2016年5月7日土曜日

岩本真弥(陸上競技部監督)   ・”脱管理”で人を育てる

岩本真弥(広島県立世羅高校 陸上競技部監督) ・”脱管理”で人を育てる
去年暮れ、京都を舞台に行われた全国高校駅伝で世羅高校が成し遂げた男女アベック優勝。
岩本さんがその世羅高校陸上競技部の男子監督に就任したのが2005年。
その翌年にはチームを優勝に導き、これまでに5回優勝を果たしています。
2010年からは女子チームの監督も務めています。
毎年選手が入れ替わる高校スポーツにあって結果を出し続ける、岩本さん、それには指導者としての経験に裏打ちされた信念がありました。
岩本さんの人材育成術に迫ります。

昭和25年第一回大会の記念碑もあって、一回、二回大会の優勝校で駅伝の草わけ的存在という事です。
勝つ事を求められるが波があるので、しんどい年もあります。
監督として2006年57回大会で初めての優勝、身震いすると言う様な感じでした。
昨年のアベック優勝の記念碑は製作中です。
まさか同時に優勝とは思っていなかったです。
女子は5人がハーフマラソンの距離でタスキをつなぐが、アンカーに入ったところで35秒差の4位だったが、向井優香選手が逆転して劇的な初優勝だった。
3区は1年生にもいい選手がいて、選手の起用を悩んだが、長尾明日香選手に賭けようと思いました。
予想を上回る走りでした。
当初入賞が目標でしたが、淡い期待はありました。(数%ぐらいか?)

男子は7人でフルマラソンの距離を繋いで走る。
2区でトップに立った世羅高校はその後ぐんぐん差を拡げて行き、神の領域と言われた仙台育英高校の持つ大会記録を更新、2時間1分18秒という物凄いタイムで優勝しました。
7人は秋から想定したメンバーです。
1区で3人の中にいたので後は記録がどう出るか、期待していました。
生徒の距離感をうまく保つと言う事であまり教えない、指示し過ぎない、我慢する、言わない指導。
生徒の持っている内面の成長、自分で考えさせる力が育たないと思っていて、極力自分で考えさせる事が出来るように言いすぎない指導をしようと心掛けています。
例えば1000mを5回走ろうとする時に、4回か6回かは自分で決める、ペースも自分で決める。
そうするとさせられた練習ではなくて、考えて選んだ練習になると効果が高いと思っている。
女子も男子も寮生活で食事の量は自由、栄養指導はしますが、女子には甘いものを食うなとは言えない、控え目にとは言うが後は自己責任だと思います。

効果としてはまず積極性が生まれます。
単独走ができるようになり、駅伝は一度送りだしたらおしまいなので、いろいろ流れがあるので、危機管理能力とか、言い過ぎるチームは予定が狂うと脆い。
新迫志希選手 最も力のある選手でした。
10迄言わなくても巧く自分の中に落としこめる、やりたいようにやって結果を出していました。
キャプテンになった時にぱたっと調子を崩してしまいました。
走る前から負けるパターンができてしまい、負けず嫌いがでて、負ける理由を作ってゆく。
人の話を素直に自分の中に受け入れようとする感じではなかった。
その時、距離感を取ってなにも言わなかった。(もどかしかったが)

ただチャンスを与えなければとは思いました。
国体には出そうと思った、「エースはお前だから国体はおまえだ」と言っただけでした。
国体は予想外に走れたレースだったので、手ごたえをつかめるきっかけとなった。
いろいろトラブル、ストレスがあって考える力がつくと思っています。
自分でなかなか考えることができない生徒もいるが、修正をしてやるが型にはめてこうだと言う様なことはしない。
普段の生活をしっかり見てやることが大事だと思います。
本当の強さはトラブルとか、うまくいかないときなどに本当の自分の力を発揮できるのが強さだから、そういった人間が求められる、社会に出てもそうだと思う。

世羅高校の選手で活躍した当時は言われたことをやっているだけでした。
自分で考えることはしなかった。
世羅高校に赴任した時は、黙ってついてこいという様な感じで厳しくやりました。
一方的な指示する指導でした。
優勝した2006年の翌年、3区で出た生徒が怪我で使えなくなった。
何も考えていなかった生徒が出ることになり、全体に動揺が広がって全部が失敗しました。
この時に思ったのが或る程度自分で対応する力がないと駄目だと思いました。
アプローチの仕方を考えていかないといけないと思いました。
悔しさを活かすために方針を変えないといけないと思って、指導者の自己満足で終わってしまうと指導者の都合のいい人しか育たない。
生徒の満足を求めないといけないと思いました。
我慢をする指導、無理な管理をすればするほど、お互い息が詰まってくる、楽しくない。
シューズ、服装も自分の好きなものを選ぶ。
まだまだ日々勉強です、もっともっと言わなくても手を加えなくても出来ればいいと思います。
現状維持は後退だと思います。

人を育てるときには待つ指導が大事だと思っています。
一本筋が通った様な、人間的なもの、厚みがないといけないと思っています。
上司に立つものが待つ度量がないといけないと思う、若い人の意見が出しやすい様な体質を作るには待つ指導が大切だと思います。
男子はいい選手が抜けるのでチームを作ってゆく楽しさはあります。
教え子からオリンピックを出したいと思っています。