2020年4月19日日曜日

井村辰二郎(農業法人代表)         ・【美味しい仕事人】「"千年産業"の農業にかける」

井村辰二郎(農業法人代表)     ・【美味しい仕事人】「"千年産業"の農業にかける」
井村さんはかつての大規模干拓地で耕作が放棄された土地を再生し、大規模に有機農産物を生産しています。
その農産物は豆腐、味噌、醤油、日本酒や焼酎、ワインに加工するなど、消費者と直接かかわる経営に取り組んできました。
大学卒業後広告代理店に勤めていた井村さんは、父親から農業を継ぐにあたって「千年産業を目指す」という経営理念を掲げました。
千年後まで継承できる持続可能な産業を目指すなら、環境に負荷をかけない有機農業しかないと考えたそうです。

金沢市内と能登を中心に約180ヘクタールぐらいの農地を預かっています。
もともと河北潟型干拓地という国が開いた農地がありまして、そこで耕作放棄地を開墾規模拡大していって、耕地放棄地もなくなって、能登にまとまった農地があると紹介していただき、それをきっかけに能登で少しずつ増やしていっています。
22年前に新規就農した時には河北潟型干拓地は約1100ヘクタールの形がありましたが、200ヘクタールが耕作放棄地として放置されていました。
毎年10ヘクタールぐらい開墾して現在そこの耕作放棄地はない状態になっています。
160ヘクタールが有機栽培になっていて残りの20ヘクタールは田んぼが小さかったり、都市部にあったりということで、特別栽培ということで作っています。
農薬、化学肥料は使わないというのが原則になっています。
コメ、大豆、大麦、小麦ハト麦などの穀物を中心に有機野菜、葡萄作りなどもやっています。
日本農林規格がありこの認証をとったものが初めて有機なものだということを表示することができます。
輸出もしたいと思って、ヨーロッパとアメリカの認証も取りました。
取得にはかなり苦労しましたが、取れたときには大変うれしかったです。

当時は国も農産物の輸出にはあまり積極的ではありませんでしたのでいろんなことを考えました。
22年前に会社を辞めて農業をすると決めたときに、自分はいったいどんな農業をしたいんだろうと自問自答しました。
その時に持続可能性、生物多様性を大切にする農業だと考え、有機農業に行きつきました。
昔は農薬,化学肥料もなかったわけで1000年、2000年の歴史を持っているわけで、そこに戻るということは持続性があるということだとイメージしています。
食料を作るのは農業、漁業などの一次産業が本来私たちのベースにあるものだということを子どもたちに伝えるようにしています。
22年前地域の農村の環境が変化していって、鳥、魚などが少なくなっていきました。
農業こそが環境と仲良くしないといけないという思いです。
古くからそこに住む人たちが自然と調和して、循環型の社会を築いてきたというのが日本の歴史だと思っています。
壊れていって耕作放棄地を再生して自然と調和した農業ができないだろうかと考えました。

大学は農学部農学科を卒業しましたが、父親が大きな病気をして帰ってきましたが、ほかの勉強もしたほうがいいと父親から言われてサラリーマンをして、その後1997年に農業に参入しました。(8年間サラリーマン勤務)
いろんな顧客とコミュニケーション活動をさせてもらいました。
企業が環境のことなどで悩んでいる時期でもありました。
消費者との関係作りが大事だと思いました。
大豆を作るだけではなくて豆腐とか、加工品を広げていきました。
双方向のトレーサビリティーをしたいと思いました。
農業の役割とは何だろうと考えて、段々夢がひろがって行きました。
2015年にSDGs(持続可能な開発目標)のアジェンダが出た時には、衝撃的でした。
17の項目を見たときにまさにこれだと思いました。
当時は有機農業で作った味噌、醤油などはほとんどなかった時代でした。
マーケットを作る処から始めたので苦労はしました。
大豆、麦は加工品になって初めて食卓に届くので、そこを生産者の責任での商品作りをしたいと思いました。

麦茶、きなこ、小麦粉など基礎調味料的なものはいろいろ作っています。
全国のいろいろなスーパーさんのところなどで扱ってもらっています。
小麦粉はパン、ケーキ、ソーメン、うどんなどいろんなものに加工されています。
北陸3県は大麦の産地で小麦は作られていないところでした。
まずは小麦粉でパンを作るという目標からスタートしました。
10年近く前に日本の米を海外に輸出しようと思ったときに、価格差があって太刀打ちできなくて日本酒など加工品にして、ヨーロッパにもっていけば評価してもらえると思って、日本酒を開発しました。
焼酎を作っていたメーカーは九州産の大麦を使っていて作っていて、地元の大麦を使いたいということを聞いて、能登の焼酎が開発されました。
日本酒はアメリカ市場に輸出されています。
減反政策があるネガティブな環境の米つくりでしたが、行動を起こしたのが日本酒です。

50歳の時に夢の棚卸をしてみたらと友人に言われて、それが去年ワイナリーとフレンチレストランという形で実現しました。
周りからの協力で何とかできました。
醸造技術については3年通って基本を身に付けました。
石川県産の葡萄をワインにするというのがワイナリーのルールになっています。
フレンチレストランの壁は3種類の葡萄畑の土を持ってきて、左官職人さんに塗り込んでもらったものです。
食材は有機農法でできた食材などを利用しています。
「アグリハグハグ」は造語でアグリはアグリカルチャー(agriculture)から、ハグハグは
農をはぐくみ、農を抱きしめる、そういったコンセプトで「アグリハグハグ」を活動のキーワードとして使っています。
古民家を拠点にして、中学の修学旅行生の引き受けを数校やっています。
農業を知ってもらういい機会にしてもらっています。




















「千年産業を目指す」