2012年12月29日土曜日

奥村彪生(料理研究家75歳)    ・日本の伝統料理の知恵と技

奥村彪生(料理研究家75歳) ・日本の伝統料理の知恵と技
昭和12年生れ 大学で食文化の講義をするなど、食生活の充実の為の実践と研究をしています
縄文時代から現代まで日本人はどんな食べ物を食べてきたのか強い関心があり、
日本をくまなく歩き 伝承されてきた各地の料理の世界を見つめてきました
正月は日本人にとっては元旦が重要  雑煮とおせちを食べるが 本来は組重 重詰めともいう  
正月食べる顔は雑煮 雑煮は神様と一緒に頂く食べ物でなおかつ 酒の肴なんです 
お神酒のあてなんです  
雑煮が始まるのは室町時代 元々は上流階級 足利将軍、貴族を含めて お祝い事に食べていた
上流階級の婚礼の時の 婚礼の時のお嫁さんがその家のものになったという証を示す 
お色直しの時に 祝い肴として雑煮を祝ったのです
餅を食べることを おちつき餅という  この家に長く落ちついて舅、姑、主人にお仕えしますよ 
という そういう印でも有った

正月に祝うようになるのも、室町時代  戦国時代に成ると、織田信長が徳川家康をもてなす時に 
大事な客なので その時に第一にお雑煮です
現在とは中に入っているものが違う  干しアワビ 干しなまこ するめ  豆が入っている 
雑煮は京都で生まれて、京都で育つ 

戦国末期に甘い白みそが出来る 
これが出来てから味噌を澄ますのが邪魔くさく成ってそのまま使うようになる
上流階級では昔ながらの大豆で作る味噌を (大豆と小麦で作る味噌) 澄まして 
そのうわずみを雑煮に用いた 元々は「すまし」と言った 味噌澄ましと言った
段々庶民化してゆく 1650年ぐらいになると京都では上流階級も一般庶民も 皆が元日に 
雑煮を祝う と言う記録がある
山陰 雑煮は丸い餅  元をたどると飛鳥時代にすでにゆで上げきを食べている 
都では奈良時代に成ると現在のソーメンの親 さくべ むぎなわ ゆであげきで食べている
水あめを入れて  そういう名残りが出雲に残っているのかなと思ったりしているが
大きく分けて丸餅 と角餅に分かれる 

丸餅は古式 丸は円満を表す 
餅には稲霊 稲の神様が宿っている  日本は農業国家 明治まで8割が農民
豊作を願う と言う事もある 
丸は円満 望みがかなう   年玉を頂くとあるが、 昔は「まるこ餅」を配った  
それが年玉
雑煮を祝うと言うことは年神様の魂も頂いている という表現に成って来る  

江戸時代に江戸に伝わる
江戸は武家の社会だから 敵をのしちゃえ と言う事で のし餅   
もう一説は庶民の間に普及して
ゆくのが、元禄時代以後 長屋住まいが多い
餅を搗くのに狭い台所では餅が搗けないので  ひきずり賃突き餅屋が来る 
搗いてはもう握るのが邪魔でのしちゃえと言う事でのして食べた
本当のお祝いが神事に成ってゆく  30日 みそか(三十日)の日に主人がこもる  
夕食を食べて部屋の中にこもる そして除夜の鐘と共に神社に行って新しい火を
貰って来て、それで雑煮をたく、火種にしていた 
 
なぜこもるか 一旦死ぬと言う仮定で、新年を迎えて蘇る 更生ですね
日本人は絶えず新しく物事を切り替え切り替えてゆく思想がある   
年ごとに新たに 新たに という  そして若水を汲んで自ら火を焚いて 
だしを取って雑煮を作っていた
雑煮は一家の主人が作るんです(いまは奥さんだが)  私の親の時代まではそうしていた  
雑煮を食べるとは云わない 雑煮を祝うと言った
  
雑煮だけでは人を持てなすにはお酒のあては少ない 戦国時代に「とり肴」と言う名前で 
海老 こぶ かずのこがつく
初めて出て来るのが石山本願寺 そこの日記に出て来る 別名「そえ肴」と言った   
それが段々年代があとに成って来るに従い贅沢に成って来る
天保のころ 大阪 鴻池家(日本一の金持ちと言われた)の記録がある  
ゴマメ 数の子 たたきごぼう 豆 梅干し  全部一重に入っている   質素だった
雑煮こそ我が家の顔なんです  地産地消(四里四方) 身の回りのもので食生活を成立させて
いたのでその土地の食材を使って一つのお椀に仕上げてゆくから
その土地の傾向がずーっと出て来る  言葉と一緒  方言 言葉が変わると雑煮が変わる  
おなじ地域でも家柄によっても変わる (武家、商人、農家、漁師) 
雑煮こそ世界遺産だと言っている  これほど土地柄を表している食べものは世界にはない
日本料理の良さは 縄文時代からずーっと6000年ぐらいは基本は変わっていないと思う
  
