2014年1月23日木曜日

大泰司紀之(北海道大学名誉教授)  ・エゾシカは森の幸

大泰司紀之(北海道大学名誉教授)         エゾシカは森の幸
昭和15年生まれ 北海道大学獣医学科を卒業後長年にわたって北海道、中国大陸、ヨーロッパなどで鹿類の生態、進化、保全等の研究をしてこられました。
1990年には北海道生活環境部のエゾシカ問題検討委員会の座長と成り、ヨーロッパ視察を行って1998年にはその報告書をエゾシカを食卓へと言う本として出版しました。
大泰司さんは鹿に限らず、猿、猪熊アザラシなど増えすぎた野生動物の人間に依る数の管理の大切さを訴えています。
今北海道とエゾシカ協会は連携してヨーロッパやアメリカの例を参考にしながら、人間と鹿それと自然の森が共存していけるよう、適切な規模に鹿の数を管理しようとしています。
又、間引いた鹿の肉や熊の皮などを有効活用しようと大学、自治体、食肉、革細工、漢方薬の団体などを巻き込んでエゾシカは森の幸だとして様々な展開をしています。
日本で唯一北海道知床地域で進んでいる鹿やヒグマの管理方法を全国に広めたいと努力してる大泰司さんに伺いました。

植林地の芽をかじったり、皮をかじって木を枯らしてしまったりして、畑の豆、砂糖大根などを食い荒らしたりして、年間50億円とか70億円とかの甚大な被害をもたらすので困ってきている。
鉄道も列車を止めなければならない事故が1500件とか、交通事故 2000件ぐらい起きている。
死亡事故が2件発生している。 
エゾシカは北海道全域に数10万頭住んでいたが、開拓の時に鹿を大量に捕獲、大寒波が来て絶滅寸前になったが、捕獲を禁止して、狩猟と密猟で一定の圧力がかかって1960年代、2000~3000頭取っているが1万頭密猟があり、少なかった。
1980年代あたりからハンターが減ってきて、自然保護愛護運動が高まって、密猟も少なくなって捕獲圧が少なくなった。
暖冬で子鹿の死亡率が減少、森林、草原が畑になり、鹿が移動ルートが鉄道や道路になっているので鹿の事故につながる。
洞爺湖中の島で1956~66年オス1頭、メス2頭放しところでは27年後には300頭 100倍に増えている。  鹿の数は増え続ける。  

鹿が30万頭~60万頭、オオカミは1000頭か2000頭だと思うので狼出バランスをとつことは難しい。
間引き続けなければならないが、人がオオカミに替って間引き続けなければならない。
アメリカでは、1000万頭おじろ鹿がいて、毎年300万頭捕獲して、鹿と共存している。
毎年数を推定して、ある数を決めて捕獲する。 
鹿はかわいいけど食べ物になるという風になっている。
電気柵、嫌なにおいを畑に設置するが、慣れてきてしまうので、駄目。
鹿の数を押さえる。 平成12年は14万頭捕獲したが、2~3万頭は肉として活用している。
国立公園とか、生物多様性を重んじるには1平方kmで5頭ぐらいが適当。
肉を利用するには1平方km20頭いていい。
カリング 一定の鹿の数から間引く事を言う。  毎年10万頭取ろうとしている。
地域ごとに取る数を決めて間引いてゆくという理屈。

シカ肉は高タンパクで質の良い肉。  
鹿肉にするには急所を狙って即死させて、血抜きを直ぐにやる必要がある。
シカ肉はヨーロッパではお祝いの時に食べる高い肉という、牛肉とか豚肉と同じでいろんな料理の仕方がある。
北海道ではエゾシカは美味しい肉と最近はなっている。
学校給食にも出されている。 和食にも工夫されている。
エゾシカ協会 エゾシカを食べようと、衛生的に処理して牛肉と同じように、買ったらだれが取ったか判るようになっている。
ステーキ、シャブシャブ、煮込んでもおいしい。 カレーにしてもいい。

酪農学科ではハンティングも実習するが、全身の肉を食べる様な実習もする。
解体も真剣にやるので、気持ち悪いとか言っている暇はない。
骨の髄まで食べると、この鹿はむしろ幸せという感じを持つ。
鹿はかわいいけど美味しそうでもある。  魚に対する日本人の見方と同じですよ。
夏場の2~3歳のオス鹿は美味いと思う。
野生動物の管理と言ったら日本では、保護だったが、マネージメントを日本では保護管理と訳したが、数をコントロールする意味に用いられてきている。
中、山間地、山の付近の畑は人が耕さなくなって、猪、猿、鹿が凄く増えてきている。
一定の数に減らすという事が必要になってきている。
地方の人は実感している、身の危険を感じるほどなので、コントロールする必要がある。
ハンターに以前は頼ってきたがそれに対応できなくなってきてる。
ハンターは趣味で動物を取るが、害獣駆除する事も義務になっているが、個体数コントロールと成るとプロが必要で、そこが日本ではピンと来ていない。

銃の数は50万丁ぐらいだが、江戸時代は150万丁だったので農具の一つと言うような感じで猪、鹿から畑を護っていた。
個体数を少なく維持していた。
個体数管理の必要性、「野生動物管理の為の狩猟学」の本が非常に参考にされ始めている。
間引き方を研究する。
オスはメス15頭に1頭いればいいわけで、大人になるまで生かす必要は無い。
オスは秋になると発情期になってきて体重は3割減ってきて臭くなる。
ドイツでは7,8月に若オスを肉用に撃って肉業者に渡すようなことをしている。
生き残り率はどうかなどをみて、いろいろと間引きのやり方を決めてゆく、鹿に限らず他の動物についても適正率、捕獲数、捕獲の仕方を決めて、そういうのを全部合わせてトータルに行う応用的な学問が狩猟学です。

陸に限らず海でも銭型アザラシも 前は襟裳岬でも300頭前後に維持されていた。
毎年50頭ぐらい獲る人がいて、取り過ぎないようにもしてきた。
一時期毛皮ブームで50頭ぐらいになり、絶滅するというので保護したら700~800頭になって増えすぎてしまっている。
間引こうときまったが、まだそれに反対する人がいて、間引きは行われていない。
猪、猿なども増えすぎているという現状がある。
日本でもワイルドライフマネージャーというか、野生動物を管理する人を養成する必要がある。
個体数を一定に維持する処にあるので、毎年動物は主に銃に使って取り除き続ける必要があるので、ハンターのほかにそれを専門とする人が必要。
狩猟学の本は最近できたが、実際に活動する人がいないので養成する必要がある。

新たに鉄砲を持って鹿を、害獣を撃つ訓練をしなくてはいけない。
管理の為の銃の使用と言う事になる。
アメリカ、餌でおびき寄せて撃って一定数を間引く、夜間では防音装置を使って撃つ専門の人が行う。
知床半島では知床科学委員会と知床財団が銃を使って毎年鹿を数百頭間引いたりしている。
実践教育の場にしたらどうかと、教育する話が出ている。
学生も狩猟学を勉強し始めているが、法律の面が遅れている。
ペンシルベニアでは交通事故が2万件ある、北海道では2000件ぐらい有るが、半分ぐらいにしようとしている。
銃は危険なので取り締まりが厳しいので、もっと持ち易くしてもらうと有難いと思う。
間引いた動物はなるべく食料に全部回せるように出来たらいいと思う。
鹿の害は或る程度我慢して、共存してゆく。