中道治久(京都大学・桜島観測所准教授) ・火山に暮らし、火山を知る(H27・2・14放送)
桜島のふもとに在る観測所で調査研究を続けています。
ここでは研究者が24時間交代で桜島の火山活動を観測しています。
対岸の鹿児島市の市街地に住む中道さんも毎日のようにフェリーで通い、週に一度は泊まり勤務をしながら、この火山を見つめています。
これまでに東北の岩手山や、御嶽山などを研究の対象にして来た中道さんに山の異変をどうキャッチして防災に生かしてゆくべきなのか、火山とどう向き合えばいいのか、伺いました。
8月15日に噴火レベル4の噴火警報が発表されました。
桜島観測所、正面に桜島が見えていて、いつでも見れるようになっている。
インターネット回線と自前の電話回線で、各火山観測施設から常時データが集まってきています。
地震の揺れ、地盤の傾き、GPSといったデータがすべて来ています。
他に3つ、すす書きの地震記録装置で、50年前と変わらない方法で、紙の上にかぶったすすを引っ掻くように地震の波を書く事をしています。(ドラム形式)
理由
①その時の地震や微動の多いか少ないか、振幅が大きいか少ないか、紙に描いている方が一目で判る、デジタルですといちいち起こして処理しなくてはいけない。
②50年前と変わらない方法で取っていれば、直ぐに30年前、20年前と言った時点と記録の比較ができる。
維持するには手間がかかるが、やっているのはここだけです。
ガスバーナーで炎を出してその先に紙をあてて、ドラムが回りながらすすを付けてゆく。(所員作業する)
地面のふくらみや傾きを計る機械があり、その記録が常時モニターされている。
昭和火口は1946年に噴火して溶岩が流れたが、火口での噴火が2006年に再開して、2008年には爆発噴火し始めていて、今に続いているのでライブカメラがあり、噴煙が流れている映像がある。
いろんな手法で多角的に見ている。
桜島では過去に、天平、文明、安永、大正、昭和と噴火を繰り返してきています。
去年は大正の噴火から100年になります。
今は急ではないが、マグマに入っている火山ガスが出ている状態です。
安永の噴火は海底で起こり、地面を持ちあげるので津波が起こる。
1914年(大正3年)で大きな爆発があり、人的な被害もあった。
1913年から霧島等で地震や噴火が始まりました。
同年6月、薩摩半島でマグニチュード6近くの地震が続けて起こる。
1914年1月11日に桜島で身体に揺れを感じる地震が起こり始めて、噴火につながると言う事で一部の集落では避難を開始する。
有感地震が増えてきて1月12日に中腹で白煙が上がってくる。
(井戸の水位も下がってきていて、白煙が上がる頃には井戸の水位がグーッと上がってきた。)
海岸では水蒸気が上がる事が観測された。
午前10時すぎには山腹から噴煙が上がってきて、警察の要請で島民の非難が始まった。
3000人が助かった。
大正噴火は島の形を変える様な大きなな噴火だった。
島の東側と西側から噴煙を上げて、噴煙が収まる頃には溶岩流が流れてきた。
東側の溶岩は、桜島は島であったのが、大隅半島とくっついてしまった。
西ノ島 火山島ができてどんどん広がるのを真近で見られたのは、近代的な観測装置で観測できるのは世界中が注目している。
昭和30年、人が亡くなる様な噴火があったが(北岳)、それ以降南岳で噴火が続いている。
桜島観測所が1960年設立、70年代活発になったので、危なくなってきたので、ふもとの方に観測所が移ってきた。
活火山、休火山、死火山と昔は習ったが、こういう区別は無くなっている。
1979年御嶽山の水蒸気爆発で無くなりました。(記録には無かったが突如噴火した)
火山と共に生きてゆくという視点が必要ですね。
火山の中味をよく知っておく事と、よく観測を続けること、噴火の危機が事前に判れば直ぐに非難する事が大事です。
日本には活火山と呼ばれるものが、110有り、気象庁が24時間常時観測している火山が47有り、その中に大学等が連携協力している火山がその一部にある。
京都大学では昭和35年から桜島をずーっと観測してきている。
2005年から名古屋大学に在籍して、御嶽山の観測調査に当たる。
当時御嶽山は地震が起こる場所だと言われていて、2007年初めに沢山地震が起こって、3月に小さな噴火があった、その2か月前に山の地下で水蒸気爆発が起こるときに現れる様なゆっくりとした地震を見つける。
緊張して気象庁と情報交換をした。
山のふくらみは解消されないままになっていた。
水蒸気爆発は一般的に予測は難しいと言われる。
山頂直下で地震がいっぱい起こったと言う事はマグマの動きが始まったというサインで、水蒸気爆発の可能性が高まったと言う意味では、噴火を警戒するレベルは上がってもいいと思います。
あんな水蒸気爆発が起こるとは、思ってもいなかった。
桜島など爆発噴火を繰り返す火山を対象に、噴火に至る場合と、しずしずと火山灰を出すような場合とで、前兆となる地震、山体の膨張がどう起こるか、どう違うのかを明らかにするのと、爆発する噴火としずしずとだす噴火で、仕組みがどう違うかという研究に注目している。
災害を防ぐ意味では地球物理、岩石学、地球化学、気象、等だけでなく、砂防等の工学、避難の時の社会学、心理学とともにやってゆく必要がある。
学者だけでなく住民、自治体と一緒になって協力してゆく事が重要だと思っている。
その実践の場が桜島だと思っていて、ここでやっている事が世界の災害軽減につながってゆくと思ってます。
机の上に座っている人ではなくて、現場に行って現物を見てくる人が増えてくると嬉しいです。
桜島の最新情報
8月15日に懸念されていた大きな噴火の可能性は低くなり、今は目だった噴火は起こっていません。
警戒レベル4になった時は、午前7時過ぎから地震が起こり始めて、午前8時40分頃から傾斜計等に大きな変化が起き、9時頃から地震が多発して一気に噴火に向かうのではないかと緊張が走ったので警戒レベル4になる。
噴火しても不思議ではなかったがその後変化は、減速してきて大きな噴火はしていません。
現在は継続的に水蒸気を火口から出していて、爆発も8月15日以来現在までありません。
爆発が減ったのは火口が目詰まりして来たための様です。
8月19日火口の調査をしたが、噴石、礫等が火口の中に溜まっているのがはっきり確認できます。
防災には最新情報が必要で、現在どこが立ち入り禁止になっているかとか、噴火したらどこに影響が有るかを確認してもらいたい。