佐々木茂良(登山愛好家) ・1300回の富士登山から学ぶもの
冬の寒い時期や悪天候以外は殆ど毎日富士山に登っている佐々木さん 75歳。
神奈川県の養護学校長を定年退職した後、64歳で初めて富士登山に挑戦しました。
以来11年間富士山に登った回数は1361回、若いころは山登りは苦手で嫌いだったと言う佐々木さんが、還暦を過ぎてから何故富士山に登るようになったのか、毎日富士山に登る魅力とは何なのか、1300回を越える富士登山から学んだものはなにかを伺いました。
丹沢塔ノ岳(1451m)に登り始めています、富士山に登っていない時もトレーニングは欠かさない。
随分富士登山で考えたこと、学んだことがいっぱいあります。
定年退職をして余生を健康で病院に行かない様に過ごしたいと第一に思いました。
物ごころついた時から気が小さく、人に何か言われるとくよくよして、大きく自分でどっしりとした人間になりたいと、思い続けて、この際自分を生き直したいと一大決心をしました。
それに見合う努力はそれだけきついものであるはずだと、それには自分が一番不得意な山登り、それに挑戦をしてみようと思いました。
それも日本一の山富士山に登ることだと思いました。
回りは案の定大笑いしていました。
決断するのに遅すぎることはない、青春は物理的な若い年齢を言うのではなくて「やろう」と思いたって、夢中になることが本当の青春だと思いました、今青春真っただ中だと思っています。
「レイトビギナー」という言葉(遅くれてきた初心者)が気に入っています。
自分で夢中になれる目標、工夫と努力の仕方を見つけると、はまってしまいます。
達成感、充実感になります。
2004年6月5日 最初の富士登山 その前に金時山(1213m)にポツリポツリ登り始めていた。
教員時代、養護学校の時代の子供達の頑張りがいつもいつも浮かんできました。
養護学校の子供が10mを手すりにつかまって歩く訓練をしている子がいて、来る日も来る日も一歩一歩歩く練習をしているのを観ると人生観が変わります。
2005年9月15日 100回 65歳、 2008年9月に500回、68歳 2012年8月に1000回、72歳
2015年7月27日に1300回 去年の登り納めが1361回
100回登った時には妻は「フーン」と言っただけで 「それがどうしたの」というだけでした。
500回の時は言ってはいなかったが、寿司が出てきた。(カレンダーに付けていたが)
厳冬期、悪天候の時には登りません、5時に自家用車で出発して、富士宮ルートが多くて7時には登り始めます。
富士登山にはおにぎりよりパン食がいいです、妻が作ってくれます。
10時半で頂上に着きます。(3時間半 早い方です)
1年間に5~6分ぐらいは遅くなってきていますが、自然流で行きたいと思っています。
頂上では30分~1時間過ごします。 写真は4000枚になり、俳句を作ったりもしています。
「亡き父母の 温もりを背に 富士に立つ」 (初めて登った時で寒かった)
父母はじめいろんな人のおかげで登れたんだなあと思いました。
有難うございましたと謙虚になれる、素直になれる場所だと思います。
下山は2時間弱で、1時半ごろには5合目に着いています。
3時半~4時には自宅に着きますが、寄り道をする時があります。
それは道の駅から富士山が見え、そこでコーヒーを飲みながら、今日の出来事などを考えます。
図書館で本を読んだり、買い物をしたり、ゴルフの練習をしたりもします。
家に着くとシャワーを浴びて、ビールを3合飲み、何でもおいしく食べられます。
そのあとベッドに倒れ込むように寝てしまいます。
雲海もいつも綺麗です、ご来光にも感激し涙ぐみます。
富士山で見る空の青さは凄い青さで迫ってきます。
富士山の自助努力があるのではないかと思います、何事があってもあたふたしない泰然たる姿形に見えます。
今富士山に降った雨や雪は50年後に、ふもとの湖、池、川を潤しています。
あと30mで富士山の頂上という時に、1歩踏み出したとたんに突風に飛ばされて、9kgのザックをしょったまま滑落してしまって、大きな岩にぶつかったために止まったから良かったが、岩がなかったらどこまでも落ちて行ったと思う。
クレパスにはまったり、濃霧で1m先が見えないで樹海入り込んでしまったりもしました。
原因があって結果があるのだから、危険の原因となることを避けることを、しゃべったり書いたりしています。
第一に安全登山を目指して、次に富士山の歴史、伝承、環境保全の在り方、そういうものを調べたりする人たちを呼んでしゃべってもらう、勉強会、情報交換、飲み会をやっています。
山小屋に新聞をポケットマネーで届け始めたら、物凄く喜んでくれました。
8部前後持ってゆきます。
喜んで下さるそういうものを見ているのが、一番楽しくなる、役に立っていると思うと、面白いです。
自分でも判り易い努力、自分自身の内面の進化、進歩が自分で分かる、そういうのが自分に丁度あっている、自分で自分を褒めますね。
一歩一歩の積み重ねがないと頂上には着かないことは、いやっと言うほど毎日毎日思い知らされています。
富士山でなくても、山登りでなくてもいいと思う、それぞれの富士山があればいいと思う。
自分の目標を作って、努力する中で軌道修正をしていけば、必ず夢中になります。
米寿、88歳までは登りたいと思っています。