富山和子(環境問題評論家) 25年目を迎えた瑞穂の国のカレンダー
里山や棚田の美しい田園風景をカレンダーにして水田が日本の文化と環境を守ると訴えてきた富山和子さん、その日本のコメのカレンダーが今年25年を迎えています。
富山さんは79歳になられるそうですが、群馬県の出身です。
立正大学、日本福祉大学教授を 歴任後、日本の環境問題評論家として活動を続けてきます。
水と緑と土の物質循環の上に日本の美しい自然環境が保たれている。
そんなメッセージを写真に込めて1990年から始めたのが米カレンダーです。
棚田ブームのきっかけにもなりました。
25年間のカレンダーの発行部数は累計で150万部を越えています。
12枚の写真の脇にいは富山さんが描き下ろした詩が英訳付きでそえられていて、海外でも毎年心待ちにしているファンが多いといわれます。
25年目を迎えた瑞穂の国のカレンダー、富山さんに伺います。
「水田は文化と環境を守る」というタイトルが描かれている。
米と日本人とは母と子の様に太いきずなで結ばれています。
今農業は危機に瀕しています。
私たちが日本文化という土台をを失うという事でもあり、山や川など自然の環境も危うくなっていることでもあります。
美しい文化、自然を次の世代に送るために、どうしても農業を守りたい。
そんな願いを込めて作ったのがカレンダーの狙いです。
1990年から米の自由化が目の前に来ていた。
カレンダーなら写真の力を借りながら、出来るので、家じゅうで見て頂けると、農業の大事さが訴えられると思った。
米カレンダーとして1990年版から始める
写真の下に詩を描いて、脇に英訳が添えられている。
日本の四季折々の写真が添えられている。
写真集ではないので、私の思いを写真を借りながら作ってきました。
2014年版で言うと6月 原発とTPPが頭にあり、岡山県の棚田 主婦が二人働いている、そのうちの一人は86歳、豊かな風土、近所ぐるみで皆で共同して棚田を作り、共同して水を引き、守り優しい風景です。
この優しさをしっかりと見てほしい。
水と緑が自然にマッチするように二人がたたずんでいる。(日本の米作りの原点)
耕作放置 美しい自然が守れなくなる。
誰がこの国土を守ってゆくのか、手をかけてきたから今までは守られてきた。
7月 北海道の唐松 どうってこと無い人工林だが、北海道にはそこら中に唐松がある。
最初、明治の開拓の時に唐松を持ちこんだ信州の人なんです。
種で苗木を育てて、何年も何年も試行錯誤して北海道に唐松が適しているというまでにはどれだけの苦労、思いがあったろうと思う。
釧路の上の方に、どうにもならない原野があったが、営林署の人達が死に物狂いで一本一本植えていった。
あっけし牡蠣が絶えていたのが、復活しているのです。
それで森林は海の魚を育てていることが判る。
不毛の原野の段階では雨が降ると、ザーッと降って、どーっと土砂が出て乾いてしまうが、森林が土を養う、水は土の産物だと思っている。
森林で水が吸い込まれてゆっくりと出て行く。
豊かな土で養分を持ちながら、ほどほどの温度でゆっくりと海に出て行って、魚も、牡蠣も養分を頂く。
内陸の森林までが海の生物を養う。
唐松林が地下に水を溜めこんであっけし海岸に注ぎ込む。
国土の土台には先人たちの血の出る様な苦心の積み重ねがあるんだと言う事を、僅かな時間の間に忘れてしまうという事が残念です。
日本は木を植えることで水田を作り、木を植えることで水田に引く川の水を養い 文化を育ててきた。
日本では空き地があれば畑にしてきた、どうにもならない荒れ地は木を植えてきた。
8月 福島県相馬の海岸 水田 震災の翌年の写真(去年) となりは立ち入り禁止区域
海水をかぶっている土地 大変な思いで回復している。
自分たちでも食べないかもしれないが、兎に角ほったらかしにしていられなくて、こういう想いが日本の人達が日本列島を支えてきた。
米カレンダー 1年がかりで作り始める。
写真を探し始める。 個々の写真家、プロダクション等にに声をかけて、持ち寄ったものを選んで半年掛かって決める。
最初は数千枚から1万枚 そこから1000枚を選んで、その中から12枚を選ぶ。
私の故郷の群馬県、25年間群馬県は登場していなかった。
行っていない県は無いが足を踏み入れていないところは若干ある。
写真を決めてから地名を確認するが、それが大変。
讃岐富士 香川用水 香川用水を使う事でこの土地を潤している。
一枚一枚に農業、林業の想いが繋がっている。
アジアの稲作国家が集まって、なんかやろうじゃないかと集まりがあった。
タイ、フィリピン、インドネシアは一生懸命だったが日本政府はあまり関心がなくて、カレンダーを持って私が行ったら、英訳が付いていたのでじーっと見てくれて、これからは国連も国際米年をやらなければという様な事になって、2004年に国際米年を制定してくれた。
各国の要人が興味を持ってくれて、催促のメールがあった。
新潟県と石川県能登半島が世界農業遺産として登録された。
世界無形文化遺産に和食が認定された。 米を中心とした食。
日本は農林漁業が一緒です。
日本人の心の文化遺産 感性まで 風景を見る目、聞く耳、気温や湿度までからんで、太古の昔から一生自然と付き合ってきてDNAが全部受け継がれてきている。
大元は農作業から来ている。
土台を忘れてはいけない。
今も農業は多様なんですよ、役割が。
25年 300ヶ所 その土地と対話をしてきたが、一枚一枚教えられる凄い国だなあと思った。
奈良の室生に海神社があるが、あるときにあなたの詩碑を建てたいとの事、話の有った10年前のカレンダーの詩の一節だった。
「故郷と言えば先ず山を思い、山懐の民家を思い、山を神とし、湧きいずる水を命として米を作って来た日本人のこれが原風景 心のよりどころだ。」
式年造営を伊勢神宮と同様に20年に一度社を建て替えるので、記念に建てたいとの事で、10年間温めて居たと言う事で感激した。
カレンダーなので365日どこかで見ていてくれる。
トイレに飾るべし、対話ができるから という新聞に投書をいただいたことがある。
作る側は結構つらくて、何度やめたいと思ったかわからない。
最初の頃は悩んだが、続けるという事は力なり、と友達、読者から言われて、背中を押されながら続けてきた。
どうか先人たちのやってきたことを、思い起こしていただきたいし、調べて頂きたい。