2013年5月4日土曜日

伏木亨(京都大学教授60歳)    ・だしの文化を次世代に

伏木亨(京都大学教授60歳) ・だしの文化を次世代に 
今、日本料理がヘルシーでおいしいと世界で注目されています  
そんな中,日本国内では若者を中心に和食離れが進んでいます
人がおいしいと感じる、メカニズムを研究している京都大学、農学研究科、伏木亨さんは日本料理のだし・うまみに注目、学生を対象に京都の料亭のだしを味わうイベントを5年前から行っています
昆布や鰹節から取る日本のだしにはどんな特徴があるのか、だし文化を守り、次世代に伝えていくにはどうしたらよいのか、伺いました
 
美味しさの研究は25年ぐらいになる その前は栄養学 酵素学 
食品工学科で 40歳になったころから食品の中では美味しさの研究は難しそうで一番時間がかかるのではないかと思って、あえてそれにチャレンジしました
美味しさに関する研究は当時はだれもしていなかった
あるとき 美味しさは私の頭の中にあるのではないかと思った
食品をいくら分析しても美味しさは判らない 頭の中を分析すると判るのではないかと思うようになった

4つぐらいの構造からなっていると思われる
たとえば子供が食べなれた安心感がある  食べなれていない物は違和感がある これは大きな要素  体が欲しているものは美味しい  情報は美味しさに影響しえていてブランド、あるいは物凄く高価、なかなか手に入らないもの、有名なグルメの人が絶賛したとか そういうものはやはりバイアスがかかる(美味しさを感じる)
無性に美味しい食べ物 チョコレートとか甘いもの 油の乗った食べ物魚とか そういう油と砂糖
あるいはうまみが豊富な食べ物はおいしい
 
基本的には栄養の豊かなもの 油、砂糖、うま味(アミノ酸たんぱく質) それがたくさんあるときに 生きていくうえでの必要な基本的栄養素の3つなんですよ  それが沢山あるときに病みつき感が生じる  美味しいものはそれらが合わされば合わさるほど美味しいと思う
おなかがすいた時のラーメン  油とうま味が入っている 食べなれている食品 どこどこのラーメンは美味しいとか(情報)  いろんな栄養素が入っている  4つ揃っている(人類共通)
食べなれた感じは違う(たとえば日本とアメリカとか)

昆布と鰹節  日本人だけ好き  昆布はアメリカなどではヨード臭い 嫌われるにおい
鰹節は魚臭い  世界では昆布、鰹節の出汁は嫌われている
アメリカに10日間ぐらい出張して帰りにそば、うどんとか食べたくてしょうがない  シアトルの空港で待合室でうどん屋があった 皆が行列していた 私も並んで食べた 美味しかった

中国では鳥、肉、骨とか長時間煮てだしを取る、 フランスでは野菜、魚、肉とかいろんな用途に応じて長い時間かけて取る 
だしの使い方 日本のだしの取り方は特殊  昆布は冷たい水に入れて、60~70度ぐらいまでしか温度を上げない 昆布を取り去った後でちょっと温度を上げて今度は鰹節をばさっと沢山いれて、 1分ぐらいでさっと出してしまう  香りがファーっと出ているだけ
日本のだしは1分間でだしてしまう  長く時間をかけると余計な味(雑味がする)が出てしまう
日本のだしは余計な味を出さないことで徹底している(海外とは違うところ)

日本の京料理のシェフの人たちと研究会をしている  「あく」を考える というテーマ行う
あくがあると料理の味が濁る  たまたまフレンチのシェフがあくは絶対取らないという
あくこそがおいしいと彼が言うので、面白いといった
煮物 あくをこまめに取ったもの  あくを全く取らなかったもの 2つ どちらがおいしいか
ほとんどの人があくを取らないほうがおいしいといった 
私も食べたが味が分厚くてリッチな感じだった 京料理の人は是は店では出せないという
品がないという  味の分厚さとか、深みを我慢しても純粋のうま味を求めている
料理の素材の味が生きたり、それを重ねたときに、混ざり合わないとかそういう事があるそうです  
そこに余計な味がすると、素材の味、下味がぼやけてしまう だから味が分厚くなってもそれをしない  京料理の神髄だと思いいました
室町時代から鰹、昆布は使われているが、お茶の懐石料理でもつかわれるが、この辺りから余計な味ではなくて、ピュアな味に拘る事が出てきたのかもしれない
鰹は油が少ない  だしを取ると油が少ないからにおわない かび付けするともっと油が少なくなる ぱっと香りだけ付ける 透明感のあるピュアな味がする  一つの美意識なのではないか

