在はいない虫が見つかっている
現在はサハリンとか 亜寒帯に住んでいる虫 旧石器時代は寒かった 今より7~8度低かった
江戸時代の トイレが見つかる 名古屋城三の丸 頼まれて見る
トイレと思っていた土の中から姫家はえ と判る 発酵したところに集まる種
桶は漬物桶ではないかと思った (質素な食べ物を食べていたのではとの思い)
手法を外国にも適用できないかと、アンコールワット とか中国に行った
掘りを調べる 60~100万人住んでいたともいわれるが、排泄物にかかわる昆虫が出るものと思ったが、ほとんど糞虫は見つからなかった
綺麗な水に住む昆虫が見つかる アンコール文明では人糞などを何かの方法で除去するような浄化システムがないと説明つかない様な昆虫の組成に出っ食わして吃驚した
(中国、5000年前の土は極めて汚れていた 日本の弥生時代の土も極めて汚れていた)
5000年前の山内丸山古墳 糞を食べる虫がいて、それをまた食べる虫がいて 循環システムを
自然に上手く戻してゆく仕組み カンボジア(アンコールワット)でもうまく循環するシステムが働いたので、綺麗な状況になったのではないか(少ない研究による知見ではあるが)
鎌倉時代の発掘 ソフトボール大の緑色に輝くものが見つかる 昆虫だんごと呼んでいた
何だかわからなかった 同じ時代の遺跡を調べてみると、姫小金、豆小金がどこでも見られる
害虫駆除した跡(塊)ではないかと(当時姫小金が大繁殖した) 森林開発により人間の居住域にやってきて、畑作物を食べて、人間に害を与えたのではと思っている
吾々は人間の立場で全て物事を考えてしまうが、このままでいいのかという風に考える(宮崎駿の映画等から考えると)
絶滅の原因 いろいろあるが 人の営み、開発によって絶滅してゆく事が多い
人も自然の一部であると認識してもらいたい
研究をしていて、面白いこともあるが、くじけてやめようと思ったこともあるが、やめないで来られた一番の原点は 昆虫少年だった時の経験が原動力になっている
手の中で動いている感触、林の中のにおい とかそういった感動
是非子供のころに自然の中で昆虫を眺めるチャンスを作ってほしい
電子顕微鏡、DNAとか 解析の手段を広げ、羽根一枚では名前がわからなかったものを、ピタッと種が決まる。そういう分野にも切り込んでいきたい
モンシロチョウは大陸から来たといわれるが、いつ頃来たかは定かでない
土の中を調べていかなくては判らないと思う