素材を清らかに食べること 出来るだけクッキングしないで
基本的には生食です  その代表が刺身  料理と言うのは中国語なんです   
中国の南北朝の時代  ほんぞう書に出て来る
擦り合わせる時の料理法則 という言葉  料は 正しく測ると言う意味(米へんにます)  
理は 正しく切り刻む 薬材ですから    
奈良時代に日本に入る  日本に入ってから料理と言う意味が変わる 
料は 正しく切る 理 は正しく盛る 美しく切って美しく盛る それが生食なんです
割鮮 新しきを裂く  これが料理なんです 刺身なんです  いまだに刺身は切って美しく盛る 
なんにも変わっていない これが縄文時代から続いている料理文化 余り油などを使っていない
土井勝 経営の料理学校に入る 2カ月で辞めてほしいと言われた 
いると先生がやりにくいと言われた

人に教えることはサイエンスでしょう 何でこうするか解説してくれると応用が出来る 
そのことをしてほしいと言った それもそうやなと言って今日の話はなかった事にしようと言われた
その後に職員に成りませんかと言われた 3年間下働きをした 
この魚をおろせといきなり言われたが、旨く出来なかった
切ったものをごみに捨てたが、土井先生がこれは使えませんかと言われて 翌日から頭、あら等
を作ってまかないで出したら、土井先生が食べてくれた
旨いよと言われて、レシピを作った  
捨てるものは無いんだと思った 今もそうやってやっている
伝承料理に成ったのは  7年間下働きをしていて、他の先生の講義を聞いていて ふっと思った  
切ります 煮ます でいいのかなと他に考えることはないかと
近くで葬式が有った 耳をそばだてると 改良?をしている
  
冠婚葬祭の村であるコミュニティーである場を踏まないと こういう催し物 祭事の料理、しいては
家庭料理の教育はないんだなと感じた
NHKで柳田國男さんが出ていた  先生の話を聞いていたら凄く面白い  
食習の勉強をしたいと言った
民族学の先生のところに行って足を突っ込んだ  風俗史学会で 食べ物だけを勉強している会が
あった  一遍 箸の話でもしてみませんかと言われた
「料理人から見た箸が築いた文化」 話をした  世界の料理の中で魚を焼くのに うねり串で焼く  
あれはナイフ、フォークでは食べられない 箸だから食べられる
器を手にとって二本の箸で食べるのは世界で日本人だけです  
器をテーブルから離すのは世界的にタブーなんです 日本だけが許されている

器を手にとって箸で食べると、たべやすいから  一番食べやすい姿勢は脇を詰めて腕を90度に
曲げてへその高さぐらいで食べると非常に綺麗です
ここにも清らかに食べる綺麗に食べる 縄文の思想が掲げられている
   
元々日本人は手でつまんで食べる (卑弥呼の時代は)
奈良時代は箸で食べる  雑煮は箸で食べる 柳の木がいい 一方は私が食べる箸 もう一方は
神様が食べる箸 そういう思いが込められている
自分専用の箸がある  この様な文化は他には無い  
使いやすい箸の長さは 「ひとあた半」 ひとあたは 親指と人差し指をピンと這って結んだ線が 
「ひとあた」
中国、朝鮮でも箸はあるが、スプーンもある  日本は箸だけですべてを行う  
器から直接お汁を吸うのは世界にはない 合理的、 なお美しく清らかに食べる
其れが日本の料理全体、生活にも全部繋がってゆく

古代食 天武天皇の孫 長屋王 遺跡から出てきた記録の中から食べ物だけを整理して、再現した
日本人が今御馳走としているものが全部入っている  米、味噌、醤油 (の祖先がある)  
塩辛 寿司(なれすし) 鹿、猪 兎 のなれすしがある
現在は握りになるが  日本の食文化の特長は全てシンプルにしてゆくこと 
その典型的なものは寿司  なれすしは東南アジアで生まれる 中国雲南地方のもの
中国では昔のまま、日本は昔のものが有り、室町時代、江戸時代に替わった物も有り 
現代化された物まで有り、全部そろっている
酢飯に刺身を載せている 一番シンプル   赤道直下ボルネオまであった(寿司)
梅棹忠夫  食文化 受信をしないで発信しなさいと言われた 
寿司は嫌がられたがドイツ、オランダ、フランス、イタリアでもなれ寿司を評価する 
 
チーズ文化
ほうれん草の胡麻和えが喜ばれた(欧州ではゆでてごちゃごちゃにする) 
最近は寿司も嫌がらず
に食べるようになった
魚の管理がずーっと発展してきた  鮮度管理 どうしたら旨く食べられるか 
極め付きが活けしめ
世界に誇るべきものは日本の包丁 包丁刀 と言われる  
こんなに切れる包丁を持っている国はない 包丁錆びれば、心も錆びると言われた
友達は包丁を神棚に上げて柏手を打っている

日本料理アカデミーで4回担当したが、質問が有ってそれを解決するために 「京料理とはなにか」と
言う本を作ろうと思っている それが日本料理とは何かに行きつく
世界遺産としてきっちりと認識して頂くためには、そのことをしていかなければ、単に言葉だけで
申請しても価値はないと思っている
正月の食事 ゆっくり時間を掛けて家族と団欒をしながら食事が出来る時間が作れる時でしょう  
食べることは単に身体を作るだけではなくてコミュニケーションを取る重要な装置でもある
美的センスを向上させる役目も有る  広がると経済産業発展機能がある 
農業水産の健全な育成振興が出来る