2012年12月1日土曜日

秋元雄史(金沢21世紀美術館館長)  ・工芸未来派というアイデア

秋元雄史(金沢21世紀美術館館長) 工芸未来派というアイデア  
絵画、彫刻と比べて、工芸がどう違うか  歴史観を考えてゆく時に重要なもの  
日常的に使われる機会が多い  
全く日常的に使われない絵画、彫刻と比べて、工芸は日常的に使われる処がある 
芸術であると同時に道具でもあるという両面を持ってるのが工芸の面白さだと思う
絵画、彫刻と比べて、何となく馴染みがあるような感じがすると思う 絵画や彫刻の展覧会を
やるよりも、観覧者が長く見る傾向がある

工芸は自分の持っている美意識と比べてて価値判断をしている傾向にある 
工芸は日常的な道具の中に有る美 こそ工芸だ と言う人と 芸術作品だと言う方も居て、
全く相いれないような事が共存しているのが工芸の面白さだと思います
旨くつかんでいくための言葉がうまく見つけられていないのが工芸 とても難しい事  
日展の工芸部門 非常に現代的な表現をしてゆく方向です
伝統工芸展が一方に有ります 逆に伝統にのっとって、技術と言うものを中心にして工芸を
作って行こうという人達
クラフト 日本語に訳すと工芸ですが、西洋から輸入された工芸観に則った工芸というものがあります
現代美術に影響を受けて生れてきたような工芸が有って、非常に前衛的な表現をする  
さまざまな表現がある 又それに派生して表現の幅が広がってゆく
主だったものが分岐して行ったのが、戦後ですね 60年前になる 現在はより多様化している  
見方によっては混乱していると言える
特に見る人達からするとどういう風に見ていいか判らないと言うほど、さまざまな表現が生れていて一遍に見れればいいのですが、工芸の全体像がなかなか難しい状況になってきている
海外では絵画や彫刻や他の現代美術といっしょに取り込み、楽しんでいる

日本の中で、細かく之が工芸、あれが工芸だとやっていて海外に伝えてゆくだけの整理が
出来ていないと私は思っていて、そこのところを旨く磨いてゆけば
もっともっと工芸の世界が海外に広がってゆくと思います
工芸は伝統、日本文化と深く結び付いている  
工芸は現代美術のなかでは余り多くのパートを占めていたのではないが、ここのところ変わってきて、世界中で繋がってきて、同じ様な考え方、同じような見方だけになってゆくような雰囲気があり フランスに行こうがアメリカに行こうが日本にいようが どこにいっても同じような風景で同じような文化ではつまらない
  
そういうことも有ってそれぞれの個性を再発見しようと言う風な動きが出来てきている
文化の多様性 その地域の固有の歴史を持った文化、地域性の強いものを見直してきている
改めて工芸が注目されてきている メトロポリタン美術館で日本の琳派展を開催していた 
俵屋宗達 尾形光琳 日本の総称的な技術様式
自然を生かしたデザイン 琳派の美学として紹介されていた  
カタログでどのように日本の琳派を見ているかを紹介していた
加山又造 中川衛(金工 人間国宝) その様な方の作品にもカタログに触れられている  
歴史的な文化 琳派なんて江戸時代の美術で終わっている様に思う者を、今の時代の中にも
探している と言う事をやっている 之が重要だと思っている

日本の美術研究者も考えなくてはいけない  今の時代から見てどういう風に過去の遺産を解釈
してゆくかは非常に重要ですし、連続したものであるということはとても大事だと思う
実は琳派展の中では大きく現代のパートを作っていていろいろな解釈をされている
中村卓夫 窯元の3代目  京焼きを経由しながら、琳派の様式を現代的に扱ってきた作家です  
そのかたの作品が現代の琳派として展示されています
中村さんは現役の活躍されている方です  中村さんの作品の隣に、尾形乾山の江戸時代の
琳派の工芸作家 乾山の作品が展示されている
日本ではあまりこういう様な展示のされ方はしないが、海外では今の時代と、歴史的な美術を平列に並べて、生きた歴史として見て行くと言う風な動きが出来ている
日本美術の専門のギャラリーが出来た (オーストラリア メルボルンの美術館) 
西洋の大きな美術館ではこれまでも有ったが、オーストラリアで出来たのはこれが初めて
仏教美術から、、書壁画、浮世絵等古典美術が公開されているが、現存作家も展示されている 
輪島の漆作家 北村辰夫 蒔絵を施した作品、日本文化は世界に広がりを見せている

