2020年4月23日木曜日

平常(人形劇俳優)            ・【私のアート交遊録】「心も体も自由に!」

平常(人形劇俳優)         ・【私のアート交遊録】「心も体も自由に!」
小劇場から大ホールのでの大型人形劇ミュージカルまですべてを一人で演じ分け、演出、脚本、音楽、美術も自らプロデュースし、一人芝居と人形劇を融合させた独自の表現方法を確立しています。
平さんは物心ついたころには、息をする事と同じくらい当たり前に人形劇を見たり演じたりしていたといいます。
三味線奏者であった父と薩摩琵琶奏者の母は文楽や腹話術など息子が興味を持ちそうなあらゆる番組を録画して見せてくれたといいます。
人形と一人遊びをする自分を両親は認めて応援してくれたといいます。
人形が表現の引き出しを次々に開けてくれたという平さんに伺います。

人形劇というものは私にとっては昔から総合芸術です。
文学的な要素、美術的な要素、いろんなもの、音楽、ダンス、舞台芸術のいろんな要素がはいっています。
皆さんが思っているよりもダイナミックなスタイルになっていると思います。
大きいと1000~2000人収容できるホールで上演しますし、10トントラックも出して大掛かりな人形劇です。
いろんな感情が一人の人間にはあると思います。
一人の人間がいろんな役をやる事によって見ている人、一人一人がいろんな感情に気が付いてもらえるきっかけになってもらえればいいと思っています。
この物語を取り組みたいと思ったときに、完成した舞台が色から形から音楽から全部頭の中にあり、それを具現化してゆくという作業があり自分でやらないと気が済まないんです。
でも今後は演出だけをやることも考えています。
2013,4年ごろから音楽家の人とコラボレーションするようになりました。
北海道では人形劇が一番盛んで、いろんな人と組んでやっていて19歳で上京してから10何年間は一人でやってきました。

レパートリーは広くて、文学作品が大好きで最も多く上演しているのが寺山修司さんの戯曲「毛皮のマリー」で新国立劇場ほか各地で上演させてもらっています。
水上勉さんの「はなれ瞽女おりん」、シェークスピアの「ハムレット」、オスカーワイルドの「サロメ」、泉鏡花の「天守物語」などが数多く上演されています。
「サロメ」などもそうですが、人形がやる事によって人のイマジネーションを上手に刺激しながら今まで感じなかった、見えなかった想像の扉が開かれる。
サン=テグジュペリの「星の王子さま」は大人にこそ読んでもらいたかったのではないかと思います。
小ども向けもいろいろやっています。
道を歩いていてもいろんな作品が頭の中をグルグルしています。

生まれた時から人形劇が好きでした、呼吸することと一緒でした。
身の回りのものを握って感情表現していたと両親は言っていました。
父はフラワーデザイナーから金属工芸家になって津軽三味線奏者になって、そのころ生まれました。
母はピアノを弾いて薩摩琵琶奏者になったころ私が生まれました。
家の中に音楽があふれていて、日替わりでいろんな楽器奏者が家に来ました。
10歳になっても人形が大好きで精神的に遅れていると先生も心配していました。
母親は肯定的にとらえていました。
高校卒業する時には進路については物凄く悩みましたが、ある人から「そんなに自分でやりたいことがあるなら旗揚げしてしまえば」と言われて、それがきっかけになりました。
上京してアルバイトをしながら生活をしなければならず、一時人形劇が嫌いになりましたが、母親から電話があり、「よかったね嫌いになって、嫌いになってからが本物なのよ」と言われました。
やる気が芽生えて事務所の社長さんと出会って、人形劇で生計が立てられるようになりました。(23歳)

社会にどういう風に還元ができるのかとか、どういう風に人の役に立てられるのかとか、自分の考えも整理されていきました。
そのころ10作品以上レパートリーがあり「毛皮のマリー」もやっていました。
小学生の時に映画に出たことがあり、佐藤浩市さんが主演で僕がその息子役で、その映画の助監督さんが寺山修司さんの義理の弟さん(森崎偏陸さん)で私の才能を認めてくれました。
義理の弟さんの家(寺山修司さんの母親寺山はつさんが住んでいた家)に3年間下宿していました。
そこには寺山修司さんの資料などがいっぱいありました。
2003年1月に「毛皮のマリー」の本に吸い寄せられて、頭の中に演技プラン、演出プランがバーッと浮かんで上演することができるようになりました。
「星の王子さま」に出てくる言葉で「物事の一番大切な部分は目には見えない」というセリフがありますが、まさにそうだと思いました。
誰かがこうしたいと思ったときに、周りが背中を押す、子どもは自分の力ではお膳立てができないので、親とか周りがお膳立てすることが必要だと思います。
文楽などを録画して見せてくれたり、親が創意工夫していろんな事をやってくれました。

順風満帆というわけではなくて、周りの支えがあって、一人ではやめていたと思います。
人形劇を広めてゆくためには、時間が限られているので何を選択してやっていったらいいのか今でも悩んでいます。
一人で10役、20役とやるわけで若いころは大丈夫でしたが、今では公演の後はぐったりしてしまいます。
体調管理が仕事の9割といった感じです。
血行を良くするために身体を温めたり、身体を伸ばしたり、栄養管理、食べ物も気を付けています。
劇場は心のレストランと思っています、心に栄養を与える。
子どもさんたちとの触れ合い、出会いを大切にしています。
大人の方には大人の想像力をどれだけ引き出せるか意識しながら、人形の顔は変わらないが、見ている人の心が人形の顔を悲しく見えたり優しく見えたり変えてくれる。
子どもたちが家に帰って同じものを作ってくれたりするので、段ボール人形劇など身近な素材を使うのもそのこだわりです。
想像することの面白さ,すばらしさ、楽しさを子どもたちに伝えたいという思いがあります。

大人の人形劇は愛,死をテーマにします。
人の命ははかないもので、その中で何をして生きるのか、何を支えに生きるのかということが伝えたいテーマになってきています。
どうやって人形劇を普及させてゆくのか、まだ答えはないが普及活動はこれからの大事な仕事になってゆくのかなあと思っていて、自分が死んでからも人の役に立ちたいという思いがあり、書くこと、演出など裏方の仕事を大事にしたいと思います。
是非ヴェートーベンの交響曲第6番「田園」の全楽章を聞いていただきたいと思います。