日本人は昔から油を取っていなかった 砂糖も少ない だしの美味しさと塩しかなかった
だしと塩で味付けする だしは鰹、ざこから取っているので動物質 野菜をだしを使ってやると野菜が動物の風味に変わる これが一種の疑似肉となる
昆布と鰹節の組あわせ  昆布は非常に大量の グルタミン酸とアスパラギン酸 うまみのあるアミノ酸を含んでいる  鰹節は動物性のイノシン酸(核酸)がたくさん含まれている
この二つがうまさの何倍もの相乗効果を生み出す  経験的に判ったんだろうと思う
グアニル酸(しいたけ)と昆布 精進料理にも多く使われている

日本のだしが優れている  日本の伝統的なだしの美味しさは洗練されている
砂糖も油も使わずに  カロリーも低いし健康的な食べ物
世界でブームになっている 世界は健康的な食べ物に向かっている
素材を生かそうという方向に向いてきている もともと日本は素材を活かす料理
新しいものは日本から探すというのが、ヨーロッパにある
日本が新しいきっかけを造った  素材の味を楽しむ  素材を楽しくという事は季節 新鮮さ
そこにある生きたもの そういういろんなものを感じるということ
ソースで全部同じ味にしてしまったり、濃い味にしてしまうと素材感がなくなってしまう 
ここが新しい流れでしょうね

日本人は昔から食べ物との我々の関係が非常に近かった 身の回りの生きているもの 植物、動物をいただく 日本の宗教があるのかもしれないが自然と共に生きている 自然観
海外の多くの宗教は人間対自然の距離がだいぶ遠い 自然を克服して生きてゆく その料理というのは自然をやっつけてしまった料理  日本の料理は自然をいろいろ活かしながら食べている この二つは大きな違いがあるような気がします

世界は健康志向 素材に興味は出てきた  うまみが世界語になってきている
甘み、塩味、苦み、酸っぱさ、うま味   ここ30、40年ぐらいで認められた 味も分からなかった
池田菊苗氏 昆布を沢山煮て濃縮して抽出 グルタミン酸だった うまみの発見(100年前)
トマト、きのこ、いろんな素材の中にうま味があることが分かっていた
うま味を生かした料理 繊細で季節感のある料理ができる

一方で和食離れがある 食の選択肢が増えた 必然的に日本食が減る
伝統的なベースとなるだしのうま味がメジャーではなくなってきている
本物のだしを味わう事は教養である  五感で感じることも一つの教養であると思う
伝統的なうま味を学生に知ってもらいたいと思った 京料理を食べてもらう
10月から11月に京料理のブースを造ってもらって1日100名限定 料理を堪能してもらう
店によって料理の味が全く違う  香りが中心にした味 とか昆布が利いた味とかその店が守ってきた味だと思う  
だしの中途の味を試飲し、最後に昆布と鰹節に塩を整えた時に学生から歓声が上がった  
今年で6年目になるが毎年同じ歓声が上がる

京料理の危機感 若い人に本当の味を教えてあげたいとの期待があるのかも知れない
ご飯の食べ方、頻度が少なくなった  海外からの食品が増えた
味噌、醤油、みりん、酒 ご飯の消費量と同じように減ってきている
ご飯と一緒に育ってきた文化も薄くなってきた  まずはご飯を食べましょうと言いたい
自然に魚、おつけもの、だしのきいた食べ物 も食べるようになる  一連の物
子供のころに経験していないと大人になっても子供のころに食べたことを思い出すので、教育する必要がある(日本食に対し遺伝はしない)
京都は180校小学校があるが、1割に京料理を出して味わってもらっている

長命の県は変わる 食べ物によって変わる事はある  粗食は長生きの元
人生観にもよる (粗食にたえて長生きするのかとか)
日本の伝統的な食のよさを見直して取り入れて行けば、悪い方向にはいかないと思う
日本料理を世界遺産に   日本料理の活性化  日本料理を大事にしたいというのが、先とは思うが