単に古典の日本美術と言う事だけではなくて、今に生きている日本的な美意識として広がっている 
ここが非常に重要なこと  個人のお宅にも入ってきている
書、壁画 襖絵 壺を展示している 後ろにはヨーロッパの銅版が、油絵が飾ってある
大かたは西洋の美術と一緒に日本の美術を展示している  
自分達の生活空間を豊かにしている  
日本では分けて考えがちであるが、自分達の西洋風の暮らしの中で、日本美術が何気なく
入りこんでいっている
こういう風な受け入れられ方は重要で、日本的なものをそのまま西洋の文脈の中に入れてゆく事が、海外では行われている と言う事を認識する必要がある

「工芸未来派」と言う展覧会を行った  非常に現代色の強いものを展示している訳ですが、
単に現代風であればいいと言うのではなく、歴史的に繋がってきている
伝統技術、伝統工芸に支えている考え方、美意識だとか、そういったものをちゃんと認識しつつ、
今に活かしつつ現代化している作家を選んできました
これから考える新しさは、単に新しいと言うのではなくて、かつての記憶なり歴史のエッセンス 
歴史的な時間の流れの中に立って、今を背負っていると言うような考えが大事だと思います
歴史観の変化がとても大事だと思う  海外の人達はそういう風にみている
九谷 見附正康 赤絵の技法を使っている(伝統的な技法) 図柄はとても現代的に見える  
龍、七福神とか 古来の中国から伝わってきた図柄を描いてきたが、
デザインが全く変わってきていると言う事がポイントです  
今生れてきつつある技法であると思うが、九谷の歴史と係わりがある  
細部が持つデザイン 日本を越えて、ペルシャのアルハンブラ宮殿  タイルのアラベスク文様の
様なデザインを想起してゆくわけです

日本的なものと思われたデザインが世界とつながってゆくと言う事が大切なことで 
ある種の繋がりみたいなものがあることで日本の工芸が広がってゆくチャンスにもなる
絵つけの作家 葉山有樹  有田で製作している  龍が非常に細密に描かれている  
昔の龍の書き方とは随分と違う 漫画的と言えるような描き方伝統的な技術をベースにしながら、 圧倒的な技術力を習得していながら、イメージの作り方が現代的共通するのは伝統に対する配慮 現代に対する鋭い視点 この二つが旨く結び付いている事が、それぞれのアーチスト達の作品が出現すると言うような作りで展覧会を行っている

全部で12人いる   海外での工芸の受け取られ方  工芸は日本の歴史的な伝統的な古い文化と言うだけではなく、現代に息づく 現代も盛んに作られている
新しいものとして受け入れられている  
それは特殊な日本文化としてそれだけをくくってみている
のではなく 西洋の油絵、彫刻、ほかの国の工芸品と合わせて日本のものも、受け入れている
もうすでに受け入れられ始めて、ファンを持ち始めている世界に向けて日本の工芸を旨く
お見せしてゆくことが次の展開の一番大事なことだと思います

芸術と暮らしの繋がりは日本ほど強くない 芸術はともすれば美術館にいくもの、
暮らしは非常にリアルな世界で そこに暮らしの中に美、花をポット活けけたりする 
日本では根付いている  工芸も海外で受け入れられて行くと思っている  
相撲、柔道、剣道がありますが 日本の武道を国際的にする
相撲 国内だけにとどめる  工芸は柔道のように、国際的な広がりの中で工芸と言うものの
価値を伝えてゆくと言う事が工芸の次の展開だとおもいます
日本の伝統的な工芸の考え方と西洋の美術がうまくつながらないかもしれない 
しかしそれを如何に日本的なものを殺さずに海外の人に理解してもらえるか、と言う事が凄く大事です
前に前に出て我々の良さをより広く世界の人とシェアーすることが我々を理解して貰うことだと思う
工芸は日本の文化に深く根差していながらも、外に開いてゆく可能性を非常に持った芸術表現です  
是非今の美術として展開してゆきたい
石川県は工芸の産地ですし、単に歴史の中に埋めてしまうんではなく、今の時代を切り開いてゆく
文化として活用してゆく より力を与えて行く事は重要だと思います