諏訪内晶子(バイオリニスト) ・「デビュー30年目の恩返し」
デビュー30周年を迎えた諏訪内さんに伺います。
時間的に30年というとアッと言う間というところがあります。
最初の10年間は特にアッという間でした。
デビューのきっかけは、1990年 - チャイコフスキー国際コンクールヴァイオリン部門で全出場者最年少第1位という事でした。
去年は審査員をして評価の仕方はいい才能、いい人を見つける時に絶対的に良さ、いい人はそのまま残されるんだなあと思いました。
中間層が非常に厚いです、評価がそこが難しいです。
私としては30年が経過して、何が本質的なクラシックの演奏の仕方なのかというのが、かなり変わったと思いました。
私の先生が強いロシヤ楽派の様式を受け継いで教えてくださったのでそれが私は強いので ロシヤも変わってきたと思いました。
音に質が随分変わったと思います、柔軟になってきたと思います。
ロシアは国を挙げて競争させていた人たちは、ちょっとそういう感じなくなってきました。
1989年 - エリザベート王妃国際音楽コンクールヴァイオリン部門で第2位に入賞していたので、高校3年生という事であまり振り返りもせず、前しか向いていませんでした。
留学したことがなかったので海外で演奏することが楽しかったのと、エリザベート王妃国際音楽コンクールで出会ったロシアの3人の人に刺激されモスクワ音楽院に留学したいという思いがありました。
日本人なので留学はできませんでしたので、ロシアに行きたいという思いで、チャイコフスキー国際コンクールに行く時には勝とうという意識は取り除いて、自分の弱い所を補なって行くような準備に力を入れました。
ロシアに行けたらいいなあという思いだけでした。
プレッシャーがなくて幸運でした。
何にも期待ぜずに待っていましたら、一番に呼ばれました。
全審査員の一致による優勝という事でしたが、それがどういう意味を持つのかということ自体が判らなかったです。
江藤先生からは最初チャイコフスキーのスタイルとは全然違うと言われました。
先生からはみっちり習いました。
チャイコフスキーのスタイルは気品のある音楽だと先生からは言われました。
個人的にどういう演奏家でありたいのかというところを自分で消化する機会がなかったので、コンクールを終えてからそういう立場になって行きました。
ですから逆に大変でした。
コンクール以降生活が一変して注目されていた感じはありました。
不自然な感じでした。
19歳で文化庁芸術家在外派遣研修生としてジュリアード音楽院に留学しました。
校長先生から音楽だけでなく総合的な力を身に付けてほしいと言われ、3年後大学に編入して机に向かいました。
大変でしたが、大学時代は一生懸命勉強しました。
色んな観点から音楽を理解するという意味では、それまでのただ弾くというところから全然違ってよかったです。
個人的な活動なので、ストレスもかかり、それを支えるという意味では学術的な部分があったのはよかったですが、精神的な強さも演奏活動には必要な職業です。
プレッシャーというものは何か負い目があるから感じるんだと思います。
若い時の良さはもろさ、はかなさであったり観点が違って、経験を積んで行った人とは違う良さがあると思います。
同年代でも体調を崩す人が多かったですし、事故、病気に巻き込まれる人も多かったです。
精神的に物凄くプレッシャーがあり、その中で活動してゆく時にバランスを崩してしまうと難しかったりします。
一つの演奏会をこなして次につなげるという作業がほとんどなので一つ一つのことをこなしてゆくという事なのかもしれません。
舞台に立つ怖さは今でもあって、その感覚を変えたりするとその感覚を取り戻すのに非常に時間とエネルギーを使います。
舞台が終わると本当にくたくたになるし、舞台での感覚を下げずに保ち続けるというのはあんまり間隔があいてしまうとそれが難しくなります。
2012年からは「国際音楽祭NIPPON」の芸術監督を務める。
20代後半の頃、ソリストはオーケストラから依頼を受け、識者から選ばれて演奏ができるが、いつも受け身の状態で、そういう活動をずーっと続けていくのかなあとむなしさを感じて、只演奏するだけではなくて、私に何かできることはないかなあと思いました。
40歳になったときに行動に移さないとまずいと思って、機会に恵まれて、日本に何か恩返しがしたいと思って、総合的な形で始めました。
第六回を迎えました。
もう少し踏み入った形でほかのアーティストの人との交流ができるようになったのは非常にありがたいです。
2020年はベートーヴェン生誕250周年に当たるので、ベートーヴェンのマラソンコンサートを一日入れています。
朝から夜まで演奏します。
ピアニストとはベートーヴェンのソナタを3曲演奏します。
コンチェルトもチャイコフスキーのコンチェルトを弾きますが、ジャナンドレア・ノセダさんという指揮者ですが、情熱的で緻密で素晴らしい指揮者なのでぜひ聞いてほしいと思います。
釜石の慰問コンサートもあり盛りだくさんです。
音楽の持っている力というのは伝えるべきところには伝えていきたい、届けられるところには届けていきたいと思っています。